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裁縫とジェンダー・ステレオタイプ - ソーイング・ビー2から-

NHKのEテレで放送されている「ソーイング・ビー2」。昨晩の「決勝戦」の放送回だった。

「ソーイング・ビー」はイギリスのBBCが製作している、裁縫コンテスト番組だ。イギリス全土から裁縫好きの人々が集まり、みんなで課題をこなしながら、審査を受けていく。ときには、脱落者が発表され、裁縫室から出ていかなければいけなくなる。そして、最後まで残った人たちで決勝戦を行い、最優秀賞を決めるのだ。

最初はそれぞれが「脱落したくない」「負けたくない」「優秀賞をとりたい」という、いわば「戦い」の雰囲気なのだが、それは徐々に変化していく。課題をこなし、休憩時間にはみんなでお茶をすることで、「仲間意識」が芽生えてきたり、「いい作品を作ろう」という雰囲気になってくる。

最終的には、みんながみんなの作品のいいところを褒め合い、「この部分がいいよね」「この部分はこうしたらよかったかもね」とお互いに高め合っていく様子が見られるようになる。参加者たちは、最初の作品からは考えられないくらい上達して最終回を迎える。

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ネタバレをすると、決勝戦に残るのは、マット(左上端)、ローナ(右から3人目)とニール(右から2人目)の3名だ。そして、最優秀賞を獲るのはマットだ。


性別に注目して「ソーイング・ビー2」を見るとどうなるだろうか。

これまでの「ソーイング・ビー」↓↓↓

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写真を見ると明らかだ。

審査員は男女各1名で変更はない。いつもの彼らだが、

今回の「ソーイング・ビー2」(1枚目の写真)は参加者が10名で女性が6名、男性が4名で、他のシーズンより男性が増えている。

そして、決勝戦に残るのは男性2名、女性1名。

最優秀賞はITコンサルタントで幼い子どもたちのパパであるマットだ。男性だ。

男性たちが、大奮闘していることがよくわかる。



日本国内での最近の「裁縫」に関するニュースでは、「ANAのCAらが防護服の裁縫支援か」が記憶に新しい。

何が問題だったかと言えば、「女性は裁縫が得意」というようなジェンダー・ステレオタイプが持ち出されたことだった。第二次世界大戦期に女性たちが工場で裁縫したことや「千人針」のことが思い起こさせられた。


「ソーイング・ビー2」を見る限り、「女性は裁縫が得意」とは言い切れない。

そして、そもそも、裁縫と性別は全く関係がない

女性でも裁縫は得意な人もいれば、不得意な人もいる。男性でも裁縫は得意な人もいれば、不得意な人もいる。男性でも女性でもない人でも、裁縫が得意だったり不得意だったりするわけだ。(というか、裁縫をやったことがあるか否かの問題か)

「女性は裁縫が得意」というのがいかに社会に創り出されてきたかがよくわかる。女性にこれまで裁縫を押し付けてきた、とも言えるだろう。



「ソーイング・ビー」を放送しているBBCでは、「50:50 The Equality Project」が提唱され、実践されている。

端的に言うと、テレビやラジオに出てくる人たちの男女比を同じにしようという取り組みだ。これは、今では男女比だけではなく、白人・黒人・アジア系などいわゆる人種もおよんでおり、偏らないように改善されている。

メディアがジェンダー・ステレオタイプを強固にするのは、もう時代遅れだということだ。


裁縫とジェンダー・ステレオタイプ。

CAの防護服裁縫からわかるように、日本の男女平等はまだまだ茨の道のりである。ジェンダー・ステレオタイプをまずは見つめ直して、少しずつ改善していくほか道はないだろう。

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