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短編映画「隔たる世界の2人」:繰り返される悲劇

Twitterでこの映画を良かったと呟いていた人を見かけて、面白そうだったから見た。32分の短編映画であっさりしすぎず、重くなりすぎず、伝えたいことも明確で良かった。BLM運動のことを全く知らない人にはとてもいい導入になり得る映画だ。

短編映画「隔たる世界の2人(Two Distant Strangers)」

主人公の黒人男性は朝、女性の家から愛犬の待つ自宅に帰ろうとする。しかし、アパートメントから出た先にいる白人の巡査に声をかけられる。揉めた末、主人公は警察官に殺される、、、ところで、再び女性の家のベッドで目が覚める。



2020年5月25日、アメリカのミネアポリス近郊でアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイド(George Floyd)が、白人警察官の不適切な拘束により死亡させられた。この事件以前にも白人警察による黒人への不当な拘束や逮捕はあった。しかし、この事件をきっかけにBlack Lives Matterの運動は再燃した。

「隔たる世界の2人」は黒人と白人警察のこれまでの事件を元にした短編映画で、2021年アカデミー賞にノミネートされている作品だ。

主人公は1番最初に警察官と揉め、取り押さえられたとき「息ができない(I can't breathe)」と必死に訴える。しかし、警察官は力を緩めることなく締めつけ、主人公は息を引き取る。ジョージ・フロイドの事件を彷彿とさせる。

何度も何度も繰り返される悪夢から抜け出すために主人公は試行錯誤する。

朝、アパートメントから出ずに部屋の中で過ごしてみる。すると、武装した警察官が部屋に突撃してくる。玄関から出たところで猛ダッシュするも、銃で撃ち殺される。警察官と話をして仲良くなれたと思って、歩いて自宅に帰ると違う警察官に銃で撃たれる。いろいろ試してみるのだが結果はよくない。そして、再び女性の家で目覚めるところに戻る。

主人公の黒人男性は白人警察と2人で話しをし、意見を言い合えば分かり合えると信じている。主人公は最後以下のように言い、再び自宅に帰ろうと試みる。

「どれだけ時間がかかっても、何度繰り返しても、俺は絶対に、犬が待つ家に帰るんだ("Because it don't matter how long it takes, or how many times it takes, one way or another, I'm getting home to my fucking dog.")」



タイムループのように悲劇は繰り返されている。お互いに話し合って、時間がかかろうとも、人種差別を無くす努力が必要だ。

エンディングロールの最後のところで、

"Learn to see me as a brother instead of Two Distant Strangers... ーTupac"  「隔たる世界の2人ではなく、一人の人間として俺を見てほしい」

と締めくくられている。

ネットに上がっていた感想に「最後はきれいごとかよ」的なものを見かけたが、映画ぐらいきれいごとを訴えったっていいと思うし、そういうところであれ、とも思う。主人公が家に無事に帰れたとき、この悲劇が終わるんだから、ありきたりなタイムループではあるが、それがある意味現実的でいいんだと私は感じた。

この映画を2時間の映画にしたらどうなるんだろうか、4時間の映画にしたらどうなるのだろうか。3ヶ月1クールのドラマにしたらどうなるのか。ドラマにしたら最後はハッピーエンドになれるのかな。どうなるんだろとは思うが、30分の短編でとてもちょうど良かった。

いい作品だったのでちょっと時間のあるお昼休みや寝る前にでも見て欲しい。

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