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本の記録:人類学と民族誌およびその周辺

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人類学に関する本の記録です。民族誌と理論書、論文等々読んだものから記録をつけています。勉強中ですので、気になったところはコメントください。
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#本

【本の記録】田辺明生、竹沢泰子、成田龍一(編)『環太平洋地域の移動と人種 統治から管理へ、遭遇から連帯へ』

今回は1つのプロジェクトをまとめた論集だ。 2020年の重大な出来事としてBLMが挙げられる。アメリカの根深い人種差別問題から端を発した運動が、日本でも大きな話題となった。ごく最近では、全米テニスで優勝を果たした大坂なおみの抗議行動が世界中から称賛された。 しかし、なんだか日本にいるとBLMや人種差別問題はいまいちピンときていないように感じられる。 NHKでBLMを取り上げようとアニメーション動画を作ったが批判を受け謝罪していた。NHK側は謝罪していたが、何が批判された

【本の記録】リーペレス・ファビオ『ストレンジャーの人類学』

今回は『ストレンジャーの人類学』だ。一般向けではない。移民研究、人類学、社会学、教育学のいずれかをやっている人には新たな研究の一つとして読むことをおすすめする。 また、自分自身が「帰国子女」「移民」「ハーフ」というカテゴリーで縛られ困難に感じた経験がある人や親の都合で幼い頃から世界中を転々としてきた人にとっては共感できたり、生き方の参考になったりするだろう。 著者:リーペレス、ファビオリーペレス、ファビオ(Lee Perez Fabio) 2019年、東北大学大学院文学研

【本の記録】橋本栄莉 『エ・クウォス 南スーダン・ヌエル社会における予言と受難の民族誌』①

『エ・クウォス』第1回は本書の概要を紹介する。来週は第2回とし詳細な内容、第3回は全体のまとめとコメント、参照文献リストにしようと思っている。ざっと読んでまとめれば良かったのかもしれないが、1週間で最後まで目を通すことができなかった。 では、行ってみよう! ===== 概要 本書は、南スーダンのヌエル社会における予言をめぐる信念について、ヌエルの人びとの歴史・日常生活・出来事の3つの場面から検討している。100年以上も前にされた予言とその信念が、どのようにヌエルの人びと

「過去への反省」と人類学。

「人類学者1人に人類学観は1つづつ」は過言ではない。 いろんな人類学者が世界中にいて、みんなそれぞれ研究場所も対象もテーマも異なる。出会ってきた人や感じてきたことがそれぞれ違うから、人類学者の数だけ人類学観があると言えるのだろう。 しかし、人類学の前提とされていることは共有しているため、研究者同士通じ合えないということではない。 人類学の草創期は「安楽椅子(アームチェアー)の人類学者」と呼ばれる、自分自身で現地調査には行かず現地のことを語る人類学者がおり、それへの批判から