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オズワルド「この問題を解くまで次に行けない。それがM-1」|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#10(後編)

logirl (ロガール)

昨年は若手芸人の登竜門『ABCお笑いグランプリ』で優勝し、年末の『M−1グランプリ2021』でも準優勝したオズワルド。あと一歩のところで優勝を逃した彼らが、今回のM-1を振り返る。

そしてこれからオズワルドはどこへ行くのか。今後の展望も語ってくれた。

【インタビュー前編】

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>
注目の若手お笑い芸人が毎月登場する、インタビュー連載。「初舞台の日」をテーマに、当時の高揚や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語ります。

M-1のお客さんが日本一平等に観てくれる

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オズワルド。左から:畠中悠、伊藤俊介

──前編では、ミルクボーイのシンプルな構成で爆笑を取るスタイルが理想だと話していました。実際、M-1のオズワルドも、伊藤さんと畠中さんがしゃべるからおもしろいというシンプルさへ近づいてる印象です。

畠中 たしかに今年の1本目のネタ(『友達』)はシンプルかもしれないです。「友達がいないからちょうだい」「あげないよ」っていうシンプルなやりとりの4分間。こういうネタがウケるし、おもしろいんだなと思いましたね。

伊藤 マジでそうですね。でも、俺たちは2本目のほうが自信あったんですよ。

──2本目の『割り込み』ですね。たしかに『友達』よりも複雑でした。

伊藤 いろんな要素が入りすぎると、B級映画みたいになるんですかね。ゾンビも出ればラブロマンスもあってコメディもやるなんて、わけわかんなすぎてついていけないというか。

畠中 ライブだとウケてたんですけどねぇ。M-1という舞台では、結局シンプルなほうがウケるということに今年改めて気づきました。観てる人が全員お笑い観まくってるわけでもないので。

伊藤 本筋は大きく逸れないほうがいい。

畠中 俺たちが出たここ3年で優勝した人はみんなそうだよね、ミルクボーイさん、マヂラブ(マヂカルラブリー)さん、錦鯉さん。錦鯉さんってバカなおじさんが暴れ回るっていうシンプルな漫才じゃないですか。その構図ってテーマが違っても変わらないから見やすくて、大人も子供も笑えるという。

──『割り込み』は昨年7月の『ABCお笑いグランプリ』の優勝ネタと同じで、あれをブラッシュアップしたんですよね。

オズワルドのおずWORLD/OmO

畠中 そうですね、ブラッシュアップした結果、よりわかりにくくなったのかもしれない。

伊藤 あれがライブでウケちゃってたからなぁ。そりゃそうっすよね。ライブは俺たちのこと好きで観にきてくれる人が多いから。M-1のお客さんがこの世で一番フラットなんですよ。誰々推しとかで観る人は少ないし。

──そういう意味でも、M-1は芸人として真の実力が測れる。

伊藤 そうですね。

畠中 優勝した人が一番おもしろいんだなって信じられます。

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──ABCからM-1まで約半年ネタをブラッシュアップして、見せ方が大きく変わりましたが、いつも時間をかけてネタを磨いていくんですか。

伊藤 決勝に初めて行った年は、年明けの段階でこのネタで行こうと決めて、叩いていきましたね。でも、2〜3回目は、「これでいこう」というネタが結局ダメで、それまで触れてなかったネタを準々決勝と準決勝の数週間で鬼のように叩いていった。

時間をかければいいものができるわけでもないってことなんですけど、やっぱり最初から自信のある2本をそろえていったほうがいい。今度は早めに2本用意して、そのまま行ければいいですけど。

畠中 まだ何もできてないですねぇ。

伊藤 ほんとに去年の2本目は、自分らをダイナミックに見せようとしすぎた。結局、1本目のシンプルなほうがいい……といってもテーマはイカれてますけど(笑)。テーマは飛んでても、誰もがわかるやりとりのほうがよかったんですよね。

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オズワルドは去年のM-1で優勝するべきだった

──M-1のオズワルドの歩みには、ストーリーがありますね。初回で優勝への意識が芽生え、2回目で松本人志さん、オール巨人師匠の批評の間で板挟み(※)。3回目はそこを克服したけれど、もう一歩届かず。

※『M-1グランプリ2020』決勝で、審査員の松本人志とオール巨人の評価が正反対に割れた。松本は「静かなオズワルドが観たかった」と言い、オール巨人は「最初から大きい声でツッコんだほうがよかった」とアドバイス。畠中は「ムズすぎますって、来年」と苦笑した。

伊藤 そうっすね。こんなん言ってもアレですけど、今回お膳立ては整ってたので、絶対優勝するべきだった。次は物語もなけりゃ、ネタのストックもない。もう一回ゼロから試される。

畠中 だいたい3年目で獲りますし。

伊藤 最初はM-1の決勝に出て、仕事が増えて売れればいいなと思ってましたけど、今となっては、仕事のために優勝したいわけじゃない。逆に「優勝したから仕事が増えたんだろ」って言われるのはイヤだし。おもしろいから売れるし、おもしろいから優勝する。それだけなんですよ。

──『M-1グランプリ2021 アナザーストーリー』(テレビ朝日)では、オズワルドが熱心にネタ合わせする様子が映ってました。

伊藤 そういうのはやっぱハズいですよ。優勝してたらいいですけど。

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──最終決戦では、錦鯉さんのネタ中に耳をふさぐ様子も映ってました。

伊藤 らしいですね。ただ、そこはものすごく弁解したいんですよ。勝負事のときはいつもほかの人のネタは聞きたくないんです。だから実際はインディアンスさんのときから耳ふさいでるんですよ。まるで錦さんがウケすぎて怯えてるみたいな画になってたらしくて。

畠中 編集のアレですね。

──伊藤さんはオンエア観てないんですか?

伊藤 僕はそもそも自分が出たM-1を観返したことないんですよ。ほかの人のネタもほぼ観てない。そもそも自分が出てるテレビはあんまチェックしないです。

──自分がどういうふうに映っているかとか気にならないですか。編集でどのように切り取られるのか知っておきたいとか。

伊藤 それはまあしょうがないですよね。エゴサーチとかはしてますけど。まぁ、うまくいってようがいってなかろうが観ないですね。

──畠中さんはどうですか?

畠中 僕も出てる番組はそんなにチェックしないですけど、M-1は好きな番組なので観ますね。「オープニングVTRかっこいいなぁ」とか。毎回ワクワクするんで。

ゆにばーすの背中を見て「がんばろう」と思った

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──最近は大阪でもすごくライブをしていますね。

畠中 漫才師としては、NGK(なんばグランド花月)が日本で一番いい場所だと思うんで、そこに定期的に呼んでもらえるのは誇りですね。俺たちは漫才師なんだなと思えます。

──今は吉本の劇場を飛び回ってるおふたりですが、M-1の決勝初進出のころは吉本以外のライブにも出てたそうですね。

伊藤 そうっすね。ゆにばーすの川瀬(名人)さんに「吉本だけじゃわからん」って言われたので。あの人たちが先に外のライブを暗躍してたんですよ。そういう意味では、俺たちは、ゆにばーすのやり方をマネてばっかりです。

畠中 2017年にゆにばーすさんがM-1ファイナリストになったのは衝撃だったんですよ。俺らの1期上なんですけど、あのころって(ヨシモト)∞ホールまわりの芸人が決勝に行くなんて夢物語だった。でも、ゆにばーすさんが外ライブに出まくって、ほんとに決勝進出しちゃって。

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伊藤 知ってる人がマジで行けるんだって感じでした。

畠中 M-1決勝というものが今よりだいぶ遠い感覚だったよね。

伊藤 ゆにばーすさんがM-1をリアルにしてくれたから、俺たちもがんばろうって思えたんですよ。逆に俺らが決勝初めて行ったときに、同じこと思った後輩もいたんじゃないですかね。

畠中 ライブでめちゃくちゃスベってるオズワルドを知ってるぞとか思ってるでしょうけどね(笑)。

──ゆにばーすさんとともに出た昨年のM-1決勝は感慨深いですね。

伊藤 正直めちゃくちゃうれしかったですね。

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──ほかの顔ぶれも、オズワルドが外部ライブでやってきたメンツがそろって。

畠中 そうですねぇ、錦鯉さんも真空ジェシカも……。

伊藤 ほんとにいいメンツだったなぁ……。

畠中 決勝発表されたとき、メンバー見てやっぱりうれしかったですね。

伊藤 みんなはしゃいでたよな。ファイナリスト発表で誰も泣いてなかったの初めてじゃないですか……いや、違うな。きむさん(インディアンス)だけ泣いてた。あれ意味わかんないよな。

畠中 意味わかんない(笑)。3回目なのになぜか泣いてた。でもほんとに和気あいあいとしてましたね、決勝進出者発表後の記者会見も緊張感ゼロで。みんなほんとに新宿バティオスとか新宿バッシュ!!でライブやってるくらいの感覚(笑)。

伊藤 決勝の楽屋も和やかで。

──決勝の舞台を前にして、緊張感ゼロだったり、和やかだったりするのはマイナスにはならないですか?

畠中 どうなんですかねぇ……。

伊藤 やるときはきっちりやるメンツなので問題なかったんじゃないですか。

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──『アナザーストーリー』では、野田クリスタル(マヂカルラブリー)さんに、「お前らはM-1という大会も背負ってる」と言われるシーンがありました。

畠中 野田さんにそう言われたときは、正直戸惑いましたね。予想ランキングでも優勝候補みたいになってて、びっくりしたんですよ。個人的には常連組っていう感覚が全然ないので。毎年“M-1様”にチャレンジさせてもらう気持ち、挑戦者のつもりなので。

伊藤 たしかに俺たちが初めて決勝行ったときとは、メンツも様変わりしたからなぁ。でも、今年は初進出5組でしたけど、俺らが初めて出たときなんか、7組が初進出でほぼ無名だった。SNSでは「今回のM-1観る気なくしたわ」とか「知ってる人誰もいねぇ」って言われてましたけど、フタを開けてみればあの年って「過去最高の大会」と呼ばれたじゃないですか。結局そういうもんだから、今回も絶対そう言わせたいなと。

それに俺たちは今年のメンツをよく知ってるから、いい大会になると確信してた。M-1ってやっぱり出場者みんなで作るものなんですよ。もちろん優勝を目指してるんだけど、自分らが出てた大会が最高だったって言われたい。「よくあのメンバーの中で優勝したね」っていうメンバーに勝ちたい。

前年の結果とか、お客さんには関係ない。あと負けるとムカつくんですよね、ほんとにムカつく。なんぼのもんじゃいで見てきますからね。

寄席でめちゃくちゃおもしろい漫才師になりたい

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──これからオズワルドとしてやっていきたいことはありますか。

伊藤 なんだろうな。俺はめっちゃテレビにも出たいし、劇場で漫才も続けたい。でも畠中は劇場重視なんで、そこはバランス取れたらいいですね。ただ、俺は今テレビの仕事も全力出しきれてないんですよ。どうしてもM-1が一番大きい。

──M-1優勝しないと、テレビに集中することができない?

伊藤 なんかね、学校のテストでも、わからない問題があったときは、それを飛ばして次の問題に取りかかったほうがいいっていうじゃないですか。俺はそれができないんですよね。この問題を解くまで次に行けない。それがM-1ですね。

このまま時間切れになるのか、それとも俺のメンタルが折れるのかわかんないすけど、とりあえずこれを解くまでは、次を考えられない。

畠中 俺にとってはM-1優勝が最終問題なんで。正直、それ以外の問題は正解できなくてもいいかなって感じ。それさえ二重丸もらえれば(笑)。

伊藤 ただ、M-1が終わったらいよいよ漫才が寄席の10分尺の世界になってくるんですよ。そこでめちゃくちゃおもしろいって言われる漫才師になりたいですね。

畠中 寄席で観る中川家さんはめちゃくちゃすごいですからね。やすとも(海原やすよ ともこ)さん、テンダラーさん、プラマイ(プラス・マイナス)さんもそうですけど……。

伊藤 師匠方もね。ザ・ぼんち師匠とか、オール阪神・巨人師匠……。

畠中 うん。あの方々の10分の漫才って見事なんですよね。とにかくウケますし。そこの域には全然達してないので、そういうところ目指したいですね。ほんとにしゃべりだけで笑わせるっていうのはすごいです。

──オズワルドも審査員の(ナイツ)塙(宣之)さんに「一畳で見せる漫才師の憧れ」と評されていました。遅かれ早かれ、その域に行くんだろうなと。

畠中 うーん……。俺らはでき上がった台本を4分間やるネタしか今のところないんですよ。だから10分の持ち時間があったら、2本つないでやってますし。アドリブ的なこととか、その場で作り上げる掛け合いってところまでは全然です。

伊藤 あと、これが恐ろしいんですけど、先輩方ってアドリブの掛け合いみたいに見せるのがすごくうまいだけで、ほんとはしっかり固まってるんですよ。

畠中 うん、ほんとすごいっすよ。

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オズワルド
2014年結成。伊藤俊介(いとう・しゅんすけ、1989年8月8日、千葉県出身)と畠中悠(はたなか・ゆう、1987年12月7日、北海道出身)のコンビ。2020年、『マイナビ Laughter Night』第6回チャンピオンLIVE優勝。2021年、『第42回ABCお笑いグランプリ』優勝。2019年、M−1決勝に進出し、7位に。以降、2020年は5位、2021年はファーストラウンドで最高得点を獲得し、ファイナルラウンドに進むが惜しくも敗退。YouTubeチャンネル『オズワルドのおずWORLD』。TBSラジオ『ほら!ここがオズワルドさんち!』は毎週金曜日24:30-25:00に放送中。

文=安里和哲 写真=青山裕企 編集=龍見咲希、田島太陽

【後編アザーカット】

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