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夏・快晴

昨日の朝、駅のホームで通勤電車を待っている時、明確に今日夏が来たと思った。日差しが明るく、空気が滞留している。風が吹いただけで有難いと気付くので流石にこれは夏か。

暑いは暑いで体力が奪われるが、冬の体を縮めて強張らせる疲れとは違うので夏の場合は好ましい。心地よい疲れだと感じる。

今朝は早起きして開店と同時にジムに入り、全身を動かした。「ゴリラをイメージして!」と指示を出されながら、おしりを突き出して米俵のような形のふわふわして体積のデカい重い重りを上げたり下げたりした。こんなにかさばる重りがあるとは知らなかった。こういうのってだいたい小さくて重い素材で作るものじゃないのか?しかし、ふわふわしている重りというのは心理的に軽い。帰ったらシャワーを浴びよう。

「アアー!!」
チャリを押して家の方に帰ってきたら、そちらから成人男性のものらしい太くて高い叫びが聞こえた。大丈夫か…

ここは間口狭めの低層な家屋がぎっしり並んで特定の政党のポスターなどがやたらと貼ってある地域なので、閑静な住宅街とは言い難いが、高齢者が多いだけで犯罪者はいないので、こういう叫び声を聞くのははじめてだった。

「なんや熱中症や言うんかえ?」
「アアー!!」
「アーちゃうねん!暑いのはみんな一緒や」

工事中の隣のアパートだ!
鳶のお兄さんたちが言い合いをしている。この日差しの強い中とても穏やかではない内容。それも言い合いというか、もはや一方がなじり一方が言語を放棄していると言うのが正確だろう。血が流れなくても言葉だけでこれだけ不穏になるのかと怖くなる。

「使えへんやつはいらん!下から見とけ!!」
「…」

下に水が置いてあるのかな。そうであればいいな。アアー!!よりは無言のほうがマシな気がしていいように想像したが、叫ぶ気力もなくなっているだけという可能性もある。気絶あるいは反逆の前兆。もとを辿れば何が彼らの言い合いを引き起こしているんだろう…?分からないので追求はしないが。
身の安全が脅かされた夏の疲れが好ましいわけがない。晴れた日は、自宅の隣から聞こえる声がやたらと気になる。

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