内向的な人間が海外でキャリアアップする方法 その1
内向的な人のリーダーシップ:誤解と真実
一般的に、外交的な人のほうがリーダーシップを発揮しやすいと言われています。特に海外では、内向的性格はリーダーに不利とされがちです。
私自身、内向的な人間です。仕事柄、人前で話すことが多いのですが、普段は寡黙です。
これまで受けた人事評価の多くは、「人の話を聞きすぎる(You listen to others too much)」「人が良すぎる(You are too nice)」というものでした。一時期、APAC市場のチーム・リーダーとして10人前後のカントリー・マネジャーをまとめていましたが、日本人特有の「和」を重視する働き方が裏目に出ることも少なくありませんでした。
長年、データ・AIの仕事に携わっていると、欧米での就労経験があり、積極的かつ英語が堪能な中国人やインド人と比較されることが多くなります。正直なところ、純日本人のバックグラウンドではかなり不利になります。
しかし、ここ1、2年の悩みと試行錯誤を経て、自分なりのリーダーシップを発揮する方法を見出すことができました。(今でもトライ&エラーの繰り返しですけど…)
これから数回に分けて、その方法をご紹介していきます。同じような悩みを抱える方々の参考になれば幸いです。
まずは初回として、内向的(Introvert)な人が誤解されやすいポイントをいくつか紹介します。
1. 内向的な人は社交的でない
我々内向的な人間も、独自のソーシャルライフを楽しんでいます。私の場合、仕事上、不特定多数の人に会ったり、イベントに招待されるので、そういった場で社交的なひとときを楽しむことも多いです。
しかし、私の場合、社交的な活動に耐えられる時間はおよそ2,3時間です。そのため、時間が経過したら切り上げて帰宅するか、休憩時間を挟んで一人になり、リカバリーする時間を設けるようにしています。
2. 内向的な人間はセールスができない
確かに、セールスに携わる方々の多くは外交的な人が多いのは事実です。しかし、内向的で寡黙でありながら、セールスに長けている人も存在します。
例えば、私の友人がそうです。彼女は香港の金融エリアにある超高級ジムでパーソナル・トレーナーとして働いていますが、シャイで口数も少ない方です。それにも関わらず、メンバーシップの販売でトップを競っています。
彼女の成功の秘訣は、「ジムから渡された、セールス・マニュアルは使わない。クライアントがどうしてトレーニングを始めたいのかじっくりヒアリングし、それに合わせたトレーニング・メニューを提案すること。」だそうです。時には正直に「NO」と言うこともあるそうです。
良い聞き手(good listener)に徹し、潜在顧客のニーズを把握し、的確なソリューションを提供することは、セールスにおいて非常に重要な要素です。
3. 内向的な人は表現力に劣っている
この考えは大きな誤解です。内向的な人が表現力に乏しいというステレオタイプは、表現の形式を狭く捉えすぎていることから生まれています。
私自身、ダンサーもしていますが、ダンスの世界で出会った多くの表現者たちを見てきて、興味深い事実に気づきました。ダンサーの大半が、意外にも寡黙な性格の持ち主なのです。正確な統計を取ったわけではありませんが、私の経験では、およそ6,7割のダンサーが内向的な性格だと感じています。
むしろ、内向的な人々は独自の表現方法を持っており、それがビジネスや芸術の世界に新しい視点と深みをもたらしているのです。
大切なのは、自分の内向的な特性を理解し、それを活かす方法を見つけることです。そうすることで、内向的な人々も、自分らしい形で強力な表現力を発揮することができるのではないでしょうか。
次回は、私が実践している、内向的な人間でもリーダーシップを発揮できるコツをいくつかご紹介します。
最後に、おすすめの書籍を紹介します。ジル・チャン氏の本が日本でも話題になっていますが、私個人としては、より具体的なアドバイスが記述されている以下の著書をお勧めします。残念ながら日本語訳はまだ出ていないようですので、原書でお読みください。
内向的な方々が、自分らしいリーダーシップを見出すきっかけになれば幸いです。