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J1第31節 サガン鳥栖戦 雑感

前節仙台との6ポイントマッチを制し長いトンネルを抜けた徳島。連敗を6で止めて7試合ぶりに手にした勝利により、残留戦線でなんとか踏みとどまることができた。チームにとっても勝利が何よりの薬になったであろう。今節の対戦相手は現在7位につける鳥栖。上位とは言え残留の可能性を保ち続けるためには何とか勝ち点をもぎとりたいところ。10月らしい秋晴れの中での31節はサガン鳥栖を迎えてのホームゲームとなった。

スタメンは前節から2人を変更。FWは一美選手から垣田選手に。前節決勝点のきっかけになる強烈なヘディングシュートを放ったバケンガ選手は今節も先発。おそらく左SBの位置になると思われるが、前節の福岡選手に代わり今節はジエゴ選手が先発。鳥栖は前節、福岡の強靭なフィジカルに苦しみ0-3と完敗したので、ポヤトス監督もこれを踏まえてよりフィジカル的な強みの大きいメンバーをチョイスしたのかもしれない。

序盤はお互いに五分の戦い。鳥栖が高い位置からプレッシングに来ることもあって、トランジションが起こりやすく行ったり来たりな展開。徳島は非保持時にいつもよりやや低い位置でブロックを組み待ち受ける形で守備をする。どちらかといえばボールを相手が持つことを許容しているように見える振る舞い。

すると15分、徳島は自陣ゴール前に入ってきたところをきっちり潰し、こぼれ球を拾った鈴木徳選手がポヤトス監督の「ハコベ!」の声に背中を押されてドリブルで持ち上がる。直後に徳島陣内まで攻め上がっていた鳥栖DFの裏へスルーパス。うまく裏に抜けた垣田選手が相手を置き去りにしてGKと1対1の局面を迎え、そのまま落ち着いて決めて先制。垣田選手は実に24試合ぶりのゴールとなった。

先制後、徳島は鳥栖にボールを持たせた上でかっちり引いて守るという戦い方をより鮮明に打ち出す。ボールを奪えば相手の薄くなった最終ラインの脇を垣田選手がついて惜しいシーンを作るという展開が再現性を持って繰り返される。

前半40分には追加点。徳島ゴール前中央で酒井選手がボールを受けたところを複数で囲んで潰し、石井選手が相手の裏をとって左サイドの西谷選手に展開。西谷選手は時間をかけずに、またしても相手DFの裏に広大に広がるスペースをボールを出す。垣田選手がDFを追い越しこのパスを受けると前に出てきた相手GKをかわす。左サイドのやや深い位置から、なおかつゴール前へ駈け込んでくる相手DFに当てないようにという難しいシュートであったが絶妙なコントロールでこれを決めて、この試合2ゴール目。狙い通りの形で、なおかつ理想的なシーンでの得点で2-0とリードして試合を折り返すことになった。

後半から鳥栖は中心選手であるエドゥアルド選手に代え、高校生ルーキーの中野選手を初めてのCBで起用する大胆采配で打開を図る。それでも次の1点はまたしても徳島のゴールであった。

60分 垣田選手が中野選手との競り合いで獲得した中盤でのFK。岩尾選手のボールはゴール前ファーサイドのカカ選手へ。カカ選手のヘディングはゴールを外れて左サイドへ転がり鳥栖の選手が回収。しかし、これに対して西谷選手、岩尾選手、バケンガ選手が連動してプレッシング。プレスを受けた相手GKがボールの処理を誤ったところをバケンガ選手が角度のない位置から技ありのシュート。これが決まって徳島は3点目。バケンガ選手は嬉しいJ初ゴールとなった。これで試合の大勢は決してしまったところもあり、鳥栖はその後も打開策を見いだせないまま、一矢報いることもできず。3-0で徳島が勝利した。

結果としても内容としてもほぼ完勝で、徳島としては甲本HCが指揮したシーズン序盤以来の連勝となった。湘南と入れ替わって16位に順位を上げ久しぶりに降格圏からも脱出することができた。

徳島は完全に狙い通りの試合展開になったものと思われる。前節福岡戦で露呈した鳥栖のウイークポイントを同じようについて、ボールを持たせたうえでがっちり守り、奪ってから手薄かつ広大なスペースのある最終ライン裏に長いボールを送り込んで・・・・という戦いに徹した。普段の徳島はボールを保持するスタイルであるものの、攻略法が明確であると見るや、あっさりやり方を変えられる柔軟さは稀代の戦術家であるポヤトス監督ならではなのだろうか。

もっとも、「やり方を変える」という表現は適切ではないようだ。識者の方々も、そしてポヤトス監督ご自身も「使えるスペースを使う」という、principleに基づいて戦った結果、このような展開になったと説明されている。今日は敵陣DFラインの裏に広大なスペースがあったからそこを使ったというだけで、それは徳島の戦い方の基本方針からブレるようなものではないということだろう。

ポヤトス監督がシンプルなこのやり方を選択したのは、相手が鳥栖だったから、という点も大いに影響しているように思う。例えば広大なスペースを一人で守り切れるようなCBがいる相手であれば、あるいはこちらのCBを軽々と凌駕するようなCFのいる相手であればおそらくこのやり方はしないのではないだろうか。何とかボールを握って相手の攻撃回数を1回でも減らすような戦い方を選択するように思う。あくまでJ1の他チームと比べるとだが、鳥栖の選手と徳島選手の個の力の差が幾分小さいと考えられたからこそ、今日のような攻略法に徹することができたのではなかろうか。垣田選手とバケンガ選手2人いれば、朴選手がいくら守備範囲が広いとは言え、手薄になった相手DFラインを攻略できるのではないか、こちらのDFラインがきっちりそろった状態で守れれば理不尽なパワーやテクニックでゴールを奪われる可能性が低いだろうと、そう計算したうえでの今節の攻略法であったように思う。

残りは7試合となった。徳島は残留を争う横浜FC,大分,湘南との直接対決を残している。これらは、前述の個の力の差がやや小さいチームであるとも考えられるため、ポヤトス監督の手腕が大いに期待されるカードでもある。実際、仮に3つすべてに勝つことができればいよいよ残留が現実的になってくるだろう。湘南戦が37節であることを考えると、少しでもいい状態でこの試合を迎えらるようにしておきたいところではあるが。ともあれ、チームの状況が少しずつ上向きになっている状況で大詰めを迎えられてよかったと思う。まだ何も決まっていないし、状況は厳しいけれど、次に希望が持てることは素晴らしいことだ。

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