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J1第38節 サンフレッチェ広島戦 雑感

泣いても笑ってもこの試合ですべて決着。前節・前々節と連勝し、最後の最後まで残留に望みをつないで来た徳島。依然、湘南・清水の結果次第とはいえ、この試合に勝てば十分残留するチャンスはある。最終節の相手は監督変更以降勝ち星のない広島。上向き調子の勢いに乗って3連勝でフィニッシュし、見事逆転残留を決めることができるか。J1最終節はポカスタでの徳島の命運を握るホーム最終戦となった。

スタメンは一人を変更。前節、イエローカード累積による出場停止であった、ジエゴ選手が復帰。代役だった田向選手のパフォーマンスが決して悪くなかっただけに今節はジエゴ選手とどちらがスタメンに選ばれるのか注目を集めたところだったが、田向選手はサブスタートとなった。他のサブメンバーにはバケンガ選手、一美選手、渡井選手と攻撃陣に関してはほぼフルラインナップといっていいメンバー構成になった。

最終戦もポカスタは強い風。コイントス後、エンドが入れ替わり徳島が風下に陣取る。ホーム大分戦で前半苦しんだ記憶が少し甦る中、キックオフの笛が鳴る。

いつも嫌な予感ばかりが的中するのはどうしてだろう。強い向かい風に加え、命運がかかる大事な大事なゲームということで選手たちに硬さもあったのであろう。徳島は慎重にゲームに入ったがために序盤から思い切りよく攻めてくる広島に対し受けに回る形となる。気持ち的にも劣勢を強いられる中、ゲーム開始早々に先制を許してしまう。

9分、相手左サイドからのスローイン。ライン間でボールを受けた青山選手が逆サイド大外へピンポイントクロス。待ち構えていた藤井選手を完全にフリーにしてしまいダイレクトで決められる。これはジエゴ選手がつかまえておかなければいけなかったところ。勝たなければいけない徳島にとっては痛い痛い失点となった。

それでもここで立て直せればよかった。けれども、やはりこの特別な試合でそうすることは難しかった。先制点を与えてしまってからわずか2分、まさかの広島に追加点。右サイドを突破した藤井選手がクロス。中へ入ってきたエゼキエウ選手がこれもほとんどノープレッシャーで頭で合わせてゴール。鈴木徳選手がマークについていたが真ん中へ入ってきたときに弾き飛ばされてしまう。その後カカ選手に受け渡しができればよかったけれど、あいまいになってしまった。先制点を与えてしまったショックから気持ちを切り替えられないまま、おそらく広島も徳島が頭の中を整理できていないうちがチャンスとみて一気呵成に出たところもあっての2失点。緊張が解れてゲームに入る間もなく、開始わずか10分で、徳島は1年かけて作ってきた自分たちの戦い方を放棄せざるを得なくなった。

この失点の後、すぐさま岩尾選手が選手を集め再度円陣を組みなおす。試合後の岩尾選手のコメントによると『「失うものは無いのだから、しっかりとサッカーしようよ」と、いうような』言葉をかけたとのこと。

しかし、無情にも次のゴールも広島に生まれる。36分、広島左からのCK。低いボールはニアで前へ入った選手が頭でフリック。これを真ん中でまたしてもエゼキエウ選手が頭で決めてゴール。34節のセレッソ戦でやられたのとほぼ同じ形の失点だったのでおそらく広島が対徳島用に事前に準備していたものと思われる。

何とか前半のうちに1点でも返しておきたい徳島であったが、無理をしない広島からゴールは奪えないまま前半終了。まさかの0-3でゲームを折り返すことになり、この時点でほぼ希望は潰えてしまった。

残留の可能性を残すには少なくも3点が必要な徳島は後半開始から3枚替え。内田、田向、一美選手を投入し4-4-2に配置も変更。後半開始早々から攻勢に出る。53分 藤田選手が1枚はがして右サイドを持ち上がり、中央の宮代選手へ。宮代選手が出したパスは相手にひっかかるも、この跳ね返りを後ろから入ってきた岸本選手が豪快に蹴りこんでゴール。絶望的な状況に変わりはないものの、岸本選手からこぼれた笑顔を見てちょっと救われた気分になった。

さぁなんとか反撃をと意気込んだところではあったが、この試合はとことんうまくいかなかった。64分、自陣左サイドからのスローインを受けに行ったところで岩尾選手がスリップ。この隙を見逃さなかった柴埼選手がボールを回収しそのままゴール前まで攻め入る。DFを引き付けてサイドの浅野選手へパス。浅野選手は中へ切り込んでシュート。DFがしっかりブロックに入るも徳島の選手の足に当たったボールがそのままゴールに吸い込まれ広島4点目。これで完全に徳島の息の根は止まってしまった。

79分には右サイド岸本選手のクロスを最後は一美選手が頭で押し込んでもう1点を返すが、もはや焼け石に水。そのままタイムアップとなり、徳島の2021シーズンJ1最終戦は2-4で敗戦となった。

最終戦に敗れたことで他会場の結果関係なく、徳島のJ2降格が決まった。紆余曲折あったものの前々節、前節と今季の集大成とも言える内容と結果を残し、意気揚々と臨んだ最終戦だっただけに衝撃が大きかった。試合終了直後は現実感を感じられないところもあった。それでも宮代選手が、岩尾選手が人目もはばからず涙にくれる様子を目の当たりにして胸が締め付けられる思いがした。

皆が思い描いていたハッピーエンドは観られなかった。しかし、確かにこの試合は2021 徳島ヴォルティスという物語の最終回ではあった。1年かけてつくり上げてきた徳島のサッカーを見せる間もなく、試合開始10分でもっとも分が悪いノーガードでの殴り合いをせざるを得ない状況になった。ゴールを見ることはできたものの、むき出しになった個の力の差を見せつけられてやられてしまう。こんなに風が強くなかったらとか、コイントスで勝ててたらとか、左SBの人選がとか、たらればを言い出せばキリがない。それでも、ある意味王道ともいえる結末だったなぁと、モヤモヤを残すことなくスッキリ納得できてしまったところもあった。

一番の関心ごとである選手の出入りを含め、「これからのこと」がどうしても気になるので色々な感情が交じり合い頭の中がごちゃごちゃとする。統括もなかなか難しいが、なんだかんだで徳島は信念を持って正しく前進したと思う。これはひとえに選手・スタッフは下よりクラブの在り方を支えるすべての人の努力の賜物であると思う。それでも、だ。徳島としては大きく前へ進んだつもりでも、J1という大海原を泳ぎきるにはやっぱり力が足りなかった。

J1に定着するという目標に嘘はないだろう。しかし、それをどれくらいの時間をかけて達成するのかについてはしっかりビジョンを持ってクラブは取り組んでいると思う。これからも即物的なやり方を選択はしないであろうということには信頼を置いている。是非、引き続き地に足をつけて歩みを進めてほしい。

徳島の2度目のJ1挑戦も1シーズンで終わってしまった。それでも徳島ヴォルティスは続いていく。来月中旬ごろには2022年の新しい徳島ヴォルティスがお披露目されるだろう。J1だろうがJ2だろうが、再び我々は最高の週末を待ちわびて、サッカーのある毎日に喜びを感じて、生きていく。新しいシーズン、キックオフの笛はもうすぐだ。

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