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J1第36節 FC東京戦 雑感

前節、岩尾選手不在という窮地に3-4-3のスリーセンターという新たなシステムを採用して臨んだ徳島。素晴らしいパフォーマンスを披露したものの、結果は敗戦。またひとつ降格の足音が大きくなってしまった。それでも残留を争う他チームも苦しむ中、まだ可能性は残っている。わずかな光をここで絶やさず、最後までつなげられるかを占う重要なゲーム。ここ数年、クライマックスに大きな岐路を迎えた徳島はいつもここに来たのではないかという因縁すら感じる、味の素スタジアムでのアウェイゲームはFC東京との1戦となった。

注目のスタメン。前節欠場の岩尾選手だったが無事スタメンに復帰!今節も岩尾選手は欠場するのかもしれないと思っていた人は多かったのではなかろうか。なぜなら岩尾選手はこの1週間、完全に姿をくらましていたのだから。普段なら岩尾選手が受ける地元メディアの取材に一切姿を見せず、副キャプテンの岸本選手が代わりに繰り返し取材対応している様子が見られたし、クラブ公式SNSから発信される写真や動画にも一切うつっていなかった。岩尾選手の出場の可否は相手クラブの準備にも大きな影響を与えるであろうから徹底した統制による情報戦は重要な意味を持つかもしれない。スタメンは小西→岩尾の変更のみ。

徳島は予想通り岩尾選手がアンカーに入って前節と同じ3-4-3の布陣を敷く。岸本選手を高い位置へ上げ、後ろは3枚でビルドアップ。時に岩尾選手が中盤の底から左サイド裏のスペースへ西谷選手を走らせる。西谷選手が起点になれれば後ろからジエゴ選手が追い越して上がっていく。右の大外は岸本選手が使うので宮代選手は内側のレーンでうまく降りてきてボールを触る。こちらの最終ラインがボールを持った時に相手が前からプレスに来ればこだわらず前へ蹴って、垣田選手に収まらずに相手ボールになったとしてもすぐに複数人で囲んで奪いきる。

欠場前よりコンディションが上がったようにも見える岩尾選手が入ることでもう一段滑らかさと抑揚を手に入れた徳島は序盤から相手を敵陣へ押し込んでいく。いいところまではいくけれどなかなかゴールにはつながらないまま時間が過ぎる中で待望の先制点。

41分 後ろからの長いボールに対しターゲットの垣田選手がオマリ選手と競るもボールはおさまらずにこぼれる。そこを後ろから追い越してきた宮代選手が回収し相手DFラインを押し下げながら前進。宮代選手から中央のジョエル選手、左ハーフレーンでPA内に入っていた西谷選手とつないで西谷選手のリターンを受け取ったジョエル選手がPA手前からシュート。ここまでFC東京で孤軍奮闘してきた東選手がブロックした足にあたったボールはバーをかすめてゴール上に決まる。ジョエル選手はJ1初ゴール。ジョエル選手をIHに起用し攻撃に厚みが出たことが結果として結実した。

前半はほぼ試合を支配し、時間はかかったものの欲しかった先制点も奪いきるという理想的な展開。

後半開始早々の51分、FC東京は早々に前線のディエゴオリヴェイラ選手、レアンドロ選手を下げ、永井選手、高萩選手を投入。この交代によりプレッシングのスイッチが明確化したのもあってか、FC東京の出足がよくなりプレッシングに鋭さが出てくる。少し流れが変わりそうな予感がしてきた51分、徳島はこの試合最大のピンチを迎える。

自陣PA内の高いボールに対しジエゴ選手が思い切り足を振り上げたところへ相手選手が頭を持ってくる。足と頭が接触し相手選手が倒れこんだところで笛。相手にPKが与えられた。これは軽率なプレーと言われても仕方のないところ。

PKのキッカーは永井選手。短い助走の後放ったシュートはゴール右の甘いコースに飛ぶ。これを完全に読み切っていた上福元選手ががっちりキャッチしPKストップ!!今シーズン、ここまでどちらかといえばネガティブな評価を受けることの多かった上福元選手であったが、それを帳消しにしてしまうようなビッグプレーがここで見られた。これだけでこの試合のMVPに十分値する働きである。

このプレーで再び息を吹き返した徳島、FC東京がアダイウトン選手を投入するのもなんのその、ボールを保持し敵陣へ押し込んでいく展開が続く。

71分には追加点。相手のクリアボールをセンターライン付近でカカ選手が頭ではじき返す。落下点に入った鈴木徳選手がそのままノールックでダイレクトに前線へ送ったボールは相手DFラインの裏へ。完全に裏を取った垣田選手がゴール左隅へ狙いすましてズドン。相手DF陣の不十分なラインコントロールの隙をついた見事な得点だった。

終盤も危なげなく試合を運びそのまま2-0で勝利。完勝と言っていいだろう。勝つのは実に5試合ぶり。残留へ向けて次節へなんとか首の皮をつなげることができた。

鳥栖戦に快勝し、横浜FCと打ち合って敗れて以降、再び袋小路に迷い込んだかのような徳島であったが、前節の神戸戦でつかんだ糸口を今節は結果で確信に変えることができた。湘南と清水が勝ったため、勝ち点差はそのままで試合数が減るという、徳島としてはより厳しい状況に追い込まれた。実際、徳島より下の順位にいた3チームはいずれも今節で降格が決まってしまった。徳島も結果如何では次節同じ轍を踏むことになるかもしれない。それでも決してあきらめる必要はない。何しろ、徳島は今が今季で一番強い。随分時間がかかってしまったけど2021年の徳島ヴォルティスがやっとひとつの完成形に達したように思う。もちろん、他力が必要ではあるが力強く残りを戦えば結果はついてくる。残留はきっと奇跡ではなく必然になる。

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