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J1第32節 横浜FC戦 雑感

前節上位の鳥栖に胸のすくような勝利をおさめ、今季2度目の連勝を達成した徳島。遂に降格圏も脱し残留に向けてさらにブーストをかけていきたいところ。今節の相手は最下位の横浜FC。最下位とは言え、夏の補強がピタリとあたり、前々節は横浜FMと引き分け、前節は鹿島に勝利するなどこちらも上り調子である油断できない相手。両者残留のためには絶対落とせない32節は、ニッパツ三ツ沢球技場でのアウェイゲームとなった。

スタメンは前節から変更なし。スタメンを前の試合から動かさなかったのはすごく久しぶりなような気がする。トピックとしてはサブに宮代選手が戻ってきたこと。好調な攻撃陣にさらに頼もしい選手が帰ってきたことは徳島にとって吉報と言えるだろう。

徳島は前からプレスにはいかないものの、最終ラインもある程度高い位置に設定。ピッチ中央にコンパクトなブロックを形成して守備をしようとする。攻撃では西谷選手を起点にしてサイド深くをえぐっていく。しかし開始直後のわずか8分、横浜FCに先制を許してしまう。最終ラインからのビルドアップで縦に入れたところを自陣で奪われて素早く逆サイドに展開される。ボールを受けた松尾選手はPA手前から狙いすましてワンタッチシュート。これがバーの下っ面を叩いてそのまま決まってしまう。いきなりのスーパーゴールによる失点で徳島としては出鼻をくじかれてしまった。

追いかける徳島だが20分、横浜FCに追加点。岩尾選手から縦に差し込んだボールがずれたところを奪われてしまい、またしても少ない手数で前線のミネイロ選手にスルーパスが出る。高く設定されていたDFラインの裏へのボールをカカ選手とのスピード勝負に勝ったミネイロ選手がそのままファーサイドに流し込んでゴール。先制点に続き、わずか20分で0-2になってしまった。

34分、徳島は1点を返す。石井選手が持ち上がって序盤からボールを受けにしばしば降りてきていたバケンガ選手に差し込む。少し流れたが中にポジションを取っていた西谷選手が回収して思い切りよくPA手前からシュート。これはGKにパンチングで防がれたが、リバウンドを最前線まで走りこんでいた岩尾選手がそのまま頭で決める。

45分にはハイボールの競り合いの所で石井選手が背中と頭から落下するという心配なシーンもあるなどやはり落ち着かない展開が続く。これを象徴するかのように前半終了間際にまたしても得点が動く。50分、スローインからのボールを瀬古選手に運ばれ、中央から最終ラインの石井選手が一枚つり出されたタイミングでスルーパス一閃。これがミネイロ選手にピタリとあってラインブレイク。きっちりGKの股を抜いてのシュートが決まる。ミネイロ選手の連続ゴールで徳島はまたしても突き放されてしまったところで前半終了。

後半開始から徳島は浜下選手に代えて宮代選手を投入。しばらく戦列を離れていた宮代選手の復帰は喜ばしいところ。また、前半落下後もプレーを続けていた石井選手だったが、後半開始からドゥシャン選手との交代となった。

後半開始直後は横浜FCのアグレッシブなプレスと奪ってから速い攻めに苦しむ徳島。それでもプレスの勢いがやや弱まった55分、宮代選手が相手DFラインの外側へフリーランニングして右サイドを攻略しクロス。これを垣田選手がファーできっちり合わせてゴール。2-3と1点差に迫った。

この1点を機に横浜FCが自陣で5-4-1ブロックを形成し引き気味に守備をするようになったこともあって、徳島はボールを保持。前へ引っ張り出したり、脇を使ったりして相手の5バックを攻略しようとする。66分にこの試みは実を結ぶ。右サイドでボールを受けた岸本選手が中へ切り込んで左サイド西谷選手を5バックの裏へ走らせる。このボールを受けた西谷選手はファーサイドへクロスを上げる。ここに中から流れてきた垣田選手がきちっと頭で合わせて決める。出し手側の西谷選手と受け手側の垣田選手がゴール前のファーサイドのスペースを使うという認識を共有出来たことによって生まれた美しいゴールだった。

3-3と試合を振り出しに戻した徳島だったが、残念ながら直後に再びリードを許すことになる。同点ゴールからわずか2分後の68分、徳島の右サイドでこぼれ球を拾ったのは途中投入されたばかりの横浜FC高木選手。そのままゴール前まで自分でドリブルで持ち上がったかと思うとPA手前から思い切ってミドルシュート。これがゴール右隅に決まってしまう。またまたのスーパーゴールで徳島は再びリードを許してしまう。

その後も何とか勝ち点を獲得すべく、サイドからの攻撃を主に徳島は攻勢に出る。しかし、ロスタイムに入った92分、相手DFから前線への長いボールに対しGKが出ていたところを遠目から決められて5失点目。これで万事休す。90分で8ゴールが生まれるという乱打戦は横浜FCに軍配が上がることになり、徳島は残留を争う相手に痛い敗戦となった。

とんでもない展開の試合になってしまった。3点取って追いつくなんてことも滅多にないだろうけど、最終的に3-5で負けることなんて本当に珍しいことだと思う。あちこちでGKの問題が取りざたされているけれど、それを差し引いても少なくとも横浜FCの攻撃陣は下位にいることを全く感じさせない迫力だった。決められた5つのゴールともなんだかんだで決めた側が上手かった。勿論「なんとかならんかったかな」という気持ちにならない失点がないことはないけれど。

いずれにしろ、今節はこういう展開にならざるを得なかったと考えるべきだろう。なぜなら徳島はこの試合のほとんどの時間、リードを許した状態で戦っていたのだから。1分1秒でも早く次のゴールを決めないと試合に負ける確率がどんどん上がってしまうのだから、試合を落ち着かせている暇なんてないはずである。そういう意味では同点に追いついた後の時間が運命の分かれ道になった感もあるが、逆転できそうな雰囲気は十分にあったし、あそこでテンポを落とすのが最適だと考えるのは難しい。選手もコメントで触れていたように、傾きかけた流れを完全に引き戻すことができなかったという、理屈で解決できない部分を敗因とするしかないのかもしれない。

先制点を防ぐことができれば・・・というのもあるが、あのゴールもまたスーパーだということができるようなものだったし、試合開始早々というタイミング的にも最悪だった。ちなみに「ゲームをコントロールする」ことに重きを置いているように見えるポヤトス監督にとっては最も好ましくないような試合展開だっただろうなと、個人的にはそのように想像する。


なんとか残留圏内に踏みとどまったことに加え、3得点はいずれもいい形でのゴールだったので残留を争う相手に敗れたとはいえ、SNS上でもお通夜のような雰囲気は観測されなかった。思い切って「今日は自分たちの日ではなかった」と割り切ってしまうのもいいかもしれない。本当に前節勝っておいてよかったと今更ながら思う。次節はまたしても残留を争う大分が相手である。繰り返しになると薄っぺらく聞こえてしまうが、次節も「勝利以外許されない戦い」になる。選手たちにはどうか今節3得点したというpositiveイメージだけを次の試合に引き継いで欲しいと思う。ホームでの歓喜を信じている。

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