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J1第29節 川崎フロンターレ戦雑感

競争相手のチームも苦戦しているとは言え、じりじりとJ1残留の背中が遠くなってくる。前節の名古屋に敗れたことで徳島は5連敗となり、残り10試合を残して16位との勝ち点差は3となった。下位との直接対決を残しているとはいえ、これ以上離されるといよいよ目標達成が難しくなってくるという正念場の真っただ中、今節対戦するのは首位のフロンターレ。カップ戦に加え、週の中日にはACLで延長まで戦いPK戦で敗れたばかり。過密日程の中でけが人も複数出ており、まさに満身創痍といった状況。徳島としては実力差がかなり大きい相手にコンディション面での利を生かしてどれだけの戦いができるか。29節は川崎をポカスタに迎えてのホームゲームとなった。

スタメンは前節から3人を変更。前線は渡井選手に代わり、一美選手を先発起用。GKが長谷川選手から上福元選手に変更となった。また前節名古屋戦でレッドカードを受け退場になった岸本選手が出場停止になるのに伴い、代わりに藤田征選手が右SBに入った。サブにはこの夏新加入のムシャガ・バケンガ選手が遂にメンバー入り。おそらくJデビューが実現するであろう。川崎の方は怪我で欠場していた旗手選手が先発に復帰。こちらも新加入のマルシーニョ選手が先発で初出場となった。主力であるレアンドロダミアン、家長両選手はベンチスタートとなった。

序盤から徳島は相手にボールを持たれる展開。的確なポジション取りで正確にパスをつなげてくる川崎相手にボールの取りどころがない感じ。それでもゴール前をきっちり固めて粘り強く守備をしていく。攻撃は岩尾選手を降ろしてビルドアップを試みるも、相手の圧が強いと見れば無理せず垣田選手めがけて蹴るという選択をする。

前半11分 ボールを持つ相手GKに垣田選手がプレッシングに行くことでゴールキックを右サイドへ制限。ボールの出どころを予測した藤田征選手が出足よくゴールキックをカットしたところを浜下選手が拾う。相手の中盤の選手が寄せてくるのが遅れたのもあって、浜下選手は相手SBを交わして前進し、同じサイドに相手CBを引き連れて開いていた垣田選手へパス。垣田選手は手薄になった相手ゴール前を見て逆サイドへクロス。大外から入ってきた西谷選手がこれを落ち着いてゴールに流し込んで先制点!・・・・という形だったがVARの介入があり、オフサイドの判定で得点が取り消されてしまった。鮮やかに崩した形であったが前節の名古屋戦といい、またしても判定に泣かされることになってしまった。

それでも徳島は15分にも一美選手のクサビを受けた岩尾選手が相手アンカーの右脇に空いていたスペースからサイドをドリブルで持ち上がり、中で一美選手にピンポイントでクロスを合わせる。これは惜しくもバーの上に外れてしまうが、相手の左サイドに見出したウイークポイントをついた攻撃はなかなか有効であった。

チャンピオンチームと互角に近い内容で戦えていた徳島だったが33分、リスタートから新加入マルシーニョ選手がドリブルであっという間にPA内へ侵入。これをたまらず藤田征選手が倒してしまいPKをとられてしまう。このPKを知念選手がきっちり決め、川崎に先制を許す。ここまでなんとかマルシーニョ選手を抑えていた徳島だったが、またしても高い個の力に屈することになった。

これまでであれば、このままズルズルと失点を重ねる嫌なパターン。しかし、今日の徳島は「一味」違った。先制を許した直後の37分、垣田選手の右サイドでのポストを中盤で拾った岩尾選手から縦パス一閃。ゴール中央でこれを受けた一美選手が素晴らしいファーストタッチでジェジェウ選手を交わし、そのまま右足を振りぬいて豪快に同点ゴールを決める。一美選手は移籍後初ゴール、徳島としては実に6試合ぶりの得点となった。夏に完全移籍してきた期待のストライカーの豪快な一発はゴールを待ち望んでいたチーム・サポーターを大いに勇気づけることとなった。

しかししかし同点に追いついたのもつかの間の42分、クロスのクリアボールが不十分になったところを旗手選手がPA前で3人を引き付けながら反転し縦に差し込む。パスを受けたマルシーニョ選手はDFを背負ってポストし、狭いスペースながらフリーで受けた脇坂選手が素早くゴール右隅に決めて再度川崎に突き放される。旗手選手の強さ、脇坂選手のポジショニングとシュートまでの素早さ、正確さなど個人の技術に加え、川崎のチームとしてのパスワークの正確さがあれば、ごくごく狭いスペースを使って得点ができてしまうことを見せつけられてしまったゴール。この2点目については「どうしようもない」というのが正直な感想。引いて守れば必ずやられるということを証明しているともいえる。やられる確率をちょっとでも減らすにはこちらが長くボールを持つしかないということだろう。そのまま前半は1-2というスコアで終了。

後半も川崎がボールを保持し押し込む展開からスタート。すると51分、左からのCKに石井選手のマークを振り切って前へ入ってきた知念選手が頭で合わせて追加点。ここでも知念選手のパワーに振り切られる形で得点を献上することになった。

1-3となり試合は難しくなってしまった徳島だったが、それでも諦めずに積極的に攻撃を試みる。特に川崎の後ろの選手たちは連戦で出ずっぱりだったこともあって、時間経過とともに疲労の色が濃くなってくる。スライドが遅れて徳島の縦パスが通るシーンも増え始める。

62分には今夏新加入、残留への最後のピースと期待されるバケンガ選手が初お披露目となる。バケンガ選手は多少体が重そうには見えたが、特にパワー面での力強さ・懐の深さを披露。それだけでなく、得点をとるためのポジショニングだったり、積極的に守備に行ったりと孤立することなくチームの中で自分の良さを出せるような印象を抱かせる選手であった。短い出場時間ではあったが今後に大いに期待が持てるデビュー戦であった。

終盤はかなりオープンな展開が続き、お互いのゴール前をボールが行き来する時間が続く。86分の渡井選手のクロスをバケンガ選手が合わせに行って倒されたシーン、90分のサイドからのパスをPA内で岩尾選手がフリーでもらったシーン、91分PA手前からの渡井選手のシュートが相手GKのスーパーセーブで阻まれたシーンなど、徳島も幾度も見せ場は作った。されど、ゴールは産まれず試合終了。1-3での敗戦で徳島は6連敗となった。

6試合ぶりの得点、バケンガ選手のデビューなどトンネルを抜け出しわけではないものの、少なくともその先にうっすらと光が見えた試合でもあった。特に首位の川崎相手に得点シーンだけでなく、幾度も攻撃の形を見せられた点はチームを勇気づけたことになっただろう。今節は特に、これまでのようにサイドへボールが出てから中へ切り込まず、早めにクロスを上げるシーンが目立った。こうすると必然的にクロスの本数も増えてくるので、得点のチャンスの数自体も増えてくる。より得点への意識を強めて戦うという意図が感じられる変化だった。

徳島の攻撃に見ごたえがあったのは、前述のように川崎の守備の選手の多くが連戦中も出場を続けており、コンディション面で万全とは言い難い状態であったという条件は考慮に入れる必要があるだろう。個の力の差が縮まれば十分戦えるということは、個の力の差がチームとしての力の差という、今年何度繰り返し言及されたかわからない問題点がただただ浮き彫りになるばかりではあるが。

正直なところ、前節・今節は勝つことが難しい相手であることは多くの人が認識していたはずである。そんな中、結果は出なかったものの、チームの状態は底から脱しつつあるのではないかと感じさせる試合が出来たのではないか。次節はいよいよ残留を争う、一つ順位が下の仙台が相手。「6ポイントマッチ再び」である。内容ではなくここで結果が出せるかどうか、それがこの後残留戦線に生き残れるかどうかの運命を決定すると言っても過言ではないだろう。



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