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J1第35節 ヴィッセル神戸戦 雑感

岩尾選手の前半での交代とそれにリンクするかのように失速した後半。最終盤に来てチームは未だ迷いの霧の中にいることが白日の下にさらされることとなった前節の敗戦からわずか3日。多くのモヤモヤを抱えたままではあるものの、負けられない戦いは続いていく。35節は相次ぐ高額補強で日増しにムキムキになっていく強豪神戸が相手のアウェイゲームとなった。

前節途中交代になった岩尾選手の出場が危ぶまれるところではあったが、果たして岩尾選手はメンバー外となった。バケンガ選手もサブに回り、鈴木徳・小西両選手の先発が前節からの変更点。故障があったのか、少しメンバーからはずれていた一美選手がサブに復帰。神戸はダイヤモンドの頂点に君臨するイニエスタ選手はいわずもがな、一列後ろの山口蛍選手、さらに一列後ろにはサンペール選手という最強の中盤に加え、2TOPは現役代表の大迫選手と近々の代表入りが囁かれる武藤選手の2TOPという異次元のメンバー構成。わかっていたことだがスゴイ。

キックオフ。蓋を開けてみてちょっとビックリ。岩尾選手不在の窮地に徳島はアンカー+2IHを置く3-4-4システムをリーグ戦ではおそらく初めて採用。鈴木徳選手がアンカーに入り、その前に小西・ジョエル選手が配置された。相手が最終ラインでボールを持つと左は西谷選手、右は宮代選手がプレッシング。彼らは相手のCBとSBを両方を見るタスクが課されていたようで序盤からかなり運動量が多くなっていた。サイドへボールが出ると縦を切って中へ誘導。中央から相手の前線の選手にボールが入ったところをCBといつもより人数の多い中盤の選手が挟み込んでボールを奪取。

ボール保持時にはCBがボールを動かすことで相手の中盤を動かして、DFラインとの間にできたスペースに降りてきた宮代選手につけることでチャンスを構築する。左サイドでは好調の西谷選手にジョエル選手が絡むことで、これまでより分厚い攻撃を見せる。ジョエル選手は攻撃に守備にと豊富な運動量を生かしてピッチ内を縦横無尽に動く。ドイス・ボランチではともすれば動きすぎることが課題でもあったが、半列前のポジションでプレーすることで、逆にそれが強みとしてチームに恩恵をもたらした。

35分には足を痛めてジエゴ選手が倒れたけれど笛は鳴らず、オンプレーのまま。イニエスタ選手は自分の持っていたボールをラインアウトさせずにその場に立ち止まってそのまま保持。ジエゴ選手が起き上がるのを待ってからゆっくりドリブルを再開する。まさにイニエスタ選手にしかできないプレーを観ることができた。

前半はスコアが動かないまま終了。イニエスタ選手や武藤選手の個の力に手を焼きながらもしっかりとした守備を披露し、崩されるような場面は見当たらず。攻撃ではこちらも相手の個の力で最後はやらせてもらえず決定的な場面は作れずも、その1歩-2歩前までは何度も行くことができた。岩尾選手不在の影響を感じさせず、前節のモヤモヤを完全に払しょくするような前半の戦いであった。こうなるとなんとしても勝ちが欲しい所。

後半開始早々に大チャンス。49分 これもサイドとIHがうまく絡んで左サイドを攻略。最後は酒井高選手とのマッチアップで西谷選手が粘りCKを獲得。小西選手からのボールを中央で宮代選手がヘディング。これがバーを直撃しファーにこぼれたところを岸本選手が押し込もうとするも相手に阻まれゴールならず。

「決めるべきところを決めないとなんたらかんたら」とは今年に限らず、また徳島に限らずサッカーにおける永遠の課題ではあるが、またしてもそれが現実となってしまう。56分 中央でボールを持ったイニエスタ選手から左サイドの酒井選手へ浮き球のパス。西谷選手がチェックに行くも追いつく前に正確なクロスが入ってくる。ファーへ走りこんできた大迫選手はマーカーの岸本選手の後ろへ入りうまく合わせてゴール。イニエスタ選手の展開力、酒井選手の素早い判断に基づく正確なクロス、大迫選手のクロスの弾道を瞬時に読み切って岸本選手の後ろにポジションをとるという読みの鋭さなど神戸の個の力が詰まったゴールで、ここまでよく戦っていた徳島だったが先制を許すことになった。

それでも徳島は集中を切らさず、ここまでうまく行っていた戦い方を継続。61分には相手守備網を突破した後、中央で宮代選手が起点になりサイドを経由して、最後は再び宮代選手が強烈なシュートを放つ。これはGKにキャッチされるも組織的な守備とビルドアップから力強い攻撃を見せる。

先制点の場面以外にはほとんど相手に決定的な場面を作られることなく、戦った徳島だったがゴールを奪うことができないままタイムアップ。0-1で敗戦し2連敗となった。

どんなにいい内容の試合をしようが今日も徳島が敗れたことは事実である。それでも今節は久しぶりに気持ちよく徳島の試合を観ることができた。岩尾選手がいないこともあるが、神戸対策として1アンカー+2IHと変更した布陣を機能させた指揮官、スムーズなビルドアップと効果的なサイドチェンジ、雑に攻め急いでオープンにすることのない落ち着いた試合運びなど徳島のサッカーが帰ってきた感覚がする。何より西谷選手やジョエル選手の驚異的な運動量に裏打ちされた気持ちのこもった献身的なプレーは多くの人の胸を打った。

残りは3試合になった。残留を争う他チームの試合が明日あるので今節終了時点で徳島がどの位置にいるのかはわからない。より厳しい状況に置かれてるかもしれない。たとえそうだとしても、今日のような試合が観られるなら、2021 J1リーグの徳島という箱の中にきっと希望は最後まで残っている。

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