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地方DXが進むために必要なのは「自分ごと化」と「EBPM」だと再確認した話 ~SUNABACO@熊本県八代市イベントレポート~

こんにちは。ヤフーのオープンコラボレーションハブ「LODGE」の中川です。LODGEはオンライン/オフラインのハブとなり、各自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する取り組みをしています。私は主に地域DX推進ミートアップ」シリーズを企画・運営(オンラインイベント司会)をしています。

今回は「地域DX推進ミートアップ」の第5回目! ではなく、なんと私自身が「地方のデジタルトランスフォーメンションで大切なこと」をテーマに熊本県八代市のSUNABACOさんで登壇させていただいたイベントレポートです。(株)SUNABACO 中村 まことさん をモデレーターに、八代市役所の職員の方ともトークセッションした内容をご紹介します。
イベント当日は、会場には20名近くの方が、YouTube Liveでは100名を超える方が視聴してくださいました。私の話に真剣に耳を傾け、何度も頷いてくださっていたので、気を楽にしてお話することができました。

下記、SUNABACOさんでも、とてもわかりやすくイベントレポートをまとめていただいていますので、ぜひこちらも合わせて読んでいただけると嬉しいです!

本イベントレポートのポイント

1. 自治体の担当者も含め皆が課題や施策に対して「自分ごと化」できることが最重要

2. 統計データをファクトとしたEBPM(Evidence Based Policy Making)による施策検討をしていくことを自治体DXでもスタンダードに

3.  小さく始めてユーザー評価を繰り返す文化を、行政も市民も理解することで本当に必要なサービスが提供できる

動画アーカイブ

アーカイブ動画は少し長いので、チャプターごとのリンクを用意しています。YouTube動画の概要欄に載せていますので、気になるタイトルのところから参照していただければと思います。

自治体DXを「自分ごと化」して考える

中川:
LODGEが「なぜ自治体DXを取り組んでいるのか?」については、Yahoo! JAPANのミッション「情報技術で日本をもっと便利に」をベースにしています。

・自治体DXを通して住民、市民の方に向けて情報やサービスを通して「便利」を届けていきたい

・自治体の規模ごとに異なる課題やDX推進の事例、日本全国が共有できる情報コンテンツを、LODGEがハブとなって展開

・DXにどう着手していいか分からない方にも、具体的にわかりやすく実用的で「自分ごと化」につながるようなコンテンツ作りに気を配っている

「EBPM」による施策決定の重要性

中村さん:
DXには大きく2軸あって、まず1つはこれからの自治体が少子高齢化になっていくなか、人間がやらなくていいことは機械に、と八代市なども取り掛かりはじめている。
もう1つは「EBPM(Evidence Based Policy Making)」。なんとなく人の感覚で施策検討・決定していたものを、人の行動や意見など、統計データなどをファクトとして分析して施策を作っていく。今はまずそれらの情報をデジタル化するためのデータを貯めるようにしている。SUNABACOも八代市とデジタル政策に関わらせていただく上で、ヤフーのDS.INSIGHTを活用し、八代市の昼・夜の人流調査などに使っていたりします。


中川:
「データ活用」「データドリヴン」はいきなり全員で使いましょう、は難しいですが、まず誰かが効果を体験してもらい、それを周りに共有してもらうことで「みんなでデータをみる」という文化が浸透できるといいですね。

中村さん:
(検索キーワードで)「日奈久温泉」の例で言うと、女性が「日帰り」「ランチ」といったキーワードと掛け合わせて検索しているケースが多く、お泊まりプランよりも日帰りプランを訴求する方がより効果的という政策決定ができてます。

小さく始めてユーザー評価を繰り返す文化

中川:
大学生向けに、自分たちが考えたアイデアを世の中の人に問うプロセスについて講義しています。「アイデア → 顧客の声を聞く → 改善 → 反映 → 顧客の声を聞く」の繰り返しをトレーニングするようにしており、リーンキャンバスでは「課題」と「顧客」を重要視している。
「顧客の声を聞く」は、自治体DXでも同じだと考えています。一度に完璧を求めてやってしまい、出来上がったものが顧客(住民)の皆さんに全く刺さらない……という、よくありがちな間違いに陥らないようにすることが大事だと思いますね。

中村さん:
完璧を目指してしまうと無駄なコスト・失敗が生まれてしまう。今までやったことない、自治体の仕組みを変えるDXは試行錯誤しながらチャレンジして失敗しながら成功例を見つけていくしかない。
小さく出して小さく失敗、成功の積み重ねをしていくことで、正確に市民のみなさんに役に立つものが作っていける。市民も自治体職員のみなさんにも小さな失敗の許容が大事。失敗を許されない文化が今までの行政・政策にあって、それを変えることがDXだとも思います。

さらに、文系大学生が取り組んだサービスデザイン実習からの気づきについてお話しました。

中川:
学生の皆さんに社会課題について取り組んでいただいた際、今の自分が関わっていない世界・テーマであっても、若者の今の常識が未来に反映されるような、彼ららしい調査とアイデアでアウトプットしてくれた。と同時に、発表の時間が知見の共有の場にもなっていました。
多くのチームが高齢者課題に取り組んでくれたなか、あるチームのプレゼンの冒頭にあった「家族のこと知ってますか?」の1ページは「自分ごと化」できてるなと感じました。

学生の調べる力、制限なく出てくるアイデアは、新しい気づきにもなるし、彼らにとっても良い体験だったはず。学生は定性調査に長けていると思うので、データ(定量調査)との掛け合わせでファクトを強化していくのが良いと思います。

中村さん:
サービスデザインの実習、面白いですね。(伝統工芸テーマのところで)たとえば八代市は「い草」の産地でもあるので、このワークショップをやってみるとおもしろそう。
EBPMでもほんとにファクトなの?と疑うところを、定性調査(市民の生の声)で補えるといいですね。

まとめ

下記の掛け合わせが、今後の自治体DXには必要な要素であると結ばせていただきました。

1. 自治体担当者とのコミュニケーションを大事にしていこう
2. デジタル広聴、データドリヴンな開発を推進していこう
3. 住民に寄り添い、自分ごと化できる人の協力を得て、小さく回していこう

トークセッション

イベントの後半では、八代市の職員の方も交えてトークセッションを行いました。

(敬称略)
モデレーター:中村 まこと(SUNABACO 代表取締役)
黒瀬 琢也(八代市 総務企画部 総括審議員兼次長)
森下 絢子(八代市 経済文化交流部 観光クルーズ振興課)
中川 雅史(ヤフー株式会社)

中村さん:
お二人は(前半の)お話聞いてどうでしたか?

黒瀬さん:

(自身が携わっている)防災関連でも我がことに考えてもらうことを大事にしているので「自分ごと」はとても刺さりました。

森下さん:
意外と自分のやってることが近いものだとわかることができた。自分のことのように考えていけば、さらに良い施策展開ができるんじゃないかと思いました。

中村さん:
中川さんもお二人と一緒で、学生のワークを見ながら「自分ごと」になっていったんですよね? 学生さんも「自分ごと」になっていった変化点もあるんですか?

中川:

学生のワークでも予想を超えるものや相談を受けていくことで、途中で没入していくときに私自身も「自分ごと」で考えているなと思うことがある。ユーザーインタビューのワークは繰り返していくことで滲み出てくる本質的な課題を見つけた学生さんのアウトプットは面白いものになりやすいですね。

中村さん:
DXで大事なことは、今までとものづくりのプロセスが大幅に変わる。デジタルツールの発展とともに、役所の庁舎の中だけで簡潔せずに、調査をしてものづくりが進んでいくのかと思いますが、そのあたりどうですか?

黒瀬さん:
やり方だと思うのですが、市民が(行政施策・DXに対して)近くなってきてると思いますね。

森下さん:
ヤフーのDS.INSIGHTを使っていますが、今までは想定「〜かもしれない」だけで施策検討していたものが、DS.INSIGHTの「People」「Place」の機能を組み合わせることで、人の流れの根拠とともに八代市の観光訴求を検討できている。仮定に対する根拠取りに、ビッグデータ活用は自然な流れになってきていますね。

中村さん:
未来を考える若者のアイデアから、我々が気づかなかったことや新しい「学び」が多かったという話があったが、若者が目指してる未来を、データやレポートをもとに根拠付けして施策考えていくことが、DX推進では大事なことになるかと思いますね。

中川:
若者に対してデータに触れる機会はまだ少ない、とっつきにくいとは思うが「ここから面白いものが見つかるかも」を大人がサポートしてあげれるといいですね。

中村さん:
若い人とのコラボレーティブですね、学生さんと一緒になってチャレンジできそうなことがありそうですね。データやツールが民主化していくことで、市民と行政が一緒になって問題解決を図ることになる大きな転換点がDXだと思っている。自分で自分の問題を解決していく、市民が自分でエビデンスを見て、政策に対して意見が言える=シビックプライドにつながっていく可能性がありますね。

黒瀬さん:
シビックプライドの根本は自助。それをやれる状態の人が、自分の街をこうしたい、こうなっていきたいとなっていく流れかと思う。今はデジタルの力で、自分の声を発していける状態になってきているので、自治体が「広聴」して声を受け止めて、ちゃんと返してあげる。街を一緒になって作っていく好循環ができれば、さらにいいシビックプライドに繋がっていくのではと思います。

中村さん:
そういうことが八代でできるといいですね、何かやりたいですね。

このあと、会場参加の皆さんからの質問も受け付けながら対話をしました。
熊本県八代市のSUNABACOさんではプログラミングスクールなども開催されています。スモールスタートでものづくりをする力をお持ちなので、ぜひ市民と行政+若者の力で、何か「コト」を起こしていきたいですね。
LODGEとしても引き続き応援していきたいと思います。

イベント後に食した辛子蓮根がとても美味しかったです(^^)

動画アーカイブのURLはこちら。チャプターリンクもあります。

https://youtu.be/-uxHDV8Q5yk


「自治体DX」を推進するLODGEでは、引き続き「地域DX推進ミートアップ」シリーズのイベントを積極的に開催予定ですのでお楽しみに!

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