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LOCUST 旅行記(会津・中通り編) 太田充胤

LOCUSTは、この度『LOCUST vol.6 会津・中通り』を刊行いたします。3年ぶりに執筆者全員で旅行をして作った号となります。
ロカストプラスでは本誌の刊行に先立ち、その旅行中に書かれた旅行記をご紹介します。第1弾は編集部員・太田充胤による旅行記です。

なお、過去の記事では本誌の巻頭言を無料で公開しております。『LOCUST』がどんな雑誌か、どのようなことを意図した特集かについては、こちらの記事をご参照ください。

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1日目

  - 1130 東京駅からやまびこ135号に乗り込んで郡山へと向かっている。グリーン車にしておいてほんとうによかった。最寄駅から電車に乗り込んだ時点で嫌な予感はしていた。東京駅で電車を降りると、構内がスーツケースを引きずる人で溢れかえっていた。出発の数日前からCOVID-19の第7波が話題になっていて、昨日の感染者数は10万人に上ったという。判断を間違えたかもしれないという懸念が拭いきれないが、ドライバーという立場もあり引き返せないという事情もある。対外的にどうこうという話よりも、私自身がこの人込みに晒されるストレスに耐えられないような気がする。第7波のさなかの人込みとなればなおさら、心的負荷が大きい。ストレスは頭ではなく肌で感じる。情動的には気が重い。理屈でなんとか整理をつけて歩をすすめる。精神を守るためになにか食べたほうがいい。郡山に到着してから集合まで1時間と少ししかない。昼食になにを食べるかは決めていない。というか、郡山でなにかを食べられるかどうかわかったものではない、と考えておいた方がいい。東京駅構内を人の少ないほうへと歩いていく。弁当を売っているエリアにたどり着く。寿司に目が行くが、郡山で食べるかもしれない。ある程度腹持ちして、なおかつ、郡山で何かを食べることになってもかぶらないもの。熟慮の結果、おにぎりを3つ使って新幹線に乗る。グリーン車は空いている。マスクを外しておにぎりをほおばると、みるみるうちに精神が回復していくのがわかる。まるで憑き物が落ちるように、逆立った情動が落ち着いていく。炭水化物は偉大。

  - 1200 もうすぐ郡山。結局何も旅程を決めずにここまで来てしまった。電車の中で気がかりだったメール仕事を2つ片付けた。まだやるべきことが山積みだけどいったん忘れることにしよう。久しぶりのロカスト旅行だ。

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