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LOCUST旅行記(会津・中通り編) 寺門信

LOCUSTは、この度『LOCUST vol.6 会津・中通り』を刊行いたします。3年ぶりに執筆者全員で旅行をして作った号となります。ロカストプラスでは本誌の刊行に先立ち、その旅行中に書かれた旅行記をご紹介します。第4弾は編集部員・寺門信による旅行記です。
なお、過去の記事では本誌の巻頭言を無料で公開しております。『LOCUST』がどんな雑誌か、どのようなことを意図した特集かについては、こちらの記事をご参照ください。

 初日の旅程は全くの白紙だったため、行きの新幹線の中では郡山市についてひたすら検索をしていた。すると、どうやら郡山市田村地区には「お人形様」という巨大な鬼の人形があるらしいことを知る。念の為買っておいた『るるぶ』にも載っておらず、『LOCUST』で取り上げるのにもちょうどよさそう。土地の伝承文化となると、谷さんが興味を持ちそうだな。そういえば今回のゲストには、民俗学が専門の石橋さんがいるな。そんなことを思いながら、グループLINEに「お人形様」の話題を投げてみると、他にも関心のある人が何人かいて、行き先の目処がある程度ついたと安堵した。その後は、昼食の場所を探さねばと、パラパラと『るるぶ』を眺めながら新幹線に揺られる。
 郡山駅に着くと、集合まで少し時間に余裕があったので、駅から徒歩10分ほどの隆仙坊(お蕎麦屋さん)に向かう。足の下ろせる大きなテーブル席の角に案内され、テーブルの反対側には50〜60代くらいの男性3名が座っていた。どうやらそのうちの一人は会社を経営しているか、あるいは管理職であるようで、「この3連休に部下が沖縄旅行に行っている。帰ってきてコロナ陽性になったら現場が止まってしまう。勘弁してほしい」といった話をしていた。他の二人も、旅行について決して好意的ではない意見を話していて、自分が大きめのリュックを持ち歩いていたこともあり、少し緊張しながら蕎麦をすすった。

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