見出し画像

なぜ、白馬で人力車? ローカルツーリズム代表・糀屋が人と土地に感じた大きな可能性

9月より白馬を人力車で観光する取り組みがスタートした。はじめたのは、スカイランニング日本代表でもあるアスリート・上正原真人さん。この事業に出資者として関わっているのが、ローカルツーリズム代表の糀屋総一朗だ。なぜ白馬で、なぜ人力車に投資しようと考えたのだろうか。

地域の持続可能な経済の実現を目指して

現在、福岡県宗像市の大島で一棟貸しの宿「MINAWA」を運営している糀屋。目指しているのは、その土地にある資源を活かし、経済を健全に回していく「地域循環経済」の実現だ。福岡以外にもさまざまな地域の可能性を探っているが、その中でも注目しているのが長野県白馬村だ。地域の人々も積極的に新しいことに取り組む土壌があり、今年の7月には「白馬を持続可能な村として運営していくためには何が必要か」というテーマで「HAKUBA Vision Design Boot Camp」が行われた。集まったのは地元住民のみならず、東京から広告代理店の社員、上正原さんのような移住者、糀屋のように地域創生に取り組む人などさまざま。その中で議題となったのが、「ゼロカーボンな移動手段」だった。

地球温暖化は今や地球全体で取り組むべき喫緊の課題だ。その中でも温暖化の原因となる二酸化炭素の排出をいかに減らせるかが大きなウェイトを占めている。自然とともに暮らし、冬はスキー・スノボを主な観光資源としている白馬村にとってはまさに「自分ごと」の課題でもある。

ゼロカーボンというと思いつくのは、ガソリン車から電気自動車への転換だ。会議でも電気を使った乗り物についての提案が多く出された。そんな中、上正原さんが発した「人力車はどうですか」という言葉に糀屋はピンときた。「熱意とか、やる気をめっちゃ感じたんですよね。会議の後にご飯にも行ってさらに話して、すごくいいな、と思ったんです」

上正原さんに感じた「トップになれる人物」の考え方

糀屋は上正原さんと話していて、「トップになれる人物の考え方」をしているなと感じたという。「ビジネス、スポーツ、ポーカー……なんでもいいんですけど、どんな分野でもトップにいる人って、試行錯誤して自ら改善策を見つけ出して進む、ということが身についている。話していて彼にもそれを感じたし、ストレスなくコミュニケーションできたなと思っています」。上正原さんがスカイランでなのか、ビジネスなのかはわからないが、何かで上に行く人物だと感じた。「彼に任せたら、いろいろ自分で考えてやってくれるんじゃないかなと思いました」

糀屋が白馬に対して最も魅力だと感じているのは、人だという。「もちろん自然も素晴らしいとは思うのですが、日本って他にも自然の魅力がある場所がたくさんある。それを越えてかけがえのないものが白馬の人たちだと思いました。土地に対してすごくコミットしている感じがして、それが地域の力になっていると思います」。白馬にもとから住んでいる人たち、移住してきた人たち、それぞれが地域の力になりたいと動いている。「白馬がどうあるべきか」をしっかりと考えて前に進んでいると感じられている。

糀屋がさまざまな地域を見たり、自ら大島の「MINAWA」を運営する上で感じていることは、「中の人たち」のことだ。「その地域に暮らす人や長くコミットしている人は、環境に慣れてしまうから自分たちの魅力に気づいていないなと思っています。気づくためには、外部の目と交流が重要。白馬にはその土壌がすごくあるなと思っています」。内部の人たちだけでも、外から来た人たちだけでもだめ。土地の人と外部の人のコミュニケーションがあってこそ、地域が活性化していく。「そういう意味でも白馬にはすごく可能性を感じられますね」

もともと観光が主要産業となっていた白馬だが、コロナ禍により海外からの観光客が一切来なくなった。特にブームが去り、海外からの観光客に人気だったスキー場への打撃は大きかった。そういった背景もあり、夏のグリーンシーズンでも新しい取り組みを始めやすくなっている。

アスリートにも「エコシステム」を

糀屋が上正原さんに投資をしようと思ったのは、土地だけでなく上正原さんが取り組んでいるスカイランニングなど、マイナースポーツの現状を知ったからでもあった。日本トップレベルの成績を残していたとしても、スポンサーからは物品提供のみ。海外遠征の飛行機代も出ない場合もあるという。「ビジネスの観点から、なにかできないかなと思ったんですよね。プレーヤーが安心してプレーできる、お金がうまく入るエコシステムのような仕組みができればいいなとも思いました」。何でもいいからきっかけになるように。人力車はその第一歩だ。

インターナショナルスクールができるなど、新しい動きもある白馬。「この土地を良くしていこう」と思う人たちに可能性を感じている糀屋。「とにかく人にすごいポテンシャルを感じるので、もっと関わっていきたいと思っています」

人力車をきっかけに、さらに白馬を盛り上げたい。地域の人たちとさらに魅力を探っていく。

(取材・文 藤井みさ)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?