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「地域循環経済」の必要性2 お金の流れを調査し、議論をはじめよう

ローカルツーリズム株式会社代表の糀屋総一朗です。1つ前の記事で、地域再生、地域復興のためには「お金」に正面から向き合うべきと書きました。向き合うといっても、ではまず何から始めたらいいか? 今回はこちらについて書いていこうと思います。

前回の記事はこちら

まずは調査から始めよう

施策を検討する前に、まず「お金の流れがどうなっているかを調査、把握する」ことが必要です。その情報を得て「分析すること」が、やるべき「打ち手」を考えるための、最初のステップになるからです。

みなさんは『漏れバケツ結論』という言葉があるのをご存知ですか? 「観光や投資で町や村などの地域に入ってきたお金も、それが地域外にあるデイケアセンターや、建設業者の支払いに使われてしまえば、結局『漏れ』て出て行ってしまう」というケースを指す言葉です。

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似たようなケースが全国各地で起こっているのです。「地域のお金」が、どう流れているか? それをしっかりと調査しておかなければ、新規事業を立ち上げたところで、どんどん「漏れ」て言ってしまい、地域にお金を残すことができません。

一つの事例として、北海道にある下川町という町の取り組みはとても重要なヒントになると思っています。下川町では「町の経済状況を家計と同じように捉える」というところから地域問題の解決に取り組み始めました。どこからお金が入ってきて、どこからお金が漏れているのか? それをまずは家計簿をつけるように計算してみたのです。

下川町の場合は、その調査によって「最も大きな支出はエネルギーコスト」ということが見えてきました。そうなれば「もし、このコストを自給できれば年間で10億円ぐらい浮くんじゃないか?」という仮説を立てることができます。具体的な打ち手が見えてくるわけです。

実際に、下川町ではそういった仮説のもと、「住宅建材や家具、木炭、精油、木質バイオマス用のチップ製造など、一本の木をどこまで余すことなく使えるか」という取組みを始めました。(参照:https://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/pdf/2_01_shimokawa.pdf)

まず、公共建造物を木質化して地域産の木材需要の拡大を促進。さらに、木材を伐採した時に出る林地残材をチップ化して、それをエネルギー資源に変えるバイオマスボイラーを11基設置しました。そこから30の公共施設に熱エネルギーを供給することで、熱自給率は公共施設だけでも64.1%、下川町全体でも49%がになりました。これによって2014年時点で年間、1,800万円の燃料コスト削減に成功しています。浮いたお金の半分は、現在、子供の医療費の無償化や保育料など子育て支援に充てられるようになっています。

お金の行き先を測ることで、地域のお金の漏れ穴を塞いだ上で、社会的価値を作り出すことに成功したのです。

調査をして、きちんと数字を出した上で話をしなければ、何か施策をやろうと提案しても地域の同意が取りにくいことも事実です。調査の上で生の数字を出せば、地域の中で「なぜ、これをやるのか」「やらなければならないのか」という説明がしやすくなるんです。この赤字を消すためにこういう事業をやりましょう、いや、やめましょう、と考えられる。家計で言えば、「お金に困っているのに競馬なんかにお金を使ってはダメだろう」と。「ギャンブルは辞めて、そのお金で新しい炊飯器を買おう」と考えることができる、ということです。

そうすれば、「GDP(地域で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値)が1%上がってますね」とか、「GDPを10%まで上げたいですね」という話をして、それに対してどういうアクションを起こせば良いかが具体的に見えてくるはずです。

ただし、地域のお金の流れを調べるためには、それなりの苦労が伴います。「産業連関表」という産業間のお金の出入りを把握し、地域のお金の循環を調べることができる統計表がありますが、地域ごとに作成するのは費用と労力がかかりますし、それなりの知識も必要となってきます。

誰でも簡単に地域の資本循環を調べられるRESASというサービスもありますが、その分析となるとそれなりのノウハウも必要になります。

現実面で難しければ、外部者の手を借りるという方法論も検討する必要があります。それによって「調査」も「分析」も「知識」も補完できるなら、予算を割くに十分な理由になると思います。

地域の価値を値付けする

調査、分析の上で、施策を考えることになりますが、当面大事にしなければならないのは「外貨」の獲得です。人口がどんどん減っている地域では、内需が減っていくばかり。内需だけではどうにもなりません。外から来る都市生活者、海外からの旅行者からのお金が入ってこないと経済は回っていかなくなります。

また、人口が減っている以上、やってくるお客に対応できる手数も減っています。これまで通りに続けていただけでは、これまでと同じ所得が維持できるはずがありません。

「外貨を集めたい」と躍起になるあまり、団体客を相手に安い料金で呼び込もうとするパターンに陥ってしまう地方もたくさんあります。でも、「安い」だけでは一過性のお客しか相手にできず、地域の人たちは奉仕作業で疲弊してしまうだけ。将来的な「お金」には結びつかないのも現実です。

今、そこに住んでる人たちが気づかない中にも、外から見たら価値がある、高い値段のつくものを見つけましょう。そこに、きちんとした価格をつけて外に売るのが理想です。「安売り」する前に、本当に価値のあるものを探しましょう。

具体的な方法としては、以前、例として「観光」事業の可能性について書かせていただきました。地域の魅力をストレートに「価値づけ」できるという点で「観光」を充実させるのは方法論として非常に合理的です。

例えば「大島にある自然の絶景を見せる」というサービスがあったとします。山でも、海でも、星空でもいい。それは島の魅力だし、大きな財産ですから、きっと観光客にアピールできるはずです。それを500円で売るのか?1万円で売るのか?もちろん1万円で売れればその方が島は潤います。つまり島の平均所得が上昇することになります。島の人たちは「どうやったら1万円で売れるか」ということを考えなければいけません。なかなか難しいしことだとは思いますが、それをやらないと勝算はありません。

そして、これは私がなんども言っていることなのですが、地元の人が地元の魅力を一番知らない問題は根深いものです。都市生活者からみたら、素晴らしい風景だと感動する景色も、地元の人からしたらいつもの風景に過ぎなかったりします。みなさんも同じような経験があるのではないでしょうか?そのため、地元の人はなかなか地元に価値に高い値段をつけることができないという構造的な問題があるものです。

そこで必要なのが「外の目」です。地域にやってくる外からの来訪者にどこに魅力を感じているのかヒアリングしてみれば突破口になるかもしれません。外部の人たちは、住民にとっては思いがけないところに価値を見出していることも多いものです。

大事なのは「ここにしかない」という「価値」を見つけることです。存分に考え、地域ならではの解決策、復興策に繋げていきましょう。

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