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検索データから見えてくるコロナ禍のトレンド(V-RESASより)

2020年9月より、『V-RESAS』に、『興味・関心』の項目が追加されました。これは、Yahoo!検索で検索された検索ワードを人工知能(AI)技術を用いてカテゴライズして統計化したデータ(出典:ヤフー・データソリューション)を用いて、検索キーワードの昨年との変化をデータで可視化したものです。
https://v-resas.go.jp/about

このデータを見ると、これまで感覚論や仮説ベースで語られていたコロナ禍のトレンドが、データに基づいてはっきりと見えてきました。

本稿では本データに基づき、コロナ禍のトレンドと地域デザインについて考察したいと思います。

V-RESASとは?

V-RESASとは、内閣府・内閣官房が提供する、コロナ禍の人々の行動等に関するデータサイトです。地域経済分析システム(RESAS)から、よりリアルタイムにデータを更新し、刻一刻と変わる情勢を適切に抑えるために公開されているものと推測します。

V-RESASは、地方創生の様々な取組を情報面から支援するために、内閣府地方創生推進室と内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が提供しています。
特に、地方公共団体や金融機関、商工団体等の皆様が、新型コロナウイルス感染症が地域経済に与える影響を適時適切に把握することで、観光関連施設や生活基盤等の地域資源を維持し、感染症拡大の収束後に地域経済を再活性化させていくための施策の立案、遂行及び改善をするためにお使いいただけます。(出典:https://v-resas.go.jp/about)

どんなデータがあるの?

移動(人流)、飲食、消費、宿泊、イベント、興味・関心の6つの項目について、47都道府県毎の、前年同期比と、地域ブロック毎の1月~現在までのトレンドが記載されています。
分かりやすいのは以下の全国サマリーを見ていただくことだと思います。

・移動人口は、緊急事態宣言下で最大60%減、その後やや回復し、現在は前年同期比20%減程度。消費も同様の傾向
・宿泊者数は緊急事態宣言下でほぼ宿泊が0になり、その後GOTOキャンペーン前後から回復傾向

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検索データの中身

検索データには、ヤフーのインターネット検索データが使われています。大きくは消費・生活・メディア・一般の4分類がなされ、そこからさらに31種類のカテゴリに分かれています。実際にどのようなキーワードがどのカテゴリに分類されるかは公開されていませんので、注意が必要です。

「興味・関心」では、年間の検索クエリキーワードの種類が100億以上の、ヤフーのインターネット検索サービスのビッグデータを統計分析したものを活用しています。従来、「興味・関心」はアンケートなどの調査手法で取得することが多いですが、検索データには、蓄積されたデータを用いて過去の状況と比較できるだけでなく、日本中で得られる膨大なサンプルから分析が可能です。また、質問項目にしにくい、潜在意識の「興味・関心」を把握できる特長もあります。
今回利用しているデータは、PCやスマートフォンを経由したヤフー検索に入力されたキーワードにヤフーの人工知能(AI)を活用して31種類のカテゴリを付与し、カテゴリ毎の検索人数(検索したユニークなユーザ数)の前年同期比を表しています。(V-RESASホームページより)

4つのトレンド

1月~7月の検索データを見ていると、4つのトレンドがあることに気が付きました。
①お山型:4-5月に盛り上がり、その後低下。ただし、前年同期比よりは10~20%前後増加
②純増型:ジグザグしながらも順調に右肩上がりで伸びているもの
③純減型:順調に(?)右肩下がりで低下しているもの
④お椀型:一度下がった後である程度回復しているもの。ただし、前年同期比よりは10~20%前後低下し、完全には回復していない
⑤その他

なお、元データが提供されているわけではないので、特に検定等はしておらず、完全に見た目で分類していますが、ご容赦ください。また、グラフは8月にも入っていますが、7月までで判断しています。

トレンド①:お山型

4-5月に盛り上がり、その後低下。ただし、前年同期比よりは10~20%前後増加しているパターンです。典型例はネットショッピングです。同様の傾向を示すものに、以下のものがあります。

・ネットショッピング、店舗、美容、レジャー・遊び、製品・商品、健康・医療、グルメ・レシピ、妊娠・育児、テレビ、アプリ、ゲーム、行政・公共機関、企業・組織、地域名

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(ネットショッピング 出典:v-resas/ヤフー データソリューション)

トレンド②:純増型

純増型は、ジグザグしながらも順調に右肩上がりで伸びているものです。典型例は自転車・二輪車です。といっても、GW後ぐらいから注目され始めて、興味・関心が一気に増加したようです。ほかに、ファッションや書籍で同様の傾向が見られました。

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(自転車・二輪車 出典:v-resas/ヤフー データソリューション)

トレンド③:純減型

順調に(?)右肩下がりで低下しているものです。典型例はイベントです。ほかに映画も同様の傾向を示しています。皆さんなるほどと思われるのではないでしょうか。

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(イベント 出典:v-resas/ヤフー データソリューション)

トレンド④:お椀型

お椀型は、一度下がった後である程度回復しているもの。ただし、前年同期比よりは10~20%前後低下し、完全には回復していないものです。典型例に旅行・観光があります。ほかに、スポーツや交通・路線が該当します。

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(旅行・観光 出典:v-resas/ヤフー データソリューション)

トレンド⑤:その他

その他、地域差が大きいものや、二こぶ型など、解釈が難しいトレンドは以下がありました。

・ギャンブル、天気・自然災害、質問・困りごと、音楽、漫画・アニメ、SNS・コミュニティ、ニュース・事件・新聞、金融・投資、建物・施設


地域差があるものないもの

次に、地域差についてみてみましょう。なお、北陸地域は外れ値が多いので、ここでは考慮していません。北陸地域は別で分析をした方が良いかもしれません。

地域差があるもの(傾向がばらばら)
・ギャンブル、天気・自然災害、建物・施設

地域差がないもの(傾向は一緒だが変動幅は地域差あり)
・店舗、旅行・観光、美容、自転車・二輪車、レジャー・遊び、健康・医療、ニュース・事件、行政・公共機関、企業・組織、地域名

地域差がないもの(傾向も変動幅も一緒)
・ネットショッピング、ファッション、イベント、スポーツ、交通・路線製品・商品、質問・困りごと、グルメ・レシピ・料理、妊娠・育児、音楽、テレビ、漫画アニメ、アプリ、書籍、ゲーム、SNS・コミュニティ、映画、金融・投資

データから見たコロナ禍のトレンドに関する私見

さて、上記の結果から、私の所感を少し記載したいと思います。皆さんもぜひデータを見て、感じたことをコメントしてください。

・一時盛り上がったものの、その後落ち着いているものは結構多い。
まだ盛り上がったままだと勘違いしているものもあったのではないでしょうか?人間にはそういったドラマチックさを求めるバイアスがあると言われていますが、そこは冷静に判断した方がよさそうです。0か1かみたいな議論をする方がいますが、実際には現在は+10%、20%程度の増加がほとんどだとみておいた方が良いでしょう。

自転車・二輪車等の興味・関心が増えている。
⇒ヨーロッパ等では、4月ごろのロックダウン下から、自転車レーンを仮設設置したり、大規模かつ大胆な自転車普及政策を打ち立てたりと、積極的に動いていました。日本ではあまりそういった大胆な政策は見られませんでしたが、興味・関心としては増えているようです。

・地域によって、傾向は同じでも変動幅が大きく異なるものもある。
⇒自身の地域や、特に東京等を中心にトレンドを考えてしまいがちですが、実際には地域によって異なる場合もあるので、地域差を考慮していく必要があるでしょう。

あとがき

データの時代ですね。今回のコロナ禍でずいぶんとデータに対する考え方が国・企業・国民で変わってきたように思います。一方で、データに振り回されないように注意しなければいけないとも思います。データの特性を見極めて、賢く使っていかなければいけません。

その他 積み残し課題
・実際の消費購買データとのギャップは?
・その後の傾向ウォッチ(まだトレンドと言い切れない部分もある)
・検索ワードの特性を考慮した考察


読んでくださりありがえとうございました!現在、仕事と育児の間に活動を行っており、執筆は夜間にカフェ等で行っています。ご支援いただいた内容は、note執筆のためのカフェ代に使わせていただきます。