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中小企業と小規模事業者に求められるDX。EDIと適格請求書等保存方式の融合

 消費税における適格請求書等保存方式の導入は、中小企業や小規模事業者がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む大きな機会となるが、単に既存の会計ソフトの導入を前提とした帳票の電子化であればそれは不十分と言わざるを得ない。
 適格請求書等への記載が求められる情報の多くは会計ソフトの業務フローの外で作られるものであり、会計ソフトと一気通貫で連動する電子的データ交換システム(EDI:Electronic Data Interchange)を視野に入れる必要があるからである。

 例えば、次のようなビジネスチェーンのモデルを考えてみよう。
①素材生産者
↓(B to B)
②素材メーカー
↓(B to B)
③部品メーカー
↓(B to B)
④メーカー
↓(B to B)
⑤卸売商
↓(B to B)
⑥小売商
↓(B to C)
⑦消費者

 このようなビジネスチェーンのモデルにおいて、『モノ』は上流の①素材生産者から下方の⑦消費者へと流れていく。
 他方、発注に関する『情報』は⑦消費者の購買状況を踏まえて⑥の小売商から⑤卸売商、④メーカー、③部品メーカーへと上流へ流れていく。そしてそれと同時に受注に関する『情報』は、発注の『情報』を受けてその都度、上流から下流へと折り返される。
 不特定多数の⑦消費者を顧客とする膨大な数の⑥小売商から⑤卸売商へと発注の『情報』が遡るが、令和の現代においても、この間の受発注の多くはファクシミリが使われている。そのために⑤卸売商は、紙ベースの発注票を手入力で自社システムに入力するなどの、膨大な事務処理に追われることになる。
 ⑤卸売商と④メーカーとの間では、最近ではEDIが使われているケースが多い。しかも業界によっては、複数のメーカー、卸売商が共通で使える標準化されたEDIが整備されているところもある。
 しかし、それ以外のところではまだまだファクシミリが大活躍をしており、EDIが導入されていたとしてもそのシステムには汎用性がなく、特定の事業者間でしかデータ交換ができない独自仕様なのだ。

 このような状況を打破するための取り組みのひとつに、中小企業庁の中小企業共通EDIがある。
 中小企業共通EDIは、ITの利用に不慣れな中小企業であっても簡単・便利・低コストに受発注業務のIT化の実現を目指す汎用性の高い仕組みであり、受発注業務が中小企業共通EDIにより標準化されることで、取引先ごとに用意していた専門端末や用紙が不要となり、山積みになっていた伝票をデータで一元的に管理できるなど、中小企業が抱える受発注業務のIT化に係る問題を解決するとともに、①業務効率アップでコスト削減②人的ミスを軽減③過去現在の取引データの検索の簡素化を実現しようとするものである。
 名称に中小企業とあるが、中小企業の取引先である大企業にも普及が期待されている。

 中小企業共通EDIが今後どのような展開をみせるかわからないが、大切なことはまず、個々の事業者や業界をまたがる共通のEDIが整備されること。そして単なる受発注システムの共通化にとどまらず、消費税の適格請求書等保存方式の導入を考えると、EDIが会計ソフトと一気通貫でつながることが必要となる。
 しかし、中小企業と小規模事業者のDXを考えるにあたってはそれだけでは不十分だ。
 中小企業と小規模事業者のDXは、業務の有効性と効率性を高め、生産性の向上に資するものでなければならないからである。

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