そこに還る理由
何度も何度も同じ場所に出かけた。
27歳の春。
誕生日を過ぎて同じ年の夏。
すぐ後の秋。
28歳の春。
同じ年の秋。
30歳の冬。
32歳の春。
37歳の夏。
もっと行ったかもしれない。
飛行機直行便で12時間。
始まりは3回目の訪問。
一人旅のスタートで、何もかも自分のプランだった。
好きな時に好きな場所で好きなことを好きなだけ。
私に先入観を持たない人たちが相手なら
何も怖がらずに自分が自分でいられることが幸せだった。
友人と呼べるほど仲良くなった現地人と、仕事のこと、プライベートのこと、何でも話した。
泣いたり笑ったり、自分の感情を隠す必要がなかった。ありのままの自分で相手に向かえた。嬉しかった。楽しかった。心地良かった。
その居心地の良さが忘れられず、あの時の素直な自分が恋しくて、何度も何度も同じ場所に足を運ぶんだと思う。
そして毎回気づく。
違うな、と。
あの感覚がもう起こらない。
あの頃の自分はもういない。
相手もあの頃のままではない。
慣れ親しめば親しむほど、ありのままでいることが難しくなっていく。
知ってしまった事が増えれば増えるほど、
もう一度味わいたいあの自由な幸せは手に入らない。
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