見出し画像

忘れてしまう方と、忘れられる方と。

忘れてしまう方と忘れられてしまう方、どっちが悲しいんだろう。




祖父は2人とも、私が小学生の時、中学生の時に、それぞれ他界してしまった。

孫が私含めて3人しかいなかったから、2人はとっても私のことを可愛がってくれた。


それは、残された2人の祖母も例外ではなく、私のことをとびきり愛してくれていた。
私だって、負けないくらい、大好きだ。




祖父が亡くなってから、父方の祖母がおかしくなっていった。

どうやら認知症らしく、私たち孫の名前が混ざってしまうことが増えた。


やがて私たち孫の名前も、私たちが孫であるということも、自分の子供(私の父)のことも、何もかも忘れてしまった。

今祖母は施設で暮らしている。


半年ぶりに会いに行けることになって、緊張しつつも、私は大好きな祖母に会えることを心待ちにしていた。

忘れられて閉まっても、私は祖母のことが大好きだから。


半年前に会った時は、私のことが分からなっていたけど、分からないことを悟られまいと優しい嘘をつきながら会話を交わしてくれたのだけれど。

今は会話どころか、目を合わせてこちらを見てくれることもない。

私は、久しぶりに祖母と会えたわけだけれど、祖母からしてみれば、チャラついた若者がいきなり現れて、親しげに話しかけてきたことになる。

不安だろうな〜って。わかる、わかるけれど。

やっぱり、目も合わせてくれない祖母を見るのは辛かった。
孫の私はともかく、自分の娘息子のことすらも忘れてしまっていたことが悲しかった。

何十年も一緒にいて、どれだけの時間を共有してきたのだろうか。

母親や父親に忘れられることって、どれだけ辛いだろう。


私もいずれ両親に忘れられてしまうのだろうか。


そうして私自身もいつか、誰のことも、いずれ出会う大切な人のことも分からなくなってしまうのだろうか。




私は祖母に色々なものをもらってばかりだ。
祖母にはまだ、何も返せていない。

今の私には何ができるのだろう。
何を、してあげられるだろう。


ずっとずっと、わからないままだけど。

せめて、せめて私は。

私だけは。


祖母と紡いできた大切な過去の思い出を、大切に大切にしていたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?