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リビングラボのポッドキャスト ~LLL Radio、始めました~


LLLのPodcast番組、始めました!

今月(2024年3月)から、我々の研究プロジェクトLLL(Living Lab Laboratory)のPodcast番組、LLL Radioを始めました!

LLL Radio
  - 番組へのリンク: 
Spotify / Apple podcasts
  - 配信日: 毎週水曜(※繁忙期など配信頻度が少なくなる可能性あり)
  - 料金: (もちろん)無料

収録自体は、年末年始くらいからやっていたのですが、編集の時間がなかなか取れず、配信が遅くなってしまいました…。でも、ようやく編集済みコンテンツもある程度たまってきたので、これから定期的に配信していこうと思います。Spotify、Apple podcastsの両方で配信しています。
今回の記事では、LLL Radioで何をするのか?なぜ始めたか?について、少し詳しく書いてみたいと思います。

リビングラボに関する知識を発信・共有する

LLL Radioでは、リビングラボの関する知識の「断片(≒かけら、ピース)」を発信・共有していきます。といっても、なかなかわかりにくいと思うので、ちょっと詳しく解説していきます。

その解説のための前段を少し。
リビングラボは、ソーシャルイノベーションを実現するためのデザインアプローチのひとつです。なお、ここでの「デザイン」とは、Herbert Simonの考え方(注1)に近い、広い意味の概念です。すなわち、見た目がきれいで格好いいものつくることではなく、社会をよりよくするためのモノやコトを創出するための実践的な行為のことをさしています。
Dongらの研究(注2)では、「デザインの知識」を、「意味的重力(Semantic gravity)」という概念を用いて、図1のように分類しています。「意味的重力」とは、ある知識の内容や意味が、特定の文脈に依存する程度のことです。つまり、意味的重力が強い知識(=図1の下側)とは、特定の文脈(事例や状況など)に強く依存した、個別具体的な知識のことをさします。一方、意味的重力が弱い知識(=図2の上側)とは、様々な文脈に活用できる汎用的かつ抽象的な知識のことをさします。

図1: Dongらによるデザイン知識の分類

このDongらのデザイン知識分類をもとに整理すると、今回始めたLLL Radioでは、リビングラボに関する、「①意味的重力の強い実践知」を主に配信し、「②意味的重力の弱い理論知」もたまに配信していこうと思っています。

①実践知の発信(意味的重力:強)

まず、LLL Radioのメインコンテンツとして、リビングラボの実践(事例)を通じて得られた学び(教訓)などの知識(=実践知)を発信していきます。ここ数年、日本でも多くのリビングラボが実践されており、様々な試行錯誤が行われています。この試行錯誤の中にこそ、リビングラボをうまく進めるため、もしくは、”落とし穴”を回避するためのノウハウが詰まっています。これが「実践知」です。
このような実践知は、実践者自身の経験としては蓄積されていきますが、社会的に共有されることは殆どありません。最近、noteやSNSなどのメディアで、プロジェクトの情報を発信することはだいぶ増えてきたと思いますが、自身の実践の詳細やそこから得られた学びまで文章化することはあまりありませんし、いざやろう!となってもなかなか大変な作業です。
そこで、LLL Radioでは、リビングラボや共創(コ・デザイン)、参加型デザインを実践しているゲストに来ていただき、それぞれの実践について詳しくお話しいただきます。そして、その実践について、LLLメンバから色々な質問を投げかけていき、それに対して回答してもらうことで、実践知を協働的に浮かび上がらせていきます。即興的ではありますが、そういった「対話的なプロセス」を通じて、単なる事例紹介ではない一歩深い実践知を引き出し、Podcast=音声メディアとして「実体化」していこうと考えています。

②理論知の発信(意味的重力:弱)

リビングラボの実践知は重要ですが、多種多様な実践知の「意味」を理解・解釈するためには、意味的重力の弱い「メタ」な知識、すなわち、リビングラボに関する理論や方法論、各種概念に関する知識も重要です。そこで、LLL Radioでは、事例にもとづく実践知だけでなく、学術的な研究にもとづく幅広い知識(理論、方法論、概念など)も、たまに発信していきます。具体的には、LLLメンバが読んだ/注目している、リビングラボに関する(主にグローバルな)論文や書籍の中で、特に面白いと感じた理論や方法論、概念などを、できるだけわかりやすく紹介していこうと思います。
学術的な文献は、それだけだと「空中戦」的で抽象的で格式高い(←悪い意味で)内容のような印象を持たれる方もいるかもしれませんが、自分たちの実践や経験と紐づけて考えてみると、意外と面白かったりします。リビングラボの実践を改めて捉え直す切り口になるかもしれませんし、新しいアプローチが見つかるかもしれません。
そもそも、リビングラボや共創、参加型デザインに関する海外の論文や書籍って、興味はあっても、英語で長い+専門用語がたくさんあって、読むのはなかなか大変ですよね。そこで、そういった学術的な情報・知識を、Podcastという隙間時間やお散歩中に聞けるような緩いコンテンツにすることで、より多くの人に、気軽に触れてもらえるようになるといいな、と思っています。

リビングラボの知識の「断片的」発信から「構造化」へ

ここまでは、LLL Radioで何を発信していくかについて述べましたが、次に、なぜLLL Radioを始めたか?についても解説します。

第一義的には、上にも書いたように、リビングラボに関する実践的な情報・知識や学術的な知識を、Podcastというコンテンツにすることで、多くの人に気軽に触れてもらえるようにしたかった、というのがあります。Podcastというコンテンツ、聞いてみたことがある方には分かると思いますが、話している人の口調、トーン、スピードなどから、その人の「人柄」のようなものを感じることができて、すごい面白し、内容もスッと入ってきます。寝る前やお散歩中、何かの順番を待っているとき、移動中など、隙間時間に気軽に聞くことができるのも、とてもいいです。まだ試してみたことが無い方は、ぜひお試しください。おすすめです。

もうひとつの理由は、ServDesという学会で安岡さんと現地で話しながら考えたことですが、リビングラボに関する多種多様な知識をどんどん断片的に発信し、それを後からまとめる(整理する)ことで、知識の体系化・構造化をしたいと考えているためです。
我々は、最終的には、リビングラボに関する知識の全体像(体系)はどのように構成されるのか?ということを明らかにしていきたいと考えています。例えば、リビングラボの教科書があるとしたなら、その目次はどのように構成されるか?といったイメージです。しかしながら、リビングラボの概念は非常に幅広く、また、多様な解釈もあるので、リビングラボの知識の全体像をトップダウン的に考えていくのは、とても難しいのではないかと考えています。そこで、断片的でもいいから、まずは様々な情報や知識をLLL Radio(や、このLLL note)というメディアで実体化してみて、それを定期的(例えば、1年に1回)に振り返ってみることで、リビングラボの知識の構造や体系(特に、日本の社会文化的な文脈に適した知識体系)を、徐々に整理していこうと思っています。
もちろんこういったボトムアップ的な取り組みだけで完全に整理できるとは考えていませんが、他のアプローチとも組み合わせながら、実験的に始めていこうと思っています。

今後のコンテンツの予定

こんな感じで始めたLLL Radioですが、現段階(2024/3/18)では、まだ、ひとつ(LLLの活動について紹介)のエピソードしかアップされていません。ただ、今後は、まずはLLLメンバが登場する、以下のようなコンテンツをアップ予定です(収録・編集済み)!

  • 「鎌倉リビングラボのこれまでとこれから」(by 東大・秋山弘子さん)

  • 「北欧社会とリビングラボ」(by ロスキレ大・安岡美佳さん)

  • 「保育園×VR×共創!?」(by 東工大・中谷桃子さん)

  • 「システミックデザインとは?」(by ACTANT・南部隆一さん)

これ以降も素敵なゲストに来てもらう予定で、収録を進めています。

今回のnote記事を読んでLLL Radioに興味をもって頂いた方、上記のコンテンツに興味がある方など、ぜひ、LLL Radioの視聴とフォローをお願いします!(LLL Radioの情報やリンクを、以下に再掲します。)

LLL Radio
  - 番組へのリンク: 
Spotify / Apple podcasts
  - 配信日: 毎週水曜(※繁忙期など配信頻度が少なくなる可能性あり)
  - 料金: (もちろん)無料



注1:Simonは、以下の文献の中で、デザインを「既存の状況を望ましい状況に変えることを目的とした行動の方針を考案する(行為)」と定義しています。
Simon, H. (1969) The sciences of the artificial. Cambridge MA.

注2:Dongらの研究の文献情報は以下の通りです。
Dong, A., Maton, K., and Carvalho, L. (2019) The structuring of design knowledge. The Routledge Companion to Design Research, 38–49.


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