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インドとその周辺国料理のトマト事情

 こんにちは!鰤子です!もうすっかり夏ですね~トマトの時期なんで今回はトマトの記事を書きます!


 トマトは中南米原産の野菜ですが、今やそんなことも忘れらているくらいに日本でも日常的に目にする野菜です。現代では日本人全員がトマトを(好き嫌いはあれど)何らかの形でトマトを食べたり飲んだりした経験があると思いますし、まだトマトを見たことがないなんていう方はいよいよいらっしゃらないんじゃないかと思います。それくらいトマトという野菜は、外来の野菜ながら日本の食卓に浸透しているということですね。
 さて、この記事ではインドのトマト事情について見ていくのですがその前に現代の日本でのトマトの食べ方や使い方を見てみましょう!

  1. ・サラダ

  2. ・パスタ

  3. ・カレー

  4. ・ピザもしくはピザソース

  5. ・何かをトマトで煮込む

  6. ・ケチャップ

 と他にもあるかもしれませんが、ざっとこんなもんではないでしょうか?上から順に見てみると全部カタカナで、(伝統的な)日本食はこの中に含まれていません。普通に考えるとアレンジレシピ以外では味噌汁、きんぴら、煮しめ、おでん、牛丼など大体の日本食にトマトは今でも使用されないんですね。当たり前やん、と突っ込まれそうですが、そうですね…ではパスタはいかがでしょうか?もちろんトマトを使わないパスタのソースもたくさんありますが、トマトを使って作る場合も結構あります。トマト原産じゃない国の料理で、日常的に食す自国料理にトマトが入り込んでいるという国は、世界で見ると実はけっこうたくさんあったりします。日本に関しては今のところまだそうではないということですね。今後はどうなっていくのかは分かりませんが、今のところは日本料理では天ぷらや串揚げなどで具材の一つとしてグリーントマトやプチトマトが登場するくらいです。新しく作ったものであればいくらでもトマトレシピもでてきそうですが、あくまでそれはアレンジレシピですね。私達は意外に自分たちの国の料理の使用食材には保守的ということなんでしょうか。海外文化を取り入れることには寛容ですが、内と外でははっきり線引をしているのかもしれませんね。
 トマトが中南米原産ということは、中南米以外の世界中のほとんど全ての国においてトマトはもともとその国になかったということです。なので歴史の中のある地点でその国にトマトが渡ってくる以前は、もちろんその国でトマトを使った料理というのは存在していなかったわけですね。世界の食文化にトマトがどのような影響を及ぼしているのかは、私も多少研究していますが(*エジプト料理とかトルコ料理のトマト事情おもしろいですよ!)このnoteの本筋ではないのでそれはまたの機会に。
 さて前置きが長くなりましたが、話をインドカレーに持っていきましょう。これまでの記事は北インド料理の⑩の料理体系についてお話してきましたが、トマトに関しては料理体系とか地域で区切っても話が分かりづらいので、なんとなくインドとその周辺国におけるトマトの話、といったノリで話を進めていきます。というわけでまずはインドでのトマトの歴史から見ていきましょう~!

インド版ざっくりすぎるトマトの歴史

 まずざっくりとインドにおけるトマトの歴史を見てみましょう!インドではトマトは16世紀にポルトガルによって持ち込まれたとされています。ポルトガルが持ち込んだということは、初めてインドにトマトが上陸したのはゴアやその周辺の西海岸エリア(Costal Area)であったと思われます。当初は限られた地域でのみ栽培され、料理への使用もかなり限定的だったそうですが、そんなトマトがインド全土に広まった理由の一つには、イギリスの働きかけがあったと言われています。
 当時イギリスはポルトガルから伝わったトマトを、自国に持ち帰ろうとしたのだそうです。ところが今みたいにトマトのハウス栽培とかありませんし、ヨーロッパでもさほどトマトが普及していなかったのでしょう。自国で栽培を頑張るよりも、インドの気候がトマト栽培に適していたということに目をつけて、インドでトマトの栽培を奨励したのだそうです。
 以上!ざっくりすぎるインドでのトマトの歴史でした!

インドのトマト
品種はインドでも様々ありますが、細長いものをよく見る気がします。

インド料理におけるトマトの受容

 冒頭で現代の日本でのトマトの食べ方や使い方を振り返ってみましたが、その全てが生トマトというわけではありませんよね!トマトの食べ方もしくは使い方というか、トマトが私達の食卓に現れるときの形態を見てみるとおそらく”生トマト”、”トマト缶”、”ケチャップやピザソースといったトマトの加工品”、まれにドライトマト(これはイタリアからの輸入品であることが多いですが)でしょうか。これがインドではどうなのかというと、生トマトは随分と浸透していますが、トマト缶やケチャップなどのトマトの加工品は今一つといったところで、田舎に行けば行くほど生トマト以外はあまりまだ馴染みがないです。ただ逆に言うと、生トマトに関して言えばインドではかなり広く浸透しています。
 しかしながらインド人ひとりひとを見たときのトマトの受け入れ度合いに関しては、皆が皆トマトを受容して大好きになっているわけでもなく、中には「最近の流れとして料理にトマトを使ってもいいけど、伝統的には使わんわいね」などと言って、トマトという野菜をよそ者扱いしている人もまだ一定数(?)います。ちなみに、伝統的にトマトを使わない料理(そんなこと言ったらインドの家庭料理は全てそうですが!)にトマトを使うことが良いとか悪いとか、何にでもトマトを入れる人が良いとか悪いとか、そういうことはここでは論じません。ただやはりインド人的なトマトとの上手な付き合いみたいなものもあるので、それをこの記事では解説していきますね!これ以降はしばらく”生トマト”を料理に使うときの話になりますが、文脈によってトマトと生トマトの二つの表現が登場します!例えばこの料理には”生トマトを使わない”と言ってしまうと「じゃあトマト缶は?」みたいになってしまうこともあるからです。ちなみにこの記事の最後ではトマト缶についても解説しています。

インドとその周辺国におけるトマト使う使わない論争!?

  インドとその周辺国の料理においてはトマトはまず、”使う派”と”使わない派”に分かれます。そしてトマトを”使う派”はさらに、”特にルールなく使いたければ使う派”と”厳密なルールに基づいて使う派”、”必要に応じて使う派”の3つのグループに分けることができます。ひとりひとりがどのグループに属すのかは、”個人の好み”から”地域的な文化や伝統”に”宗教”まで様々な要素が絡んでくるので、先の記事で解説した「北インドカレーの必須スパイスは何か~!?」みたいにスッキリまとめられる話ではなかったりします。しかもこれには時間という要素も大きく関係していて、昔はトマトを断固として使わなかった人でも最近は使うようになった、など個人の中での派閥の鞍替えも珍しくありません。
 ちなみに、なんとなくその地域ではトマトを使わない人が多い(例えばカシミールやラダックなど…)とかあったりしますが、インドとその周辺国の地図を見てトマト使用不使用マップを作ったりすることは無理なくらいに情勢は入り乱れていますので、インドとその周辺国ではこういう人たちがおるんやな~くらいの精度のまとめ方になっているということを先にお断りしておきます。

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