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鬼滅の刃の「真の主人公」とは?

※「鬼滅の刃」の、すべてのネタバレを含みます。

竈門炭治郎と言えば、言わずと知れた「鬼滅の刃」の主人公だ。

少なくとも、世間一般的にはそう認知されている。

だけども、最終回まで読んで、また、ファンの人の感想などをSNSで読んだりしているうちに、「もしかしたら、炭治郎は真の主人公ではないのかも知れない」と思うことがあった。

そのことについて、少し書いてみようと思う。

「鬼滅の刃」は、炭治郎たち鬼殺隊が、鬼舞辻無惨を倒すまでの物語だ。

つまり、目的ははっきりしていて、「無惨を倒す」こと。

前にも書いたけど、無惨との最終決戦はそれはそれは凄惨なものだった。そして無惨を倒すに至る道のりは、困難を極めた。

産屋敷耀哉が、命と引き換えに仕掛けた罠。それにより、珠世は彼女が作った薬を無惨に吸収させることに成功し、無惨はじわじわと弱体化していく。

薬にはいくつもの効果があった。無惨を人間に戻す効果。老化させる効果。分裂阻害。細胞破壊。

だがもちろん、それだけでは無惨は死ななかった。結局は、陽の光を浴びせないと無惨は消滅しない。陽の光を浴びせるには、陽の当たる場所に無惨を固定し続ける必要がある。炭治郎をはじめとした鬼殺隊の面々は、そのために、ただそのためだけに無惨を攻撃し続けた。最後には押し合いへし合いの泥試合のようになって、やっと、やっとのことで無惨を陽の下に晒すことに成功するのである。

SNSでは、ファンがこういう意見を言っていた。

「結局、珠世さんの薬ありきじゃん」

それを読んで、ふと思った。

確かにそうだ。

炭治郎たちがどれだけ強くとも、一撃で倒すことが事実上不可能な現状では、どんな大きなダメージを与えても、無惨の傷はあっという間に治ってしまう。常にフルHPの無惨に対し、鬼殺隊はジリ貧でしかない。

やはり、弱体化させる珠世の薬は必須。

そして珠世は、炭治郎が生まれるずっとずっと前から、無惨を倒すことだけを考えて、薬を作り続けてきた。炭治郎が採取した鬼の血が、珠世の薬の効能を飛躍的に改善したにせよ、珠世の薬がなければおそらく無惨に勝てなかったのは事実。

であれば、もしかしたらこの「鬼滅の刃」という物語は、「珠世、そして愈史郎の、無惨との永い戦いの物語」とも言えるのではないか、と。

そう考えると、納得がいく点がある。

鬼滅の刃の作者、吾峠さんのデビュー作には、既に珠世と愈史郎が登場している。名前も一緒で、見た目もほぼ変わっていない。

なぜこの2人だけ、そっくりそのまま「鬼滅の刃」に登場しているのか。

そこを考えてみても、この2人が鬼滅世界の中心人物、というのは間違っていないように思えるのだ。

無惨との最終決戦が終わり、その後の炭治郎の件も終わったのち、愈史郎は珠世の遺品を握りしめ、呟く。

「珠世様 終わりましたよ…」

ここで、珠世と愈史郎の永い永い戦いの物語は、やっと終わりを迎えたのだ。

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