見出し画像

天気雨とシュークリーム

ダイエット中といって予防線張ったのに、おかまいなしに、ヤマザキのシュークリームを手渡してくる母親は障害物でしかない、

このあいだ、小雨が降っていて傘がなかったから濡れて歩いていたら友人が働いている喫茶店が見えて、雨宿りしたかったけど、わたしは濡れているから店内には入らない方がいいなと思った。中は暖かくひとがたくさんいて、外にひとりで立つわたしがガラスに映る。足元は泥がはねて汚れていた。

気を使いだすとキリがなくなり、さいごは自分が世界の空間に幅を取りすぎているような、存在すら邪魔な気持ちになる。

店内の奥でコーヒーを点てている友人は湯気でよく見えなかった。わたしは、そのエプロンの立ち姿を集中して見つめる。そのうち文章に書けたらいいなと思った。わたしの存在が世界の空間を邪魔しててクズだったとしても、わたしの作った思想や空想は軽いし忘れるだけで消えるし、そんなに邪魔にはならないはずだ。

小雨はしきりに降りかかり、クズなわたしをぐしゃぐしゃにするけれど友人を見ていたら、そんなことは気にならなくなり、人間の振る舞いを見守る天使のような気分になった。

母親がむりやり手渡していったシュークリームを冷蔵庫にまた戻していたら、そういえば友人の名前は母親とおなじだったなと思う。

あの日の帰り道は虹が出ていた。

喫茶店のインスタグラムに、雨上がりの雲間から射す陽の光は天使の階段だと書いてあった。

泥まみれの靴は、母親に洗って干されてあった。もう乾いてると思う。


いつも見て頂いてありがとうございます。サポート頂いたお金がもしたまったら、マンガの本をつくります。