ヘルシンキは記録的なペースでCO2排出量が減少している一方、交通分野の低炭素化が課題
case|事例
ヘルシンキ市が発行した最新の環境レポートによると、2022年比でCO2排出量が25.4%減少しており、記録的なペースでCO2の削減が進んでいることが明らかになった。その内訳をみると、地域暖房で35%減、電力消費23%減と、この2つが特筆して削減量が大きい。ヘルシンキ市役所は、この大幅なCO2の減少の要因として、ロシアのウクライナ侵攻の影響が平準化されたことに加えて、石炭火力発電所の閉鎖や市営エネルギー企業「ヘレン」の低炭素への着実な投資をあげている。
一方で、ヘルシンキ市は2022年はウクライナ侵攻とそれに伴うエネルギー危機があったことから例外的な都市であったことを考慮する必要があるとも指摘する。ヘレンも天然ガスによる発電を石炭や石油、ペレットなどに代替する必要が生じ、実際にヘルシンキ全体での排出量が増加している。しかし、その増加分を考慮しても、2021年から2023年の間でCO2の総排出量は17%減少しており、ヘルシンキが短期間でCO2を大幅に削減していることは確かだ。1990年と比較すると、CO2の総排出量は45%、1人あたり排出量は60%減少しており、着実な低炭素化への取り組みの効果がうかがえる。
今後、ヘルシンキ市にとって交通分野の低炭素化が最大の課題になる。交通分野からのCO2排出量は、2022年から2023年までで5%減少しているが、一部の地域で低炭素化の対応が遅れており、2025年には交通分野が最大の排出源となり市全体の50%以上を占めると見込まれている。すでにバスの車両の電化は目標を前倒ししており市内のバスの30%は電気バスに置き換わっている。また今後10年をかけてトラムへの投資を強化しネットワークの拡充を図る。電気自動車の普及も着実に進んでおり、2020年の3.4%から2023年の16.7%へと普及率を伸ばしている。
insight|知見
ヘルシンキは着々とカーボンニュートラルへの道筋を歩んでいますね。日本は、2013年比で2030年までに46%減、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標にしています。2013年比で2022年には温室効果ガスが約22%削減できているので、日本も決して削減できていないわけではありませんが、ヘルシンキの削減ペースとは比較になりませんね。都市や地域における「戦略」の重要性を考えさせる記事でした。