見出し画像

気候変動対策への都市農業の効果

case|事例

ミシガン大学は、フランス、ドイツ、ポーランド、英国、アメリカの都市農業従事者が参加した都市農業と従来農業とのカーボンフットプリントの比較研究論文をNature Citiesで発表した。計73ヶ所の都市農園が参加する過去最大規模の比較研究となる。

今回の研究では、2019年のシーズン中に実施したダイアリー調査のデータを用いて農業インフラ、供給、灌漑用水からの温室効果ガスの排出量を試算している。都市農業と従来の農業を比較すると、都市農業では平均してCO2を1食あたり0.42kg排出する一方、従来農業では0.07kgと欧州、米国では都市農業のカーボンフットプリントが6倍となることが示された。しかし、作物ごとにその特性は異なり、温室のエネルギー効率が高くなるトマトの場合、都市農業よりも従来農業の方が炭素集約度(エネルギー消費単位当たりのCO2排出量)が高くなる。またアスパラのような傷みやすい野菜や果物は飛行機で輸送されるため、この場合も炭素集約度が都市農業と従来農業で同等か、従来農業の方が高くなることが明らかにされている。結果から、作物を適切に選ぶことで排出量の削減が可能となることが示唆される。

また都市農業による排出量の削減は、必ずしも作物選定だけで可能になるものではない。都市農業によるCO2排出量の大半は農業インフラの建設によるもので、施設利用も平均して数年から10年と短期間となる。例えば施設を長寿命化することや廃材の再利用、雨水や再生水の感が医療などでCO2の削減を進めることも可能といえる。

さらに、都市農業は一般に屋外の土壌を利用しているため、ヒートアイランドの緩和効果も見込まれる。環境以外にも、農業への参画は社会的な紐帯を強めたり、メンタルヘルスを改善したりといった社会的な効果も報告されていることから、都市居住者の20%~30%が何らかの形で従事していると言われる都市農業の環境以外の効果も見過ごせない。