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カーフリーな生活がもたらす健康および社会的な利点

case|事例

バース大学の気候変動と社会変革研究拠点(CAST)は、オックスフォードの市民を対象にした3週間のカーフリー生活における行動変容や意識変容を分析し、カーフリーな生活がもたらす健康上の利点や社会的な利点を明らかにした研究を発表した。研究は気候変動対策に取り組むLow Carbon Oxford North(LCON)と共同で実施された。

研究結果では、参加者の12人のうち10人が今後も自動車の利用を控えたいと考えていること、12人のうち3人は自動車を完全に手放すなどの抜本的なライフスタイルの変更を予定していることなどが示されており、カーフリーな生活を体験することでの意識変容の実態が明らかにされている。また、カーフリーな生活を体験している間に、交通由来のCO2排出量が平均で53%削減されており、一部の参加者は排出量ゼロを実質的に実現していることなどが報告されている。

カーフリーな生活による気候変動への貢献以外に、健康上の利点や社会的な利点が浮き彫りになった点は特に興味深い。プロジェクト終了後の参加者へのフォローアップ調査では、多くの参加者が健康状態の改善やウェルビーイングの向上、地域とのかかわりの増加などを報告しており、カーフリーな生活によって環境面での効果だけでなく、社会的な効果が得られることを示唆している。

一方で、カーフリーな生活へ行動を変容させるための障壁もレポートでは指摘されている。自動車以外の交通に関する情報の適切な提供や仲間のサポートのほか、公共交通の信頼性の向上やサービスレベルの改善、自転車インフラの整備など政府や自治体が主体的に取り払うべき障壁が少なくないと述べられている。

insight|知見

  • 15分都市やウォーカブルシティの実現を後押しする知見が得られる研究結果だと思います。気候変動への対応など環境面からの必要性を目にする機会は多くありますが、EVなど交通具の環境性能の向上でそれは解消してしまう可能性もあります。一方で、社会的福祉の向上や健康改善、地域との紐帯の強化など社会的な利点が明確になることで、15分都市などの政策を推進する意味に厚みがでるように思います。

  • またレポートで指摘されているようにカーフリーな生活に変えようという意思決定のスイッチを押すためには様々な障壁があるように思います。居住環境だけでなくライフステージでも自動車の重要度は変わりそうですし、個人の嗜好も影響しそうです。この辺はもう少し細かな分析が必要な気がします。