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米オースティンのグリーン・ジェントリフィケーションの事例

case | 事例

テキサス州オースティンは米国の環境配慮型都市の1つとして知られており、持続可能性に感度が高い求職者、起業家などが近年集まっている都市でもある。しかしながら、オースティンはグリーン・ジェントリフィケーション(高級化)の課題を抱えている。持続可能性と環境に配慮した計画が理想的な地域づくりを進め、不動産価値と家賃を上昇させ、長年住んでいた住民をその地域から追い出す不幸なプロセスが見られる。環境に配慮したプロジェクトは善意に基づき進められる一方で、環境、社会、経済の目標をバランスさせる際に、しばしば社会的な目標は最初に放り出される

ロバート・ミューラー市営空港だった700エーカー(約280ha)の土地の「ミューラー開発」は全米で最も注目すべきコミュニティの1つとされ、その複合用途、公共交通指向、歩行者に優しい設計などで、持続可能性と都市計画の賞をいくつか受賞している。着工以来、15,000本以上の木が新たに植えられ、140エーカー(約60ha)の土地が公共の公園やオープンスペースに使われ、26棟のLEED認定ビルが建設され、275戸の住宅にはソーラーパネルが設置されている。一方で、テキサス大学都市政策研究所の2019年の『根こそぎレポート』では、ミューラー開発の東部地域がジェントリフィケーションによって住宅価格が加速度的に上昇し、住民が移転を余儀なくされていることが示されている。2020年の国勢調査のデータでも、脆弱な人々(多くの場合、黒人、ヒスパニック系、低所得者)の大きな人口動態の変化が起きていることが確認できる。

テキサス大学都市政策研究所は、デベロッパーは市や地元団体と協力して、開発が近隣に与える影響を軽減する方策(例えば居住地保全、減税、住宅修繕支援、共同体土地信託などのプログラム)を開発プロセスの初期段階で積極的に実施するべきだと提言している。

テキサス大の『根こそぎレポート』
AustinUprooted.pdf (utexas.edu)

insight | 知見

  • 持続可能な開発は環境配慮だけではなく、社会、経済とのバランスが求められますが、確かに多くの場合で社会的な目標は軽視されています。(開発が進められるということは経済的な目標は達成されるはずですので)

  • テキサス大が提言している、開発が近隣に与える影響を軽減する方策(居住地保全、減税、住宅修繕支援、共同体土地信託など)の開発プロセス初期段階での積極的な導入は、政治的に強い意図を持たないと難しいような気もします。

  • 福岡市の都心での再開発でも(グリーンではありませんが)ジェントリフィケーションが起きていて「転居はしょうがない」という見方が一般的ですが、持続可能性という観点からの論点提起は必要だと思います。