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シアトルの官民連携によるウォーターフロント活性化

case | 事例

シアトル市とシアトル港湾委員会、その他官民の関係者は、シアトルのエリオット湾ウォーターフロント沿いの公園をつなげ、エリアのアクセス性を強化するための新しい官民パートナーシップ「エリオット・ベイ・コネクションズ(EBC)」を発表した。EBCプロジェクトでは、新たな歩行者・サイクリング用緑道を作り、大規模な公園の修復・活性化を行い、アクセシビリティと持続可能性を向上させることを目的として行われる。

EBCに含まれるプロジェクトは、2025年に完成予定のウォーターフロント・パーク、エリエット湾沿いにある既存のオリンピック彫刻公園、Myrtle Edwards公園、Centennial公園の整備・活性化と公園への新たなアクセス緑道の整備、自然の植栽に囲まれたビーチエリアの整備が含まれる。ECBはシアトルで2026年6月にサッカーワールドカップが開催されるまでに完成する予定であるが、全長3.5マイル(約5.6km)にあらゆる人々がアクセス可能な50エーカー(約20ha)の世界クラスの公共空間が誕生することになる。

プロジェクトの推定費用4,500万ドルは民間資金が引き受けるが、慈善家のメリンダ・フレンチ・ゲイツ(ゲイツ財団)とマッケンジー・スコット、ディラー・フォン・ファステンバーグ・ファミリー財団、エクスペディア・グループが寄付者となっている。2023年秋には、緑道案と公園整備案に関する意見を一般市民から募集し、コミュニティ参加を開始する。市民からの意見を受け、設計コンセプトが作成され、実際の設計、許認可、建設が進められる前に市民に提示される。完成後は、寄付者が10年間運営の支援を行い、その持続可能性と管理基準についてはシアトル市とシアトル港湾委員会が関与する。

insight | 知見

  • PPP(官民連携)は公共施設の老朽化、厳しい財政状況、地域の衰退などの課題対応のために、行政の資産を有効活用していく中で、行政サービスの維持・向上や業務の効率化を進めるものですが、地方のPPPの検討においては、民間が関わる対象となる個々の施設の収益性がどうしても議論の中心になってしまいます

  • 記事にあるような規模の、しかも寄付によるPPPは日本で見たことがありませんが、恐らく個々の施設(彫刻公園とか)の収益性云々を考えて資金を拠出しているわけではなく、シアトル市全体の魅力向上による人材の吸引や、ワールドカップを通した都市ブランドの形成のような、かなり広く長期的な視点から意思決定されているのではないかと想像します。

  • 長期的にメリットがあるからと短期収益性度外視で先行投資することは企業には難しいことなので、PPPへの参画プレイヤーを広げていくこと(営利企業に限らず、基金や慈善団体など)も重要だと思いました。