見出し画像

スペインの農村地域のコワーキングプロジェクト

case | 事例

スペインは過去10年間で、6,232の市町村が人口減少に見舞われた。このような状況の中、カタルーニャ地方のCowocat Ruralをはじめ、エクストレマドゥーラ州、ガリシア州、アストゥリアス州、カスティーリャ・レオン州など人口減少が進んでいる地方で農村部のコワーキングプロジェクトが進められており、住民を呼び戻し惹きつける実績を残している。これらのプロジェクトの成功は、地域のニーズや特徴に応じて柔軟にワーカーの要求に応えたり、優れたインフラと活動プログラムを整備し、労働スタイルに合ったスペースを作る専門家の介在に依るところが大きい。

農村部でのコワーキングは、都市部のコワーキングスペースよりもスペースを共有するプロフェッショナルの間に、より強い絆が生まれる枠組みを作ることができ、このような緊密なつながりは、ビジネスや知識交流などの専門的なコラボレーションや相乗効果を促すことができると研究者は指摘する。農村部に人材や専門家を集めることは、地域の直接的な経済活動への寄与だけでなく、サービスの創出や地域の魅力発信などの活性化にもつながる。

一方で、農村部のコワーキングスペースは経済的な収益は都市部と比べて圧倒的に少ない。そのため、ビジネスモデルとしては、公的資金の割合を大きくしたり完全に公的なサービスにするパターンと、民間がスペース貸し以外のビジネス(宿泊、住居賃貸、レジャー、ケータリングなど)を一部公的資金を受けながら進めるパターンに限られている。コワーキングを提供する側のイノベーションもまだ必要である。

https://www.eurasiareview.com/04092023-rural-co-working-key-to-countering-depopulation-in-spain/

insight | 知見

  • 日本の地方でもコワーキングスペースが作られたり、ワーケーション誘致の事業が進められたりしています。これらは地域の活性化が目的だと思いますが、確かに都市部よりも地方でコワーキングスペースを共有するプロフェッショナル同士は、より濃密なつながりが生まれやすいので、その濃いつながりを新しいビジネス創出につなげる政策的な働きかけも重要だと思います。

  • また、民間の場所貸しビジネスとしては成り立ちにくいので、記事にあるようにスペース貸し以外のビジネスをセットで行うことは重要だと思いますが、自治体側も営利ビジネスが付随されている場合もコワーキングスペースの運営には助成を行うような考え方が必要かもしれません。