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「命や生活を守る」ために建物ができること。災害を見据えた”レジリエンス力”【フィアスホーム開発担当者インタビュー2】

みなさん、こんにちは。LIXIL住宅研究所note編集部です。
今回は、フィアスホームの家づくりを担当している開発担当者にフィアスホームの特長の一つである「建物のレジリエンス性」についてインタビューしました。開発の背景やその特長などが聞けましたのでご紹介します。

答えてくれた人
オリジナル高性能パネル「e-panel」開発担当者

e-panel 開発担当者

人の命と財産を守るために住まいでできること

Q.災害の備えについて教えてください。
2011年、私たちは東日本大震災を経験し、家は人の命と財産を守らなければならないという基本的な考えに立ち返りました。

私たちの大きな役割は災害に強く、災害が発生したのちの生活が守られる、そうした家づくりを目指すことです。当時すでに性能表示でいう耐震等級は3相当を実現していました。しかし、東日本大震災ではマグニチュード5以上の余震が千回以上観測されたことで、繰り返しの地震に耐える性能の必要性を感じ、制震性をプラスすることでより安全、安心な躯体を目指しました。

さまざまな制震システムがある中で、品質、コスト、施工性、性能などを考慮した結果、ファイスホームのオリジナル高性能パネル「e-panel」に粘弾性体による制震性を追加することで、揺れによってパネルが変形するときに生じるエネルギーを吸収し、熱エネルギーに変え、繰り返しの地震に強い建物を実現しました。

当社の試験場で実施した試験では壁倍率は最大4.0倍を計測しました。壁倍率とは耐力壁の強さを数値化したものです。数値が大きいほど地震力や風圧力に対する力が強く、この壁を効率的に配置することで、丈夫で壁の数を少なくし、さらに吹き抜けなどの広々とした空間が可能になります。

自社試験と粘弾性体を使用したe-panel

Q.壁の強さ=建物の強さではないのですか
そうです。耐力壁が強いことは重要ですが、それ以上に正しい設計を行うことが重要です。そのため、家一棟の状態で性能が発揮できるかを調べるため、実験装置の上に家一棟の構造体を建てて実験をしました。
実験では1995年に起きた阪神淡路大震災の揺れを再現。本震・余震を想定した揺れを繰り返し発生させ、繰り返しの地震の影響を確認。粘弾性体による制震性が持続することを確認しました。

実物大実験と結果レポート

Q.なぜ、阪神淡路大震災の揺れで実験をしたのですか
建物に被害が生じやすい揺れには特徴があり、阪神淡路大震災の揺れがその特徴に合致していたからです。詳しく説明しますと、建物被害は地震の周期や継続時間に影響があることが分かっています。揺れの周期が1~2秒の地震動(地震によって発生する揺れ)は、木造住宅などを倒壊させやすく、阪神淡路大震災(兵庫県南部地震:M7.3)では、この周期の地震動が長く発生しました。このことが木造住宅に壊滅的な被害をもたらせたと考えられます。

一方東日本大震災(東北地方太平洋沖地震:M9.0)では、揺れの周期が0.2秒程度の周期の地震動が多く、地震による木造住宅への直接的な被害は小さく済んだと考えられます。

災害後、通常の生活に戻るまでの生活を考えて

Q.地震に対する安全性が高まったことがレジリエンスの特長ですか
レジリエンス力とは、家族の命を守ること。もう一つは災害発生後も通常に近い生活ができることです。地震発生時に建物の倒壊リスクを抑え、家族の命を守ることに加えて、災害発生後の生活も考えていることが特長です。

災害時には72時間の壁が重視されています。これはいくつかの理由がありますが、水、ガス、電気といったライフラインの復旧や支援物資の到着におおむね3日かかると言われているからです。どんなに地震に耐える家であっても災害後のライフラインが途絶した状態ではその後の生活が困難になります。

避難所へ身を寄せるという選択肢もありますが、プライベートが確保できる自宅での生活が送れるのであればその方がストレスを軽減でき、心理的には楽かもしれません。そうした観点からライフラインの途絶に対応した備えをもった住宅を提案しています。

ライフラインのストップに複合的に備えることが重要

災害発生後の生活のためには、非常用の食料やカセット式ガスコンロなどライフラインが復旧するまでに必要な備品を確保しておくことが重要です。
玄関土間収納やリビングコンテナなどは、これらの備品を日常の生活スペース内に分散して配することで、日常使いをしながら行える“ながら備蓄”を無理なく取り入れられます。

未来を見据えてさらなるレジリエンス力の強化へ

Q.地震やゲリラ豪雨といった自然災害が頻発していますので重要な性能ですね。
そうですね。私たちは近未来を見据えたコンセプトホームとして、2015年に自動車メーカーをはじめ、異なる企業とこのような事態に対応した住まいのあり方を提案した「家+X」を発表しました。

ここでの取り組み結果を2016年4月に商品の基本性能としてアリエッタに取り込みました。高気密・高断熱による住宅性能の高さは日常の健康維持に期待ができ、制震システムの導入、ライフラインの確保とレジリエンス力として求められる住宅性能をすべて備えています。

さまざまなレジリエンス性能を盛り込んだコンセプトホーム「家+X」

【関連動画】
実物大実験【耐震+制震】
https://www.youtube.com/watch?v=CMWHIfF_41k&t=5s

家+自動車
https://www.youtube.com/watch?v=DeZpspo1Dyc

災害への備え
https://www.youtube.com/watch?v=Ko3BWczF-X0

Q.今後どのような活動をお考えですか
人に地球にやさしいという環境配慮を主に「e-panel」の開発を行ってきましたが、私たちを取り巻く環境は変化しつづけています。

自然災害、社会的災害に直面した時、私たちの社会システムはすぐに破綻してしまいます。行政サービスにたよるだけでなく、一人一人が備えを行う時代になったと思います。
半面リスクに対する投資には消極的であることも事実でしょう。住まいを購入してから追加するのではなく、このようなレジリエンス機能をはじめから備えた住まいを提供することが私たちの大きな役割だと思います。引き続き、時代のニーズに沿った住まいを研究・開発していきます。

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