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COVID-19 ワクチンは男性不妊症患者に投与すべき?

こんにちは。今日は、COVID-19に対するワクチンの話題です。2020年1月18日に新型コロナウイルスのワクチン接種を円滑にワクチン担当に河野氏が起用されるなど、ワクチン接種に関して注目が集まっています。

気になるのは、男性不妊症で通院している男性がこの新型ワクチンを投与するべきか、しないべきか気になるところです。

まずは、COVID-19に対するワクチンの説明です。現在、世界中で投与が始まったワクチンは下記の3種類です。

①Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) (Coronavirus disease [COVID-19]) vaccine, mRNA-LNP, spike protein, preservative free, 30 mcg/0.3mL dosage, diluent reconstituted, for intramuscular use. ファイザー社製

②Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) (Coronavirus disease [COVID-19]) vaccine, mRNA-LNP, spike protein, preservative free, 100 mcg/0.5mL dosage, for intramuscular use. モデルナ社製

③Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) (coronavirus disease [COVID-19]) vaccine, DNA, spike protein, chimpanzee adenovirus Oxford 1 (ChAdOx1) vector, preservative free, 5x10^10 viral particles/0.5mL dosage, for intramuscular use. アストラゼネカ/オックスフォード社製

新型コロナワクチンに関しての簡単な説明です。SARS-CoV-2は、ウイルス周囲のスパイクがヒトのACE受容体に結合し、ヒトに侵入することができます。ワクチンはこのスパイクタンパク質をあらかじめ体内で作り、スパイクタンパク質に対する抗体を作ろうという考えです。抗体を作るのは、ヒトの免疫機能が働きます。そのため、真のウイルスが体内に侵襲してきたときは、ウイルスのスパイクタンパク質に対して、作成された抗体が結合しウイルスを排除することができます。

でも、この3つのワクチンのうち、2つは全く作用機序が異なります。ファイザー社とモデルナ社のものは、mRNAワクチンと呼ばれるものです。mRNAとは、メッセンジャーRNAと呼び、タンパク質を作成する設計図のようなものです。ただ、mRNAは不安定な物質なので、脂質ナノ粒子(LNP)に封入して安定化させます。結果的に、この新型コロナウイルスのワクチンを投与すると、スパイクタンパク質を作るmRNAがヒトの細胞内でスパイクタンパク質を作ります。

最後のアストラゼネカ/オックスフォード社製のものは、ウイルスベクターワクチンと呼ばれるものです。先ほどのmRNAワクチンは、運び屋として脂質ナノ粒子(LNP)としてを利用しましたが、今回は、アデノウイルスベクターを用います。それも、チンパンジーの風邪の原因となるアデノウイルスを改良しています。ヒトだとなぜだめかというと、ヒトのアデノウイルスだと、すでに抗体をもっていて、体内に侵入したときに壊されてしまいます。そのため、抗体を持っていないと思われるチンパンジーのアデノウイルスを用います。(動物園のチンパンジーを担当している飼育員さんはすでにこのチンパンジーのアデノウイルスの抗体を持っている可能性がありますね。)このアデノウイルスがスパイクタンパク質を作るmRNAを細胞質内に侵入させタンパク質が作成されます。

まとめると、ワクチンの違いは細胞質内へ運ぶ、運び屋の違いです。脂質ナノ粒子(LNP)か、ウイルスを用いるかです。重要なのは、体内にどれだけ多くのスパイクタンパク質をつくるmRNAが細胞質に侵入できるかどうかです。多く入れば、それだけ多くのタンパク質が作られて、抗体も多く作られます。

ぼくは、15年以上前の大学院生の時代に基礎実験をやっており、よく、培養細胞に遺伝子を入れていたのですが、なかなか入りずらくて苦労しました。ほんと、細胞内に遺伝子を入れるのは大変なんです。そのため、ワクチンの効き目は、どれだけ細胞内にスパイクタンパク質を作るmRNAが入れるかどうかがカギと記憶しておいてください。

話は本題に戻ります。男性不妊症に対する新型コロナウイルスのワクチンの影響に関するデータはありません。しかし、アメリカでの話題ですが、SMRU (Society for Male Reproduction and Urology)とSSMR (Society for the Study of Male Reproduction)は次のように説明しています。

①ワクチン接種の機会がある、挙児を希望する男性に対して新型コロナワクチンの接種を差し控えるべきではない。

②ワクチン接種の機会がある、挙児を希望しない男性と同様に、挙児を希望する男性に対して新型コロナワクチンを提供すべきである。

ファイザー社の新型コロナワクチンは2回目のワクチン接種の後、16%の男性に発熱が見られたと報告しています。発熱は、一般的に一過的な造精能力の低下を示します。新型コロナワクチンを接種後に発熱が見られた場合、精子産生の一時的な低下を示すかもしれませんが、新型コロナウイルス感染を起こした場合や、それ以外の原因で発熱を起こした時と同等か、もしくは影響は少ないと思われます。

以上の見解は、今後、日本でワクチン接種が普及するときに参考になるかと思います。今日は以上です。


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