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140. 栗の渋皮煮にフランス人マダムを思う。

Bonsoir!🇫🇷 毎週金曜日に更新のフランス滞在記をお届けします。
今号は、フランス人マダムと仲良くなるキッカケとなった、栗の渋皮煮について。

今年の夏は長くていつになったら秋になるの?と思っていたら、急に肌寒くなってきましたね。秋を意識的に味わおうとしないと、なんだかあっという間に冬になってしまいそうなので、夜な夜な栗の渋皮煮を作った。

作ったことがある方はご存知だと思うが、栗の渋皮煮をつくるのは結構たいへん。

一晩水につけて柔らかくなった鬼皮を、その下にある薄皮を傷つけないように丁寧に剥いて、沸かした湯の中で栗が踊って壊れないように注意しながら何度も茹でこぼしてアクを抜く。そして、竹串を使って細かい筋やケバなどを丁寧に丁寧にとって、やっとお砂糖で煮るという最終工程に入れます・・。

ね?大変そうでしょう?(笑)。

毎年「もう来年はやらないぞ!」と思うのですが、あまりに美味しいのでそんなことは忘れて、秋分が近づいてくると「今年も渋皮煮を作らなくては!」という衝動に駆られて結局毎年作り続けているのだ。

でも、渋皮煮作りをしていると、夏の爛々らんらんと上にかけ登っていくようなエネルギーが下におさまって深くグラウンディングする実感が得られる。そして、完成する頃には心地よい疲労と共に、「秋が来た」という感覚が身体中を包んでくれる。

そうだ、そろそろ今日のテーマのフランス人マダムとのお話をしましょう。
こんな感じで、もはや秋を迎える儀式のようになっている栗の渋皮煮作りですが、わたしとフランス人マダムが仲良くなるきっかけを作ってくれたものでもあります。

昨年のちょうど今頃。
当時お隣に住んでいたフランス人ママに誘われて、持ち寄りのワイン会に参加した時のこと。ちょうど作った栗の渋皮煮が冷蔵庫にあったので持って行ったところ大好評だった。その場でわたしはフランス人マダムと仲良くなったのでした。

同じマンションに住んでいたので彼女のことは見かけたことは何度もあったけれど、話をしたのはその時が初めてだった。綺麗な柔らかそうな白髪。鮮やかな色のワンピースに白いスニーカーを合わせ、朝ロビーを通りかかるといつも新聞を広げていて、目が合うとにっこりと微笑んでくれる。そんな知性と愛らしさと軽やかさをまとったマダムに、わたしは密かに憧れを抱いていた。

ワイン会の次の日、駐車場でマダムとバッタリと合うと、「昨日の栗のお菓子のレシピを教えて欲しい」と声をかけてくれたのがキッカケに、手作りの惣菜やお菓子を届けあったり、料理の作り方を教えてもらったりという交流が始まった。

鬼皮を剥きながら、今年の6月にフランスに帰ってしまったマダムとの出会いをふり返って、今年もこの一粒を大切な人にあげたいなと思うのだった。

栗の渋皮煮作りはわたしにとって、夏から秋への移り変わりを手伝ってくれると共に、大切な人とのご縁を繋ぐ大切な儀式になっている。

今年も上手にできましたよ。
とマダムにこのあとメールを書こう。

Au revoir!

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