見出し画像

053. またフランスに飛べる日が来たらわたしはマルシェできのこを買って料理をするのだろう


bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。

先日、実家のある長野の農産物店に並ぶきのこを見ていたら、秋のフランスマルシェを思い出しました。

もっと寒くなってくると、ここにはさらに色とりどりのきのこ達が並ぶのだろうなんて想像したら、11月のフランスのある日のマルシェの光景が浮かんだのだ。

フランスにいた頃、午前中むすめと街中をお散歩しているといつもマルシェに出会った。フランス好きの友人に「フランスに行ったらマルシェでしょう!」と言われていたけれど、実はわたし、あまりマルシェが得意ではなかった。というか、マルシェや文化を楽しむような余裕が当時のわたしにはなかったのだと思う。

きっとフランス語でもっとコミュニケーションが取れたら楽しめたのだろうけれど(それがマルシェの良いところと言いますよね)会計時に延々とおしゃべりをしている常連さんの後ろに並ぶのが面倒で、買い物といえばもっぱらビオコープ(オーガニックスーパーマーケット)だった。手頃なものをさっさと買って店を後にするのだ。

そもそも小さい子どもがチョロチョロしているとなかなか落ち着いて買い物なんてできたものではない。「えー!もったいないよ!だったら週末に旦那に子供預けて行けば良いじゃん!」と前述の友人に言われたけれど、そこまでしてわたしは行きたいと思わなかった。それよりも美術館やカフェへ行って静かに日記を書いたりしたかった。

きっと、当時は3歳のむすめを蜜月育児中につきコミュニケーション過多で、これ以上コミュニケーションを楽しむ余白がなかったのだと思う。また、むすめはよく食べる子だったので3食(+間食)しっかり食べさせなくては、という責任感にさいなまれて疲弊気味だった。だから、「わたし、マルシェがあんまり好きではないな」という感想を持っても無理はないな、と今では思う。そう、今では。

当時は、マルシェなんて好きじゃない、と思っていた。

けれど、毎年寒くなってくると、11月のある日の散歩がてらマルシェを覗いた時の見たことのないくらい色とりどりのchampignon・きのこが並んでいた光景を思い出すのだ。積極的に楽しむことこそできなかったけれど、思いの外、わたしの記憶の中にマルシェの存在は大きく刻まれているようだ。

だから、またいつかフランスへ飛べる日が来たら、きっとわたしはマルシェでたどたどしいフランス語や身振り手振りでなんとかしながらきのこを買って、料理をしてフランス文化を堪能するのだと思う。その時にはきっとマルシェが苦手だった、あの時の感触も感想も懐かしい過去のものになってしまうだろう。

だから、その時までにこのフランス滞在記を書き上げよう。
まだわずかに残っている、あの時しか感じられなかったことの破片を当時の写真の中から拾い集めながら。

画像1


生きていく場、暮らしの場、すべてがアトリエになりますように。いただいたサポートはアトリエ運営費として大事に活用させていただきます!