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Vol.11 クリスマス前のミュンヘンへ

フランス滞在記。

12月に入り、グルノーブルの街もすっかりクリスマスの装いとなってきた。
広場のマルシェ・ド・ノエル(クリスマスマルシェ)には人が集い、教会のクリスマスツリーのオーナメントは日に日に賑やかになって、ショコラティエにはクリスマス限定のチョコレートが可愛らしく並んでいた。
外の空気は寒くなっていくけれど、色めいてくる街の雰囲気は足取りを心なしか軽くしてくれた。

そんな中、フランスは5日から決行されるというストライキが話題になっていた。マクロン大統領の進めようとしている年金改革へ反対を表明するもので、なんでも歴史に刻まれるような大規模なものになるだろうと報道されていた。

やっと落ち着いてフランス生活を始められると思ったのに、今度はストライキ。
ニュースで見て「遠い国の出来事」だと思っていたストライキが、自分の生活圏の中で起ころうとしているという事実を私はなんだか信じることができなかった。

2019年12月は月初から夫のドイツ・ミュンヘン、アメリカ・ロサンゼルスの出張が立て続けに入っていた。それはつまり、彼が帰ってこない半月弱の間、来たばかりの異国の地で娘と二人、生活を送るということを意味していた。
夫の出張の日程を聞いて、その間どうするのか決める時はまだ日本にいて、現地での生活について想像もついてもいなかった。

どうすればいいのだろう。

しかしながら、思い切ってついて行ったところで日中夫は仕事で不在。慣れない異国の地で日中娘と過ごさなくてはいけないことには変わりはない。私と娘の旅費だって馬鹿にならない。

もしこれが日本国内でのことだったら「行ってらっしゃい」と夫を見送り、私は実家の両親の元へ身を寄せていただろう。実際に、夫が長期出張の折にはいつもそうしていた。だが、今回はそんなわけにはいかない。実家の両親の顔が思い浮かぶとともになんだか自分がものすごく頼りなげに感じられた。でもそんな時、母の声が聞こえた気がした。

「やんなさいよ。どうせなら後悔しない方をやんなさいよ」

母は基本的にはいつも心配性で無理な冒険はしたがらない人だ。しかし大きな決断を下すのに家族が躊躇しているときは肝っ玉がすわり、バシッと背中を押す。

「大丈夫だ。無理するなよ」

いつもは寡黙な父がこう言うとき後ろから呟く。そして、母が後ろ髪を引こうとする手を解いて送り出すのだ。

行ってみよう。

育児負担についてはどちらも変わらないんだったら、後々振り返った時に「あの時は大変だったけど楽しかったね」と思い出になりそうな方を選ぶ方がいいだろう。

さて。とりあえず、ミュンヘンへの日程に関して、ストライキの影響はなさそうだ。ストライキ期間前の日程だし、グルノーブル駅から乗るリヨン空港行きのバスも、飛行機も運営会社がドイツだからだ。
しかし問題はその後のロサンゼルスの方。ちょうどストライキ期間中に当たる。幸い、エールフランスの便を選ばなかったのだがシャルル・ド・ゴール空港出発便なのでグルノーブルからパリまでの足がなくなる可能性がある。TGVも高速バスも動かなくなる可能性が高い。現地のフランス人にとってストライキはさほど珍しい出来事でもなくこういう時の対処には慣れているのかもしれないが、ストライキ未体験者の私たちは大混乱。

さて、どうなることやら。

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不安な思いに駆られながらの出発であったけれど、そんなことは知らずに久々の飛行機にはしゃぐ娘に癒される。

それに、私にとって、人生初めてのドイツ。

ドイツには特別惹かれているわけではなかったけれど、娘が生まれてから興味を持っているシュタイナーも、私が子どもころ影響を受けていたミヒャエル・エンデやヘルマンヘッセもドイツ出身だ。何気にドイツは私にとって馴染みのある存在だったのです。いざ飛行機に乗ると段々と楽しみになっている自分に気づいた。

空港へ着き、飛行機から降ろされたベビーカーがどこへ行ったか分からなくなり到着早々バタバタしましたが、無事ベビーカーのピックアップを終え空港内を歩くと・・

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空港の中にもクリスマスマルシェ。ドイツはフランスよりも寒くて、グリューワインの湯気が心なしかフランスよりも白く見えた。ビールとソーセージが手招きしている気がしたが、ここではグッと我慢してミュンヘン市内へと向かった。

地下鉄でゴトゴト揺られて、いざミュンヘン市内へ。ホテルにチェックインするためにマリエン広場へ出てみると・・・。

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さすがメルヘンの国。まるで、絵本の中に飛び込んだかのようだ。

これが本場のクリスマスかぁ・・・
ため息をつき頬を赤くしながらクリスマスムードに包まれるドイツの風景を眺めて歩いた。

何枚か写真を撮ったのだけれど、それはクリスマス前に。
アドベントとして一枚ずつアップしていきたいと思います。
お楽しみに♪


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