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069. 戻れないあの景色|写真散歩

いよいよマザンで過ごす最後の日。

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朝、まだ空が青い時間に、鳥のささやきに呼ばれて外へ出た。

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あたりは霧のベールに包まれていて、

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その隙間から、ほんのりとした朝の日差しに照らされたアーモンドの花がこちらをみている。綺麗。

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この世とあの世をつなぐような幻想的なベール、その向こうに、

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バントゥー山が裾野を広げている。

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夕方、家族の笑い声が響いた道を、今はたった一人で歩いていく。

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ベンチから見下ろしたマザンの街並みは、まだ眠りの中。

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霧に漂うように枝を伸ばす木々はちょっと恐ろしもあるが、まるで神話の世界からやってきたみたいだ。



さぁ、帰ろう。ずいぶん歩いてきた。


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振り返ると、バントゥー山を包んでいたベールがどんどん薄くなり、その姿をはっきりと現した。

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ノートに書いたここへ戻ってきたいという夢が叶い、感謝の気持ちでいっぱいになっていると、

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空にくっきりと浮かび上がった飛行機雲が引いた線。まるで流れ星のようだった。

実は、フランス滞在記の中でもこのマザンの旅を書くフェーズはちょっと切なかった。ここ、ペンションスカラベへ帰って来ることはもうないからだ。


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ここはわたしたちがフランスにご縁を感じるきっかけとなった場所だった。けれど2020年のこの時、スカラベのオーナーさん夫妻は日本への本帰国を目前に控え、宿をたたんでいたところだった。


過去の思い出が回収されていく。
戻れないあの景色は、胸の内にずっと変わらないまま残る。


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最後の日は、大好きな庭で残り少ない朝の時間を堪能して、みんなで記念写真を撮った。

「きっとまた、新しい旅がはじまるさ」

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青々とした空に届かんばかりにまっすぐに伸びた糸杉がそう言った気がした。空には昼間の流れ星が横切っていった。

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