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もっとも長いキャリアは好き嫌いの域を超えているから認識しにくい


一年でもっとも苦手な梅雨の時期がやってくるとあって(はやいよ・・)今日は朝から身体が重だるく何にもやる気になれない。このまま放っておくとネットサーフィンに時間を溶かした後、リフレッシュするためにカフェインを取りに出かける・・という惰性に任せた一日になってしまう。

まぁ、そんな一日もたまにはいいのだけれど、こんな時はとりあえず掃除でもしてキッチンで手を動かしてみると大方解消してしまうと最近気がついて、夕飯の仕込みのため、もそもそキッチンへ。お味噌汁の出汁を取ろうといりこの入った瓶を取り出すと、今回使う分でおしまい。

奥の食材ストックの中からいりこを取り出して、ハラワタを取ってポンポンとまた瓶の中へ入れていく。そうしておくと毎回ハラワタを取らなくていいからこうしている。

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一連の作業が終わると、昨日の使いかけのネギの青い部分が目に入って「色が綺麗なうちに酢味噌和えにでもするか」と思いつく。塩少々入れたお湯でさっと茹でている間に味噌を出そうと冷蔵庫を開けると、生姜焼き用に買ってあった豚肉が目についた。「そうだ、今日は生姜焼きにしようと思ったんだ」と野菜ボックスの底の部分にコロンと寝ている新生姜を迎えにいく。

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先ほどのネギをさっと冷水に取って、冷ましている間に生姜をスリスリスリ。


スリスリしながら、私史上一番長いキャリアって、実は「料理」なのかもしれないと思った。


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私が小学校に入ったあたりから父が病気がちでしょっちゅう入院していて、母はフルタイムの仕事を終えるとそのまま病院へ通う日々だったので、物心ついた頃から私は家族の夕飯を作る係だった。たぶん小学校4年生くらいからだから、私の料理キャリアはかれこれ25年余り。

そうそう、初めてしたアルバイトも中華料理屋さんだったっけ。

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料理は誰にも習ったことがない。祖父母や母がやっているのを見様見真似でやっているので、自己流もいいところ。料理を仕事にしようと思ったこともない。そして、これといった定番レシピもなく、人様に見せるようなキラキラしたものなんて作れなくて、私が作るものは全て「冷蔵庫のあまりもの一品」を使った名もなき料理たち。

大学生になって、そんな名もなき料理をつくる家庭の料理番から晴れて解放され、当時はほとんどご飯なんてつくらなかった。そして社会人になっても面倒くさくてほとんど作らなかった。でも、面倒くさい仕事が一つ減って気分は楽だったのに、何かいつも物足りなくて、体の調子が何かいつも良くないのだった。

それで結局、どちらの時期も飲食店でアルバイトをしていたのだ。バランスをとていたのだろう。

結婚して家族ができて、また家庭の料理番のお仕事が返ってきた時は正直面倒くさかった。でも、これをしないと自分の暮らしの中で何か決定的に損なうものがあるんだどこか感覚的にわかってくると、あんなに自分を縛って面倒くさかった料理番の仕事はまるでいつ何時も自分を地底から支えてくれる通奏低音みたいな存在に思い始めてきたのだ。

なんだ。ずっと通奏低音を求めていたと思っていたけれど、あったじゃないか。と気づいた。上記の記事を書き上げてみたから気づいたのかもしれない。


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友人からは「料理好きだよね」とよく言われるけれど、正直料理を好きだと思ったことが一度もない。でもそれは好きとか嫌いとかいう感情を超えて、料理が体の一部になっているからなのかもしれない。

よく「好きを仕事にしよう」とか「好きなことをやろう」とか言うけれど、最近そんなに好きに拘らなくてもいいんじゃないかなと思いはじめてきた。だって、骨身に染みるほどやりこんでいるものって、好きっていう感情は伴いにくいくらいに当たり前にやってきているので、そもそも認識しにくいのだ。

今当たり前に毎日粛々とやっている子育てというキャリアも、いつかそういう風になる日が来るのかもしれない。


そういえば、彼氏とマンネリの関係で「彼のどこが好きなのかわからなくなりました」と相談してきた後輩に「いや、だって、どこが好きなのかわかって付き合っていたらその部分がなくなったら好きじゃなくなるでしょう?」と友人がさっぱりと返していたのをみてグゥの音も出なかったことを思い出した。

つまりそう言うことなんだ。好きか嫌いかじゃないっていう視座に立てば、気づいたらやり続けていることが天職であって、無理やり好きを仕事にくっつけたって天職になりえっこないのだ。

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妄想しながら色々とでき上がり。生姜焼き用に切った新玉ねぎが半分余ったのでわかめと甘酢和えにしてみた。今日はさっぱり、酸味のあるものが食べたくなる日。

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