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Vol.38 日曜日は家族で美術館へ行く日だった


まだ世界が未知のウィルスの混沌に包まれる前のこと。

日曜日は、家族で美術館へ行く日だった。

bonjour!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。
今日はフランスで感じた日曜日の過ごし方についてのお話。

フランス(ヨーロッパ)生活で、日本生活との違いにびっくりしたことは沢山あったけれど、まず一番初めにびっくりしたのは日曜日は商店やレストランなど、いわゆる商業施設がお休みになるということでした。

日本の感覚でいうと、多くの人のお仕事がお休みになる日曜日は娯楽・商業施設が賑やかになる。オフの日を満喫する人。デートをたのしむ人。家族でショッピングやレジャーをたのしむ人。普段、学校や会社にいた人たちが一斉に街に解き放たれるのだ。

しかし、その感覚のままフランスの日曜日にさぁ、今日は家族みんなが集まるせっかくの日曜日、ゆっくり美味しいランチでもしようと街へ出てみると・・ほとんどどこも空いていないのだ。

午前中のみ、広場でマルシェはやっていてスーパーマーケットはやっているところはあるものの、レストランも雑貨屋さんもアトリエも、お肉屋さんもショコラティエも、日曜日にはお休みだ。普段賑やかなそれらのお店が閑散とするあり様を見て、「そうだよなぁ。お店の人だって家族があるだろうし、私生活があるんだもんなぁ」と思った。

フランスでは近年、時代やライフスタイルの変化に合わせて日曜日も営業するお店も出てきているようだけど、古くから「日曜日は家族の日」として商業施設はすべてお休み。家族とともに静かに過ごすという文化があるようだ。ただ、そんなフランスの日曜日に空いている施設がある。

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それが美術館や博物館など、いわゆる文化施設だ。
はじめは静かな日曜日に不思議な雰囲気を覚え、ちょっと物足りない感じがしたけれど、だんだんに慣れてくるとこういう休日はすごくいいと思った。

家族と文化を語る日曜日。

商業や娯楽など、経済的なシステム圏にあるものが静かになってくると、いつもそれらを縁の下で支えていた文化がクローズアップされてくるのだ。毎週美術館へ通っていたわけではないけれど、毎週日曜日がくると不思議と文化的なものに体が照準を合わせたくなるのだ。フランスという土地のもつ力的な何かかもしれない、と思ったけれど日本に帰ってきてもなお、日曜日になるとその感覚を覚え続けている。


あれから世界は未知のウィルスによる混沌に包まれて、日曜日関係なく、商業・娯楽施設か美術館・博物館かも関係なく、普段のあり方を止めて街はとてもとても静かになっていった。

その静けさの中には絵画や彫刻などの美術品やそれらを愉しませてくれる閉じられた空間はないけれど、そうなるとなんだか日常のありふれた光景すべてがアートで、あたかも街中が全て美術館にいるような感覚になることがある。そんな時、普段気が付かない日常の些細なところにもちゃんと文化は息づいていて、ずっとわたしを支えてくれていたんだなぁという安堵感を覚えるのだ。

日曜日、家族と静かにゆっくりと過ごしていると、いつでもフランスの日曜日にタイムスリップしたような気持ちになる。



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