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090.フランスで手巻き寿司は作れるのか?

bonsoir!🇫🇷 毎週金曜日更新のフランス滞在記をお届けします。

2020年3月3日、ひな祭り。
郷に入っては郷に従えに逆らってフランスで日本食を作ってみよう、第二弾(笑)。この日はひな祭りということで、手巻き寿司をやってみることにしたのでした。

ちなみに第一弾はこちら。
フランスでうすい肉を手に入れるのは至難の技。前号でも書いたのですが、「うすい」というのは本当に、日本の技術力と個性の力が結集しているのですよ。

さらに「生で食べる」というのも海外では難しく、日本の食品衛生の基準がいかに厳しいものか思い知った。というわけで、この「うすい」「生」というダブルの壁を突破しなくてはならない寿司を家で作るなんていうのは、ものすごーく難易度の高いことのように思われた。

が、しかし。

南仏のマザンという田舎町にある日本人夫妻宅を訪ねたとき、ディナーで腰を抜かした。なんと出てきたのは手巻き寿司!プリプリとした魚のネタの数々、ふっくら卵に艶の良い銀シャリと海苔、香り高い納豆・・。ここは日本の食卓かと見まごうほどに完璧なまでの手巻き寿司光景が広がっていたのだった。

奥様曰く、「最近では日本食ブームで寿司の材料は手に入りやすくなってきたし、マルシェではマグロやサーモンなら柵の状態で売っているし全然できますよ!」ということでフランスでも手巻き寿司はできることを知ってしまった。

ちなみに、「そもそも好きな魚を自分で買ってきてさばけばいい話だからね」とサラリとお話しされる何でも作ってしまう奥様。茨城県民もびっくりな美味しさのひきわり納豆はなんとお手製で、なんでもパリに住んでいた頃はその美味しさが評判になり高級ホテルに卸していたこともあったのだとか。「ホットカーペットで大量に作っていたから部屋中納豆くさくて大変なことになっていたのよー」と明るく語られる武勇伝の数々・・。

奥様のように魚はさばけないけれど、私たちの滞在しているグルノーブルでも手巻き寿司ができるかもしれない。

ちょうど帰国も近いことだし、お世話になった夫の職場の同僚の方をディナーにお招きして日本食をふるまいたいと思っていたところだった。手巻き寿司はピッタリだ。さらに、そのちょっと前はひな祭り。予行練習を兼ねて、手巻き寿司パーティにチャレンジしてみよう!と思ったのでした。

まずいつもお世話になりまくっていた日本食料理屋のOZENYAさんや、少し郊外にあるアジア食品店で海苔や米などを買い揃える。そして、近所のお魚屋さんへ行ってマグロとサーモンの柵を買ってきた。マグロの一部を叩いてネギトロにしてみた。フランスの魚はすごく美味しいので、期待に胸踊らせながらトントンとリズミカルに包丁で叩いていく。ちょっとつまみ食いしてみたらば、これがまた美味!

あとは、Bioスーパーで買った卵を焼いて、きゅうりを切って。ツナマヨネーズも作ってみた。お皿の中央にはアボカドを盛り付けると、とびっきり美味しい手巻き寿司ディナーの完成です。

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プロヴァンスの奥様からもらったひな祭り祝いのカードを嬉しそうに広げる娘。

海外でその土地の料理をつくるのは楽しい。日本では輸入食品を取り扱っているお店に行かないと手に入らないものが普通に近所のスーパーに売っていて、しかも作ってみるとこの土地の理にかなっていることに気がつく。

逆に、海外で日本食を作ろうとするとかなり大変だ。日本食材を取り扱っているお店を頑張って探さなくてはならないし、見つけてもかなり割高。日本での正規の価格を知っているからこそ尻込みしてしまう。

だから、「ここ(海外)にあるのもので何とか代用できないか?」とか「いっそのことちょっとフランスの食卓仕様にアレンジしてみようか」などと思いながらキッチンに立つと、時々ちょっとした大発見があったりして面白い。ちなみに、私の中で一番のヒットは、シャブリ(白ワイン)と八つ橋の組み合わせでしょうか。和食と合う白と言われていて、日本でも料亭で出しているところもあるようだけれど、これがまた八つ橋とベストマッチで美味しかった。

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だけど寿司酢は・・フルーツビネガーなども使ってみてさっぱりとおしゃれな風味にもなったけれど、やっぱり日本のお酢が良かったです。

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