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はじめての宝塚~ひとかけらの拍手~

なんかよくわからないタイミングで拍手が入る!

はじめて劇場に行った人からよくきく言葉のひとつが、「どこで拍手したらいいのかよくわからなかった」
なんとなく萎縮してしまってうまくノれなかったりした経験がある人もいるのではないだろうか。

というわけで、今回は宝塚観劇の際の拍手についてまとめてみた。

なんとなく周りに合わせて拍手したらいい

筆者もはじめて劇場に行った頃は、舞台の迫力に、そしてそれに呼応するような客席の熱量に圧倒されたものである。同時に感動もした。さながらライブコンサートのコール&レスポンスのような感じで、スターさんのかけ声に拍手が入る。なんかすごい。
当時はよくわからないまま周りに合わせて拍手をしていたが、そのうちにそれがすっかりクセになってしまった。なにしろ楽しいのである。かっこいいー!かわいいー!すてきー!と拍手をして、客席も舞台も一体になって盛り上がる。ただでさえすてきな舞台なのだが、なんだか拍手をすることでさらに楽しい気持ちになるので、ぜひ皆さんにもやってみてほしい。

基本は周りに合わせて拍手をしたらいいのだが、心の準備や手元の準備もあると思うので、おおよそどんなタイミングで拍手が入るかをまとめてみた。

1.曲の終わり
2.スターさんの登場
3.スターさんが銀橋※に出るとき
4.大技がキマったとき
5.なんか最高!なとき
6.カーテンコール(パレード)
7.退団者への拍手

※宝塚大劇場、東京宝塚劇場のオーケストラピットより前にあるエプロンステージのこと。

1.曲の終わり

これは万国共通。
お芝居の場合は特に曲の後にも台詞や話が続くことがあるのでその辺は演者の呼吸に合わせる。大きなナンバーのあとは基本的に演者も指揮者も拍手のぶん間をとってくれるので、楽しい曲でも悲しい曲でも、感動は拍手に乗せて舞台にお伝えすると感激もひとしお。
曲がどのタイミングで終わるかわからないときはリピーターの拍手を指標にするのがよい。指揮者がみえれば動作で判断することも可能。

2.スターさんの登場

宝塚特有の拍手。
初心者が最初にびっくりするのは多分これだろう。
基本的にはキャー!!!とか、○○屋!とかに近いもので、宝塚では拍手に登場の感動とか応援とかいろいろな感情がこめられる。
最近は開演時のアナウンス、主演のスターさん(通常はトップ男役)のご挨拶の後にも拍手が入るのが一般的になった。(昔は特別な時しか入らなかった)
細かいタイミングを挙げると、ひときわ明るいピンスポットが入ったときに拍手が入るのが通常のタイミングだが、いろいろと例外もあるので慣れてくるまではどこかから拍手が聞こえたらする、くらいのスタンスが気楽。
習うより慣れろ。

3.スターさんが銀橋に出るとき

これも宝塚特有の拍手。
キャー!こっちくるー!とか、すてきー!とかそんな感じのテンションである。劇場でみていると本当にそう思うのだが、銀橋ってすごい。

4.大技がキマったとき

これはバレエやブロードウェイでも一般的。
男役さんが娘役さんを持ち上げてくるくる回すリフトや、ひとりでぐるぐる回るピルエットや、なにか大技が繰り出されたときの、すごい!!の拍手。舞台上で衣装の引き抜きや早替えが行われたときにも発生する。

5.なんか最高!なとき

宝塚のショーでは舞台の真ん中でスターさんがかっこよく何か言ったりするときが結構ある。時節柄もあって歓声を上げることはできないが、拍手ならOK。心の高ぶりを拍手にこめてスターさんにお伝えしよう。
※かっこつけるには結構精神力が要る。かっこよくキメたのにシーン……となるのは舞台も客席もなんかしんどいので、応援しているスターさんがキメたときはぜひめいっぱいの拍手ですてきだよ!!!と思いを伝えてあげてほしい。形にしなければ思いは伝わらないのだ。

6.カーテンコール(パレード)

宝塚の通常公演(初日、千秋楽、挨拶つきの貸切公演以外)では一度閉まった緞帳はもう開かない。かの有名な大階段を出演者が順番に降りてきておじぎをして、主題歌をひとしきり歌ったらもう泣いても笑っても終演である。それぞれのおじぎの場面は感動を伝えられる最後のチャンス。拍手をしたりオペラグラスを覗いたり手拍子したり拍手をしたり忙しいのだが、ぼーっとしていると一瞬で過ぎてしまうので注意しよう。
初日や千秋楽には終演後の挨拶があったり(貸切でもときどきある)、そのあとにも客席の拍手に応えて緞帳をあげてもらえたりするので(これは初日と千秋楽のみ)、諦めないで拍手をするとすてきな時間を延長可能(限界はある)。スタンディングオベーション(観客が立ち上がって拍手を送ること、観客による最大限の賛辞にあたる)ができるのもこのときだけなので、もし幸運にも初日や千秋楽のチケットをつかむことができたなら、最後は立ち上がる準備をしておいて、ぜひ参加しよう。何度か幕があくうちの3-4回目くらいに誰かが立ち上がりはじめたらチャンス!(別に自ら立ってもいい)

7.退団者への拍手

さみしいことだが、夢の世界も永遠ではない。
その公演で卒業されるスターさんがいる場合、宝塚では餞のような形で見せ場が設けられていることが多い。千秋楽の頃になると、退団者のファンは白い服で劇場に通うようになり、これまでは拍手が入っていなかった場面にも拍手が入るようになる。退団者のソロがある場面や、複数の退団者がいる場合には全員が揃う場面などが一般的。珍しいパターンでは開演数分前のアナウンス(※比較的上級生の娘役さんが担当している)に拍手が入るケースもある。
最近は千秋楽が配信でも中継されるので、実際に見聞きする機会も増えた。スポットライトを浴びる退団者のいわば「晴れ姿」に、劇場中からあたたかい拍手が向けられる場面は本当に感動的で、なんて愛にあふれた世界なんだろう、と感じる瞬間である。
もし、宝塚をみて、応援したいスターさんを見つけた人はぜひ、劇場で拍手を伝えられるうちに、めいっぱい拍手しておこう。

……こんなところだろうか。
こうして挙げてみると、とにかく感動や高揚を拍手という形で伝えようとしていることがよくわかる。そう考えると、拍手ってあたたかいものである。

ちなみに、宝塚の拍手については、歌舞伎の大向うのように事前の勉強会があったりだとか、先導している特別な誰かがいたりするわけではない。
初日に幕が開いてから、客席に座った観客のそれぞれがつくっていった拍手が徐々に定着していって、それに合わせて芝居の間や曲のタイミングも調整される。
初見で拍手のタイミングがわかってくるまでには少々慣れが必要なので、初日付近は宝塚の観劇に慣れているファンが思い思いに入れた拍手が中心になる。そこからリピーターの手を通して「ここで拍手」というのがはっきりしてきて、たとえばファンクラブでは拍手表という「ここで拍手して盛り上げてくださいね」的な一覧が配られることもあるのだが、大半の観客は自由に拍手をしているだけなので、その場のノリに合わせていればそれでOK。
ときには、曲が終わった!と思ったらまだで、フライング拍手をしてしまった!なんてこともあるだろうが、それはそれですごく感動したんだな、というのが伝わってくるので愛おしいものである。
もしも近くに迷いなく拍手をしている人がいたら、その人は気合いの入ったリピーターなので、便乗するのが吉。

舞台は映画やテレビと違って双方向のエンターテインメント。
よく演者さんたちが仰る言葉に「舞台はお客様が入ってはじめて完成する」というものがあるが、客席の反応によって舞台はより輝いて、観客自身が参加することで観劇の体験はいっそうすてきなものになる。マスクで顔の半分が見えず、発声もできない現在、反応として客席から舞台にお返しできる最たるものが拍手である。
そう、結局このひとことに尽きるのだ!

しあわせならてをたたこう

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