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「自分を愛する」ということ

心理学では自分を愛することの大切さを説明しています。アメリカでは多くの心理学者がそういった内容の本を一般読者向けに執筆しています。近年の日本でも“自分を愛しましょう”というメッセージが広まり、自己肯定感が大切であるという認識と相まって、“自分を褒めてあげましょう”、“自分にご褒美をあげましょう” などといった事が言われるようになったようです。

近年 “ナルシストタイプの人が増えている” という報告がありますが、この “自分を愛しましょう” というメッセージが、一部誤解されて受け取られてしまってやいないかと思うことがあります。特に日本語では ”自分を愛する“ ということが上手く伝わっていないのではないかと思うのです。”自分を愛しましょう“ というメッセージの意味がきちんと届かず、結果としてナルシズムを過剰に促進するとしたら、それは大変残念な憂慮することで、少しでも誤解を解いていかなくてはなりません。

心理学で言っている “自分を愛する” ということは、自分の長所も短所も全部ひっくるめて自分を理解し受け入れ自分を大切にしましょう、ということです。自分に甘いだけでなく、時には優しく時には厳しくできることです。これは自分磨きをして奇麗になりましょう、美味しいものを食べてご褒美をあげましょう、というような表面的なことよりも、本来の意味はもっと深いところで、自分を否定したり偽ったりして本当の自分を隠して、自分を良く見せて生きるのではなく、ありのままの自分を認め、等身大の自分と愛を持って自分との友好関係を持って生きてゆくということです。無理にキラキラな自分を演出する必要も、鎧を着て武装して見せる必要もありません。そのままの自分自身に対して心の安定があるということです、当然ながら、現実の生活で、全てが“ありのままの自分“というわけにはいきません。人はいろいろな立場に応じて、いろいろな顔や役割を持っています。また“ありのまま“は自分の短所に対して“このままでいいんだ“と開きなおることでもありません。自分の欠点や短所は謙虚に認めたうえで、成長してゆくことです。

 自分を愛せる人は自分を愛を持って認め受け入れている人です。なので、他人を無闇に嫉妬したり、自分を卑下したり惨めに思う必要がないのです。人は人、自分は自分というスタンスを保てるので、人と自分を比較して打ちのめされることはありません。自分を愛せる人は自分とも人とも上手く付き合ってゆけます。自分を愛せずにいる人は、人との付き合いも上手くありません。自分を本当に愛せる人は、他の人を本当に愛することがもできます。自分という人間を大切にし尊重することができて初めて本当に他の人を大切にし尊重することができます。その反対に、自分を愛せなかったり偽りの自分しか愛せないのであれば、人を本当に愛することは難しいでしょう。

英語圏での文化において英語で表現されたことを、しかも”愛する”という英語でも意味の難しい深い言葉を日本語に置き換えて説明することは容易なことではありませんが、心理学で言うところの “自分を愛する” という表現の本来の意味を少しでもお伝えできたら嬉しく思います。

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