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歌舞伎との出会い

私が今までハマったことやもの、ずっと続けてきたこととの出会いは、ほとんどが人やメディアなどから教えてもらったり、与えられたものという気がする。

歌舞伎もそれに入るのだけど、自分の中ではなんとも不思議なハマり方だと思っているので、書いておきます。
長く、まとまりがないかもしれませんが、読んでいただけたら嬉しいです。


日本文学科へ入学

すべての始まりはここから。
私は、大学付属の高校に通っていました。
最初は違う学部に進もうと思っていたけれど、勉強よりも部活に専念していた(決して強豪校ではなく、土日の休みもあった)し、苦手な科目は捨てるというテストの受け方をしていた結果、第一志望の学部には成績が足らず。
以前から得意だった国語分野のほうに決めたのでした。

しぶしぶという訳ではなく、1年次の古典の先生の教え方がとても面白くて好きだったので、日本文学科もいいな、という気持ちはありました。


近世文学と出会う

内部進学の為のテスト以外にも一応面接がありました。

『あさきゆめみし』も途中までしか読んだことないのに、『源氏物語』に興味があり、深く調べてみたいと、中世文学のしかも『源氏物語』を最も専門としている教授に堂々と言い放ったことを、今でも思い出します。
たぶん見抜かれていたんだろうなぁ。
ニコニコしつつ、深く質問されませんでした。怖いですねぇ。


話が少しそれました。
オープンキャンパスで初めて判じ絵に出会いました。
絵が書いてあって、それの説明が横に書かれていて。
江戸時代にそんな面白い書物があったんだと初めて知り、興味が沸きました。

ゼミ選びは、平安貴族の生活が垣間見える中世文学か、庶民の生活がよく分かって面白い近世文学、どっちも興味があって悩みました。
その時代に作られた物語というよりは、その物語から見える文化に興味がありました。

結局、実際に巷で起こった事件からお家騒動などをパロディーにして書かれたものもある江戸時代の文学を卒論に選ぼうと近世文学ゼミに決定。

そして、その近世文学の教授が「映像・演劇論」という教養科目も受け持っていて、受講したことが歌舞伎との出会いに繋がります。


初めての歌舞伎

その先生の授業内容は、主に歌舞伎の演目についてでした。
演目そのものよりも、先生の感情のこもった熱い語りが印象的で、「歌舞伎ってそんなに面白いのかぁー」と思った気がします。

前期後期の試験はレポート提出。
後期のレポートの課題が、授業で取り扱った歌舞伎などの伝統文化の公演か、無理なら違う演劇を観てその感想をレポートにすること。

そして、授業で取り扱った演目で、来月かかるからと言っていた演目こそが、『當世流小栗判官』でした。


現在、歌舞伎座「七月大歌舞伎」第一部で上演される演目がそれです。


この時は国立劇場で当時は市川右近だった現・市川右團次さんが主役の小栗判官、確か市川笑也さんがヒロイン照手姫という配役でした。
当時のパンフレットがあったはずなのですが、見当たらなくて、たぶん照手姫が笑也さんだったような気がします。


近世文学ゼミを取ってるのに歌舞伎を観たことがないのはどうかと思っていたけど、きっかけを掴めないし、歌舞伎座は高い。ましてや格式が高そうで一人では行きづらい。

しかし課題で良い評価を得るには、この演目を観ること、そして国立劇場の学生割引チケットを学科で受け付けていることもあり、友達と申し込みました。

これが最初のきっかけ。

演目と席にも恵まれて、『當世流小栗判官』はとても分かりやすくて、感情移入ができ、お駒役の当時市川春猿、現・河合雪之丞さん(めちゃめちゃ綺麗)と目が合ったかもしれない!とドキドキし、最後に「宙乗り」というフライングがあったのには驚き、歌舞伎って凄い!と大興奮で帰ったのを今でも覚えています。


この観劇のあと、違う演目も観てみたくて、2・3回ほど国立劇場に足を運びました。
松本幸四郎、現・松本白鸚さんが歌舞伎俳優だと知ったのもこの時でした。それまでは、ミュージカルでも活躍する俳優さんだと思ってました。


音楽に打ち込む

大学を卒業し周りの友達は就職、私は専門学校に進みました。
音楽の世界に打ち込み、今までで一番自分自身と向き合って、毎日1日中楽器を奏で、幸せだと思ったり、辛くなったり、でも2年間でなんとかしなければという焦りもあったり。とても濃い2年間でした。

歌舞伎どころか、師匠のリサイタルや先輩の演奏会以外の芸術鑑賞や、年パスを買おうか迷うくらい通って大好きだったディズニーに全然行かなくなりました。

音楽に対してとても神経質になっていた気がします。

専門学校を卒業してからは、在学中から携わっていた母校の吹奏楽部の講師をしていました。

しかし、顧問の先生が変わったタイミングで新たな講師の方を呼ぶことになり、私も関わり続けることはできたけれど、音楽作りの方針が正反対で、まぁ色々もろもろすったもんだありまして、辞めることにしました。

この時は自分自身に自信を持てなくなっていたこともあったので、コンクールで金賞や上の大会に出場したかった生徒からは頼りなく思えたのでしょう。
あのまま私が中途半端にいても良くなかっただろうなとも思うのです。

今思うことは、コンクールは自分達の演奏を磨く機会のひとつではあるけど、賞を取るだけを目標にするのは違うかな。
思うことは沢山あるけど、また今度。

やりたかった仕事も辞め、音楽も楽しくなくなり、師匠のもとに通っていたレッスンも辞め、楽器と距離をおくことにしました。


スーパー歌舞伎Ⅱを観劇

何しても楽しくない、やりがいも感じられない空っぽな日々を過ごしました。


そんな時、たまたまプレイガイドで四代目猿之助さんがスーパー歌舞伎Ⅱとして『空ヲ刻ム者』という舞台をやるというのを目にしました。
また観るのなら澤瀉屋の方々が出てる演目で、と思っていたのと、「猿之助のスーパー歌舞伎は面白い」というのを聞いたことがあって、佐々木蔵之介さんが歌舞伎の舞台に初参加というのも面白そうで、観てみることにしました。
発見したタイミングが良かったのか、チケットを購入できました。


初めて観たスーパー歌舞伎は現代語寄りで、古典の歌舞伎のイメージとは違っていて、内容も分かりやすく、これは面白いと言われる訳だ思ったのと同時に、苦悩しながらも進むべき道を見つけた十和にちょっとだけ私自身を重ねて観ていました。

スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』


そうしてドラマ半沢直樹が始まり、片岡愛之助さんと香川照之さんの演技が話題に。
その2人と現・右團次さんと猿之助さんが明治座で花形歌舞伎公演をやるというのを知って、観に行き、愛之助&中車の共演を楽しみに行ったら、『男の花道』の猿之助さんに魅了されて帰るという(笑)

その年にスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』が初演されました。

『ワンピース』自体はコミックでずっと読んでいて大好きな漫画なので、どんな演出になるのか興味があったのと、絶対面白いものになるんだろうなぁという期待で、絶対観に行こうと決めてました。

ワンピース歌舞伎は思ってたのよりもぶっ飛んでいて、歌舞伎の世界でやってもいいの!?と驚きの連続でした。そして最高に楽しかった!
俳優さん達もみんな楽しそうで、一丸となっていてとても雰囲気も良くて、初演の時は開幕前に色々言われてたこともあってか、すごく気合いが入っていて、なんとしても千穐楽までやり遂げるという熱も感じられました。


そんな凄いものを見て、心の片隅で楽器を辞めたことを後ろめたく思い、思い出してはぐるぐると悩んで、自分を責めていたことがちっぽけに思えて、やってきたことは別に間違いじゃなかったと思うことができました。

好きなディズニーに行っても、ミュージカルを観ても、そこで演奏をしている人を見ては自分は何をやっているんだろうと思っていたのに、あの1日で前向きに考えられるようになりました。
『ONE PIECE』のおかげであり、スーパー歌舞伎Ⅱのおかげです。
あれ?尾田先生のおかげかな?

でもスーパー歌舞伎を観たことがなかったら行かなかったかもしれないし、漫画だけ読んでいても、なかなか前向きにはなれなかったので、そこは両方のおかげということで。

歌舞伎座に通いはじめる


それから、大学時代は何回か観た歌舞伎をしっかり観てみようと思い、まずは知ってる名前の方が出演されている演目を観ることから始めました。

ワンピース歌舞伎の翌年、これは観るべきと噂に聞いていた、猿之助さんの『義経千本桜』の「川連法眼館の場」も早い段階で観ることができ、狐ちゃんの可愛さに「なんなのこの人!」と驚き余韻にずっと浸って帰ったのは今でも覚えてます。

こうして、とにかく色々な演目、俳優さんを観て行くうちに、声に出して笑える演目や、一度観ただけでは分からない奥深い演目、感情移入できる演目があることを知りました。
俳優さんがその役を生きているのを目の当たりにして心を動かされたのも初めてでした。

この演目はまだ観たことがないから行ってみよう、と通ってみた結果、だんだん面白くなってハマってしまったという訳です。

なので、歌舞伎というもの自体が好きなので、箱推しというか。
若手の皆さんも頑張ってますし。
年齢的には松也さんが近いので、若手の皆さんのことも応援しているという感じです。
でも一番観ていて、魅了されるのが当代の猿之助さんです(^-^)





長々と読んでいただき、ありがとうございました。
好きなアーティストとか1度聴かなくなったけど、また聴いてハマるということはあると思いますし、私も家でCD見つけて聴いたりしてコンサートやライブに行くこともあります。

けど、まさか歌舞伎が人生を変えるきっかけになるとは、学生時代の私からは想像できなかったでしょう。
亡くなった大学の恩師に感謝です。


まぁ、歌舞伎役者さんは色々な方がいて、私生活についてはよく分からないし、理解できないこともあったりしますし、一般的にやってはいけないことをしてたら駄目だと思います。そういう人のは当分の間見ません。
毎月劇場に通う訳でもないし、出演されてるテレビも全部見てる訳じゃないけれど、俳優さんとしては尊敬してますし、応援してます。

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