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アイドルという名の偶像

世はアイドル時代

アイドルグループとグラビアアイドルの
隆盛は交互にやってくるというが
本当にそうだろうか

今はアイドルグループの隆盛期
というかそれも変化していっているのだろう

アイドルとは英語の「idol」
つまりは「偶像、崇拝される人や物」ということになる

日本で言うアイドルとは
いわゆる熱狂的ファンに支持される歌手・俳優・タレント
ということになるのだろう

なぜアイドルは人気を得るのだろうか?
それは途上の過程をファンと一緒に経験することで
完成系になっていく その過程にファン自身が貢献している
という錯覚を起こすからである

有名な俳優や歌手などは
世に出た時点で一芸に秀でており
他者と一線を画す何かを持っているものである

ではいわゆるアイドルはそうではないのか?
それは違う
元々素養はあるし周囲の人と比較すれば
突出して容姿や所作の評価が高いのは間違いない

それでもアイドルのファンは
未完成の原石を一緒に完成系に磨き上げたと誤認する

ここにグループアイドルの売り出しの価値がある

特にグループアイドルはこの傾向が顕著で
売り出し方も露骨な場合が多い

一つのグループの中にも
明らかに順列が存在する
万人受けするメンバー
個性的なメンバー
そもそも色々と足りていないメンバー

なぜ個性を持たせる必要があるのか?
それは対比を行わせる目的と
グループとしてファン層の幅を広げるためだ

まずは対比
万人受けするいわゆる楽曲のセンターを
任されるようなメンバーはそのファンの数も
必然的に多くなる

では単体のアイドルとして活動した場合
そこまで多くのファンを集めることが出来るだろうか?

おそらくそれは難しいだろう
メディアの露出を増やして
顧客の目に触れる機会を増やしたとしても
他の完成された歌手・俳優・タレントと
渡りあって顧客を増やすのは難しい

では相対的な評価であればどうか?

10人のメンバーの中でセンターになれる
1万人の応募の中から選ばれた10人のさらにセンター
つまり相対的な価値として上位であるという印象になる

芸能界という全体の中では埋もれてしまっても
分母を限定されると相対評価として評価がされ
個別の評価から価値基準に変化を生じる

さらにメンバーの中には明確な順列がある
つまり順列の中で支持が少ないメンバーがいることで
余計にトップのメンバーの評価が上がるという構図だ

もう一つの効果はファン層の幅を広げるというものだ
グループアイドルにはそれぞれある程度のコンセプトが存在する
方向性がある方がファンも活動の内容に同調しやすい

王道なのか地域密着型なのか
低年齢向けなのか等々
そのグループコンセプトの中でも
メンバーの個性に偏りがあると
各メンバーの個性が埋没して区別がつかず
相対評価を生みづらい

それでもメンバー別の販売枚数や人気投票などによって
順列を作るわけではあるが
運営側にもある程度 売り出しの方向性があるわけで
その方向性に合致するメンバーが先行することを
望むのは自然なことだろう

だからこそ順列をつけることで
少ないファンがつくメンバーをあえて作り出す必要がある
裾野を広げるという意味だ

苦労の多いメンバーのファンは
小さな成功でも一喜一憂し成功体験として歓喜する

常に3列目だった自分の推しが
2列目になる
ファンにとってはこれ以上に嬉しいことはない

こうして歓喜の尺度が
グループの中でも違うのだ

グループトップは常にセンターを維持することで
ファンの歓喜を煽り
他のメンバーは切磋琢磨している様子をファンに見せる

こうして満遍なくファンの支持が得られる構造となっているのだ

こう考えるとなんとも残酷な話ではある
芸能界という大きな母数の中では埋もれてしまうとしても
グループアイドルの活動に夢を持って加入した者たちを待っているのは
端から色付けされた個性付けと神聖性・処女性なのだから

芸能の世界は水物商売
それならば人気を獲得するために
それを売り出す側もありとあらゆる手段を取るのは必定だ

でもそのために自身の価値を勝手に決められてしまうのを
成熟前の彼・彼女達に理解できるのだろうか
理解できた時どんな感情を抱くのだろうか

もちろんそんな中でも自分の生き方や
個人として価値を見出して活躍する人々も多くいる
しかしその陰ではさらに多くの人達が退いていくのだ

アイドルという名の偶像が
本人やファンの思いと
かけ離れた存在になっていけばいくほど
どちらにとっても悲しい思いをする人が増えることも
またアイドルの皮肉なのかもしれない

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