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外務大臣会見記録 2023年10月27日(金)

18時10分 於:本省会見室

冒頭発言

G7大阪・堺貿易大臣会合出席

【上川外務大臣】
 私から、1点申し上げます。
明日、10月28日から29日に、大阪府にて、我が国がG7議長国として開催するG7大阪・堺貿易大臣会合に出席し、西村経済産業大臣とともに共同議長を務める予定であります。

 現在、国際社会は、歴史の転換点にあります。
緊張を増すイスラエル・パレスチナ情勢、ロシアによるウクライナ侵略、パンデミック、気候変動等、グローバルな取組を通じた解決を必要とする課題が山積しております。

 自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値を共有する我々G7は、世界経済の持続的な成長に向け、国際社会を主導していく責任ある役割を担っております。

 こうした背景を踏まえまして、今次会合におきましては、2024年2月に開催されます第13回WTO閣僚会議(MC13)も見据えつつ、WTOを中核とする、自由で公正なルールに基づきます多角的貿易体制の維持・強化に向けた取組や、サプライチェーンにおけるリスクや、経済的威圧への経済安全保障の観点からの対応につきましても、議論を行う予定でございます。

 また、G7広島サミットにおきましても、G7を越えたパートナーとの連携強化の必要が確認されたことを受けまして、グローバル・サウスの国々を含むアウトリーチ諸国や国際機関からも参加を得て、議論を行うセッションも予定されております。

 さらに、この機会を捉え、各国参加閣僚や国際会の代表との間で、個別に意見交換も行う予定でございます。

 私からは、以上であります。

イスラエル・パレスチナ情勢

停戦・自衛権についての日本の立場

【日本経済新聞 根本記者】
イスラエル情勢についてお伺いします。
イスラエルとハマスの衝突をめぐって、ロシアやアラブ諸国は、即時停戦を主張し、EUや米国は、一時的な中断や人道的な休止を求めています。
イスラエルの自衛権行使に対する認識などから、双方の主張には差があります。
ガザの人道状況改善を訴える日本政府の立場として、双方の主張に対して、それぞれ、どのような見解を持って臨むのか教えてください。

【上川外務大臣】
従来から申し上げているところでありますが、我が国は、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、第一に、人質の即時解放・一般市民の安全確保、第二に、全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること、第三に、事態の早期沈静化を一貫して求めてきております。

 その上で、ガザ地区の状況は深刻化の一途をたどっております。
同地区の人道状況の改善が、目下の優先課題と認識しております。
そのためには、同地区の一般市民に必要な支援が行き届くよう、人道支援活動が可能な環境確保が急務であると考えております。

 このような観点から、現在の情勢を踏まえました現実的な対応策として、人道状況の改善に資する、人道目的の一時的な戦闘休止、すなわち "Humanitarian Pause"(人道目的の一時的な戦闘休止) が重要と考えており、イスラエル側に対しましても、この点について働きかけているところでございます。

 今後も、刻一刻と動く現地情勢を踏まえつつ、事態の早期沈静化、そして、人道状況の改善に向けた外交努力を続けてまいる所存であります。

「人道目的の一時的な戦闘休止」

【ロイター通信 村上記者】
(以下は英語にて発言)
 ロイターの村上さくらです。
日本はガザでの人道目的の一時的な戦闘休止及び人道アクセス確保を要請しています。
日本語の「人道目的の一時的な戦闘休止」"Humanitarian Pause" と同じだと言っていますが、これが停戦に相当するのかどうか、どうお考えでしょうか。
日本は、具体的にどのような停止を意味し、この停止はいつまで続き、その範囲はどのようなものでしょうか。
どうお考えでしょうか。
また、日本のいう休止とは、具体的に何を意味するのか、また、この休止はいつまで続き、その範囲はどのようなものでしょうか。

【上川外務大臣】
御指摘の「人道目的の一時的な戦闘休止」につきましては、ガザ地区の人道状況の改善のため、人道支援活動が可能な環境を確保すること等を目的とするものでありまして、いわゆる "Humanitarian Pause" と同様の意味でございます。
 お尋ねの点につきまして、現時点で予断することは差し控えさせていただきたいと思いますが、現在、人道支援活動が可能な環境の確保に向けまして、関係国や国連等で、精力的なやり取りが行われていると承知しております。
 日本も国際社会を各方面と連携しつつ関係者に働きかけを行ってまいりたいと考えております。

イスラエルの自衛権

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
 パンオリエントニュースのアズハリです。
G7は、イスラエル国際法上自衛権を有すると述べたと報じられています。では、国際法上の自衛権とは具体的に何を意味するのでしょうか。
イスラエルの自衛権の行使の過程で、インターネットやその他のメディアによれば、何千人ものパレスチナの子供たちや家族が皆殺しにされました。
日本は、このような自衛権を支持しますか。
もし支持しないのであれば非難しますか。
ありがとうございました。

【上川外務大臣】
まず、G7の主張についてということで、私に具体的に何を意味するかというお尋ねがございましたけれども、他国が発出した声明の内容につきまして、コメントすることにつきましては、差し控えさせていただきます。

 その上で、イスラエルが、主権国家として、自国及び国民を守る権利を有することは当然でありますが、一般論として、こうした権利は、国際法に従って行使されるべきことはいうまでもなく、その旨は、これまでも繰り返し述べてきたとおりでございます。

 そして、2点目の御質問でありますが、御指摘のとおり、ガザ地区及び周辺では、既に多数の死傷者が発生しているところであります。
現地の緊張度は、刻一刻と増しておりまして、情勢は全く予断を許さない状況であります。
我が国といたしましても、深刻な懸念をもって、この情勢を注視している状況であります。

 従来から申し上げているとおりでありますが、我が国は、ハマス等によりますテロ攻撃を断固として非難した上で、人質の即時解放・一般市民の安全確保、そして、全ての当事者が国際法を踏まえて行動すること、そして、事態の早期沈静化、を一貫して求めてきております。

 イスラエルとの関係では、累次の機会に、一般市民の保護の重要性、国際人道法に則した対応、また人道支援活動を可能とする環境の確保等の協力を要請したところでございます。

 今般の事案につきましては、我が国は直接の当事者ではなく、個別具体的な事情を十分把握しているわけではないことから、確定的な法的評価を行うということにつきましては、差し控えたいと思っております。

 その上で、イスラエルが主権国家として、自国及び自国民を守る権利を有することは当然でありますが、一般論といたしまして、こうした権利は、国際法に従った形で行使されるべきであるということにつきましては、言うまでもないことであります。

 いずれにせよ、日本といたしましては、引き続き、刻々と動く現地情勢を踏まえつつ、関係国との間で意思疎通を行い、そして、在留邦人の安全確保に万全を期しながら、事態の早期沈静化や、また、人道状況の改善に向けまして、外交努力を続けてまいります。

G7外相会合

【共同通信 桂田記者】
中東情勢の関連で伺います。
11月7日から予定されているG7外相会合では、イスラエル・パレスチナ情勢も主要な議題になることが予想されますが、中東情勢をめぐっては、G7でも立場の違いがある中で、議長国として、どのように議論を主導し、合意形成を図っていくお考えでしょうか。

【上川外務大臣】
御質問でございますが、日本は、今年G7の議長国であります。
法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、そして、国際的なパートナーへの関与の強化等を優先課題として、G7の義論をリードをし、成果を挙げてまいりました。

 また、イスラエル・パレスチナ情勢につきましては、刻一刻と緊張度が増す中、10月17日に、G7外相電話会合を開催をいたしました。
G7外相間で、今般のテロ攻撃に対する断固として非難を確認するとともに、ガザ地区の人道状況の改善が必要であること、また、G7間で、引き続き、連携をすることで一致をしたところであります。

 そこで、11月7日、8日の、G7外相会合におきましては、イスラエル・パレスチナ情勢につきまして、G7外相間で、改めて突っ込んだ議論を行いたいと考えております。
また、9月の国連総会時のG7外相会合後の様々な状況の変化も踏まえまして、ウクライナやインド太平洋につきましても、議論を深めたいと考えております。

G7議長国としての任期は、「残り2か月」ではなく、「あと2か月」もあり、まさに、ここが勝負であると考えております。
この期間を存分に活用して現下の様々な問題に結束して取り組み、議長国の責任をギリギリまで果たしてまいりたいと考えております。
その上で、来年の議長国イタリアにバトンを渡す考えでございます。


李克強・中国前国務院総理の逝去

【NHK 五十嵐記者】
中国の関係で伺います。
国営の中国中央テレビは、2013年から2期にわたって首相を務めた中国の李克強(り・こくきょう)前首相が、27日未明、上海で死去したと伝えました。
大臣の受け止めを伺います。

【上川外務大臣】
本日未明、李克強・前国務院総理が、上海において逝去されたと承知しております。

 李克強・前国務院総理は、2018年に、中国の総理として、7年ぶりに日本を公式訪問されたことをはじめ、日中関係に長きにわたり、多大な功績を残されました。

 謹んで、李克強・前国務院総理に、心から哀悼の誠を捧げ、御冥福をお祈り申し上げます。

日・フィリピンRAA、対フィリピンOSA

【ジャパンタイムズ ニニヴァッジ記者】
日本とフィリピンの軍事協力について伺います。
岸田総理が、来月初旬に、フィリピン訪問を予定している中、日本とフィリピン両政府は、自衛隊とフィリピン軍部隊の間で、アクセス等へ協力を容易にする円滑化協定の締結に向けて交渉入りする方向で調整に入ったとの一部の報道があります。
事実関係をお願いいたします。
回答が可能な限りで構わないんですが、どのような協定を想定されているのかお聞かせください。
併せて、フィリピンが、今年春に設定された「政府安全保障能力強化支援」、いわゆるOSAの対象となっていますが、具体的に、どんなものを提供されていくのかお聞かせください。

【上川外務大臣】
まず、1点目でありますが、日・フィリピン円滑化協定RAAについてでありますが、報道については承知しているところであります。

 フィリピンとの間では、2月の日・フィリピン共同声明におきまして、防衛及び軍当局関係者の教育訓練及び相互訪問を強化・円滑化する枠組み等を通じて、防衛協力を更に発展する方途を引き続き検討することで、一致しているところでございます。

 それ以上につきましては、外交上のやり取りのため、お答えを差し控えさせていただきますが、いずれにせよ、フィリピンとは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に向けまして、引き続き連携を深めていく考えでございます。
また、フィリピンへのOSAという御質問でございますが、フィリピンは、海上交通路の要衝に位置しております。
地域の安全保障におきまして重要な存在であり、我が国としても安全保障上の重要なパートナーと認識しております。

 その観点から、我が国といたしましては、フィリピンをOSAの初年度候補国の一つとして、案件形成を進めてきております。
具体的な供与品目を含めまして、フィリピン側と最終調整を行っているところでございます。

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