見出し画像

レイヤー

 私はおよそ2年ぶりに実家に帰省した。私は両親も地元もあまり好きではなかった。しかし、私はなぜか帰省した。理由はわからない。

 地元の駅に着いた瞬間は何も感じなかった。まるで、いつもの通学路を通るように、特に感傷的にもならなかった。

 しかし、次第に不安になった。知っている人に会ったらどうしようと思ったからだ。私は知り合いに偶然会うことが好きではないのだ。しばらくして、大して心配することでもないことに気づき、また何も感じなくなった。

 次は、様々な思い出が蘇ってきた。私の頭の中ではダムが決壊したかのごとく次々と記憶が溢れてきた。しかし、面倒くさくなったので記憶に蓋をした。

 疲れたなと思うと故郷や親や友人に対して嫌悪感が湧き上がってきた。私はいつものように気持ちが冷めるのを待った。

 いよいよ親と対面した。親は親であり、私は私であった。なので、不思議と何も感じなかった。

 なぜ帰省したのだろう。
 なぜ帰省しなかったのだろう。
 私はただただ溜めていく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?