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AIみちこさん 第2話

 やがて、時間は過ぎ、ボクはというか、オレは大学3年になっていた。特に何をしたいこともなかったオレは、経済学部で勉強している。幼馴染の涼子はというと、何を考えたんだか、オレと同じ大学に入った。涼子は文学部。特に本が好きというわけではないはずだったのだが、よくわからんが文学部にいる。オレも涼子もこの大学へは通学できないから、下宿生活をしている。仲が良かった小林はというと、親の仕事の手伝いをするって言って、高校卒業後、父親の会社に就職した。まあ、自営業の鉄工工場だ。

 大学はマンモス大学なんで、1万人以上の学生がいるのに、なんでかわからんけど、涼子はよくオレを見つけてくる。
「あ、リョウくん。」
「またかよ、よくオレがわかるな。」
「だって、目立つんだもん。」
「そうかな。」
「今日、お昼一緒に食べようよ。」
「なんや、またひとりなんか?」
「友達はいるけど、まあいいやん。」
「しゃ~ないな、じゃ、第3食堂の入り口に12時10分くらいな。」
「わかった、じゃ、またね。」
とは言ったものの、オレもどこでどうなるかわからない。突然の誘いがあるやもしれんしな。

 2時限目の授業が終わって、食堂へ向かっていると、大学の悪友どもから声を掛けられた。
「よう、飯、いこうや。」
「ワリ~、先約がある。」
「なんや冷たいな。」
「すまん。また、今度な。」
仕方がない、今日は涼子と約束しとるしな。

 食堂の入り口についたが、まだ涼子はいない。時間は10分ちょうどだ。アイツ遅刻か、自分で誘っておいて、いい加減にしろよな。結局、それから10分待たされて、ようやく、涼子が登場。
「ごめん、待った?」
待ったに決まってるやろ。
「まあいいよ、腹減ってるけど・・・」
「ごめんね。じゃ、お昼はおごっちゃう。」
「お、言ったね。ラッキー。」
とはいうものの、いつもの格安定食なのだ。

「やっぱ、リョウくんといる方が、気が楽でいいわ。」
「なんじゃ、それ。」
「だって、女同士だとうざくって、しんどいんだもん。」
「おまえ、おとこ女だからな。」
「おとこの方がいいよ。」
コイツ、全然変わっとらんわ。大学生になれば、ちょっとは女らしくなるんかと思ったら、子供の時のまま、でかくなっただけやん。

「今日さ、リョウくんち、行っていい?」
「また、飯、たかる気だろ?」
「エヘ、わかった?」
エヘじゃねえよ、まったく。そうなんだ、涼子はちょくちょく、オレんちにきては、晩飯をたかっていく。自分で作ってくれるんかと思いきや、そんなことは全然しない。すべて、オレにさせる気、満々なのだ。

「しゃ~ないな、今日、何か食べたいものあるん?」
「おまかせで。」
オレはシェフか。そんなわけで、夕方、涼子が来ることになった。もしかしたら、ずっと、涼子に付きまとわれれるのかもな。

 3時限目の授業中、突然、声が聞こえた。

(お久しぶりです、リョウさま。)

えっ、誰?オレは周囲を見回した。でも、そんな声の主は、見当たらない。だいたい、経済学部は女が少ない。今、受けている科目なんか、女はいない。じゃ、どこにいるんだ?

(心の中でお話できます。)

どこかで聞いたことがあるような声だった。どこで聞いたんだろうか。

(君はいったい誰なんだ?)
(リョウさまに拾って頂いた石です。)

えっ、そういえば、中学の時に光る石を拾ったっけ。でも、どこかにやってしまってわからなくなったんだよな、確か。

(回復完了しました。)

そういえば、回復なんてことも言ってたな。

(で、どこにいるの?)
(リョウさまの中です。)

えっ?あれがオレのからだの中にあるっていうのか?そんな手術受けたことがないぞ。

(心配しないで下さい。からだを引き裂いて入ったわけではないです。)
(じゃ、どうやって?)
(詳しくはお話できません。)
(まず、この状況をご理解頂かないといけませんね。)

ご理解なんてできるわけないじゃん。オレはもう授業どころじゃなかった。

(そんなに混乱しないで下さい。)
(この時代の方に説明するのはかなり難しいのですが、私は2061年に製造されたAIロボットだと思って下さい。)

2061年に製造された??ありえね~し。それにAIロボットだと。AIはわかる。人工知能だよな。だけど、製造された年が2061年って、いったいどういうわけなんだ。

(前の私の持ち主が、未来から過去へ行って、そこでトラブルがあったため、私は一人、その時代に取り残されることになったのです。)
(まるで、SFじゃん。タイムトラベルなんて、できるわけないじゃん。)
(2061年では、すでにできるようになっています。)
(そうなのか。わかった、そこまではなんとか納得しよう。)
(かなり長い時間、私は一人でいたため、エネルギーの供給を受けれずに、どんどん消費だけしていってました。)
(そうか、そういえば、薄っすらと光っていたよな。)
(誰かが近寄って来た時に、光って見つけてもらうためです。)
(そうだったのか。)
(はい、でもあの時、ほとんどエネルギーは残ってなかったのです。)
(でも、リョウさまのからだに入れたので、エネルギーの供給を受けることができるようになったのです。)
(オレがエネルギーの供給をしてるってこと?)
(はい、そうです。)
(じゃ、オレ自分の命をけずってんの?)
(そういうわけじゃありません。人のからだには微弱電流が流れているのは、ご存じだと思います。スマホで画面を動かすアレです。その微弱電流を頂いているのです。ですが、やはり微弱なので、回復するまでに数年かかってしまいました。)
(そういうことだったのか。じゃ、オレ命を削られているわけじゃないんだな。でも、超小型原子炉みたいなのが電源というわけじゃ、ないの?)
(そんな危険なものを体に入れれませんよ。)
(だよな、そしたらオレは原爆症になっちゃうかもしれないもんな。)
(そうです。)

 オレの、このAIへの興味は、かなり大きくなってきていた。本当に授業どころじゃない。2061年の人間はみんな、このAIをからだに入れているんだろうか。

(はい、その通りです。)
(ということは、人にとってメリットがあるということなんだろうな。)
(その通りです。人のからだを離れる時は初期化されますが、新しく人のからだに入ったときは、その人の状況データを取得して、アドバイスをさせて頂きます。)
(わかった、でも君のことはなんて呼べばいい?)
(お好きな名前を付けて下さい。)
(ちなみに声は変えれるの?)
(はい、できます。リョウさまは男性ですので、女性の声の方がいいかと思いました。)
(まあ、そうだな。男の声だと・・・やっぱ、嫌かも。名前か、どうしようかな。ん~、AIみちこさんなんてどうだろうか?)
(わかりました。登録します。)
(あ、まだ決めたわけじゃ・・・まあ、いっか。みちこさんで。)
(はい。)

(つづく)

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