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私立高校の本気 

先日、某私立高校が主催する教育フォーラムに参加してきました。
フォーラムの中で強く感じたのは、私立高校の本気度の高さでした。
とにかく、生徒や保護者にいかに寄り添うかを必死に模索しているのが伝わってきました。

周知のとおり、私立高校の学校経営には財源確保が欠かせません。
財源がなければ学校運営はおろか、教員に支払う給与さえ賄(まかな)えません。
少子化が進む中で、各私立高校が生徒獲得に必死になるのも当然でしょう。何とか寄り添おうとしているのも生徒確保の意味があるのかもしれません。
最近ではこれまで教育の世界と無縁だった大手企業が参入し、通信制高校やサポート校の経営を始めるケースも増えています。
既存の私立高校にとってはまさに死活問題なのだと思います。

ただ、私立高校への追い風も吹き始めています。
例えば東京都ではすでに、私立高校の授業料が無償化されており、「今年度(令和6年度)から所得制限を撤廃(都内私立高校平均授業料相当額(484,000円)を上限に支援)」1) しています。

そんな中、大阪府では2023年度の公立高校の入試で約半数の高校が定員割れを起こしているそうです。
府では私立高校への進学者の増加を受けて、私立高校の授業料無償化について「令和6年度の高校3年生から段階的に適用し、令和8年度に全学年で授業料を完全無償化」2)することが府議会で決議されました。

こうした動きは都市部を中心に今後も広がっていくでしょう。
それにともなって経済的理由で私立学校への進学を断念せざるをえない家庭は減っていくと思われます。
私立高校には授業料以外にも入学金や施設費などの費用がかかるので、公立高校の方が安いことに変わりはないでしょうが、垣根が低くなっていくことはまちがいありません。

さて、こうした傾向は公立中学校にどんな影響を与えるのでしょうか。
私立高校間における生徒獲得競争の激化によって(一部の有名進学校を除けば)、合格しやすい私立高校が増えています。
その上、経済的な負担も軽減されるとなれば公立志向の強い地方でさえ、中学校の早い段階で進学先を私立高校に限定する子が増えるかもしれません。

そうなると県内の私立高校は受験科目を3教科に限定しているところも多く、早々と「私立に行く」と決めた子にとっては9教科のうち6教科は受験に関係がなくなるわけです。
当然「進路に関係のない」教科に対する集中力は下がってしまうでしょう。

それに、私立高校にも公立高校と同じように中学校から調査書(形式は異なります)が送られますが、実質的には当日の入試の得点が合否を大きく左右します。
つまり、調査書の点数を気にしなくてもいい私立高校に魅力を感じる子も増えるということです。
ちなみに、文科省の調査によると、公立高校に提出する調査書について「2023年度入試の時点で全国では、東京都、神奈川県、大阪府、奈良県、広島県が出欠記録欄を廃止して」3)おり、2025年度から岐阜県がこれに加わります。
どうもこの流れは止められそうにありません。

幸か不幸か私の地域には私立高校はなく、公立志向が根強く残っているため急な変化は起こらないとは思います。
けれども、私立の通信制高校は年々増え続け、ユニークな学科を持つ私立高校も増えています。
今では、不登校でなくてもそういう学校を選ぶ子が少しずう増えています。

そうした中で、公立の中学校はどんな魅力を生徒に示すことができるのか、今が正念場です。

1) 東京都ホームページ https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/05/29/09.html
  引用文中の(令和6年度)の部分は引用者による加筆
2) 大阪府ホームページ https://www.pref.osaka.lg.jp/o180160/shigaku/shigakumushouka/mushoka_r6.html
3) 2024年7月2日 毎日新聞デジタル

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