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学校に危機感はあるか?

不登校が急増していることは、学校関係者じゃなくてもよく知られていることです。
全国の小中学生の不登校は、約30万人となりました。
発生率は小中合わせて3%を大きく越え、中学校に限れば5.98%です。
40人学級なら2~3人に相当します。
2020年度から2022年度にかけて、約10万人増えました。

それでも、学校には意外なほど危機感がないように思えて仕方がないのです。

今、文科省は「学びの多様化学校」の増設を進めています。
つい半年前は、全国でで24から25校だったのが、今、35校を超えています。何をしても腰の重かった文科省としては異例のスピード感です。
4~5年後には、300校にまで増やそうとしているそえてうです。
そうなると、単純に考えて全国の都道府県に6~7校できることになります。
すべての生徒が通学可能な範囲となるでしょう。

「学びの多様化学校」はれっきとした「一条校」です。
既存の学校と同じ卒業証書が授与されます。
卒業証書が出されるということは、当然公立高校の入試もできるということです。

今はあまり評定のことは話題になっていませんが、近いうちにきっと既存の学校から独立して、独自に調査書が作成されるでしょう。
これが何を意味するのか、そのことに既存の中学校はもっと危機感を持つべきだと思います。

最悪の場合を考えると、次のようなことが起こるかもしれないのです。

「学びの多様化学校」(以下「多様化学校」)では、既存の学校よりも教育課程の内容が少なく設定できます。
また、個別指導も充実させることができます。
ということは、既存の中学校に通っていて授業について行けない子よりも学力が向上することも考えられます。
また、成績上位の子も入試のことだけを考えると、ひょっとしたら既存の学校に通うより有利になるかもしれません。
少ない学習内容で、既存の学校と同じように絶対評価で評定がつけられるのですから、楽に高評価を得られるわけです。

保護者は高校入試に関しては必死になります。
地方では、まだまだ公立志向が強いので、調査書の評定が合否に大きな影響を与えます。
子どもを30日以上休ませ、その間学習塾に通わせ、「多様化学校」に入学させ高い評定を確保し、筆記試験対策として進学塾に通わせれば入試にアドバンテージを得ようとするかもしれません。

そんなことは起こるはずがない、そう言い切れるでしょうか?

既存の学校は、自分たちの学校に子どもを引きつけるものをはっきりと示さないと、私の杞憂は現実になるかもしれません。

いつまでも、自分たちの学校が本筋だと考えていると足元をすくわれることになるかもしれないのです。

そういう危機感は、どのくらいの学校、どのくらいの教師が持っているのでしょうか。
いまこそ、真剣に公立義務教育学校の魅力を真剣に考えないと予想以上の子どもたちが「多様化学校」を希望する事態になるでしょう。

それに、「多様化学校」に通う子どもたちが不利にならないようにするために調査書そのものが廃止されるかもしれません。
そうなっても、既存の学校に通いたいと思う生徒をどれだけ確保できるかが重要になります。

全国に人がっている「教育支援センター」(旧適応指導教室 以下センター)に、勤める退職教員が現職のときと同じように学校的な「指導」をすることで、センターを敬遠する子もいると聞きます。
学校に合わないから、不登校になっているのに、サードプレイスとしての教育支援センターが「学校的」になっては意味がないと思うのですが、センターに来た日が出席扱いとされるため、ある程度学校のルールをセンターでも適用しようとするわけです。

安易な気持ちでセンターに通う生徒に歯止めがきかなくなるのも、既存の学校は嫌うようです。

いつまで、そんなことを言い続けるのでしょうか。
いつまで、学校化社会を維持しようとするのでしょうか。
その姿勢が、既存の学校を自滅させるかもしれない、そのくらいの危機感をもたなければ、本当に公立学校は私立や企業に呑み込まれてしまうかもしれません。

そもそも、全国に300校も「多様化学校」をつくるという発想は、不登校が今後も増えていくことを前提にしています。
これは、既存の学校の教師を信用していないとも言えます。
昭和時代を生きてきた私からすれば、忸怩たる思いがします。
悔しいの一言ですもう、なりふり構っている余裕はありません。

東京都の渋谷区が本年度から始めた、午後の授業をすべて総合的な学習の時間にしたように、思い切った変革が全国の公立学校に求められています。

うかうかしていると、公立の小中学校は解体の憂き目に遭うかもしれないのです。

これが、私の杞憂であればいいのですが。

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