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第54話 百田尚樹チャンネル②〜「むっちゃオモロいし、彼女は文才あるんですわ!」〜

学歴やキャリアを捨ててAV女優「頭おかしいんちゃうか?」

 バレエに対して”ちゅっちゅ”、”バンツ丸見え”と言った百田さんの大方言に大笑いして、話は著書の『大方言』へ。

「彼女はTwitterの炎上からしばらくして、私の『大方言』の感想をツイートしてたんですよ。『私の炎上なんか、百田さんの炎上に比べたら、屁みたいなもんやぞ!もっと強くならなあかん!』とね」
”屁”とは言うてへんで。”クソ”って言うてん。あれ?”クソ”の方が汚い?
「私は嬉しかったですね。私の本が彼女を少しでも勇気づけた、エネルギーを与えることができたかなと思って」
きっと私のような読者は日本中にたくさんいますよ、百田のオヤビン。

「彼女はTwitterの文章もしっかりしてるし、僕の本も読んでくれてるし、彼女のプロフィールを見てみたんです。すると驚きました。彼女は大阪大学大学院を卒業して、上場企業の研究職に就職したという素晴らしい経歴を持っていたんです。僕は『え!?この子なんなの!?頭おかしいんちゃうか!?』と思ったんですね」
痛快な百田節が炸裂。
「ハハハ!上げて下げますね!」
思わずそうツッコんだ。
「ごめんなさいね。これ得意技なのよ」
そう言う百田さんの頬はホクホクしていた。

「頭おかしいんちゃうか!?」

「AVもしくは風俗に入る子は、家庭に問題があったり、金に困ってたりするんです。でもかんなさんは全く違う。人も羨むような大学院を出て、勝ち組と言われる企業に入って、それでいてAV女優になるって、僕には理由が思いつかなかったんです。私からすると、彼女は失うものが結構あったと思うんですね」
”失うものがたくさんあったはずなのに、なぜAV女優になった?”。私の経歴を知って、こう思う人はこれまでもたくさんいた。だが私は何も失っていないと思っている。バレエも学歴も仕事のキャリアも、AV女優になることでより活かせている気がする。しかしそう思ってしまうところが”頭おかしい”のかもしれない。

「かんなさんは、私の他の本もかなり読んでくれてるんですが、僕の本はね、相当知的な人でないと読めないですよ!」
ここでツッコミを入れるべきか否かを考えた。
"『相当知的な人でないと読めないですよ』って、いやいや、百田さんの本はむっちゃオモロくて読みやすくて、最高ですよ!小学1年生でも読めますやん!"
上げて下げる百田さんの必殺技を拝借しようかと悩んだが、このツッコミは飲み込んだ。百田さんの目が真剣だったからだ。

「そうですね!知的な人でないと読めないです!」
”知的な”に力を込めて、顎をぽりぽりしながら強く肯定した。

 そしてこの日持参していた百田さんの著書を持ち出した。百田さんとの出会いになった『カエルの楽園』、百田さんに勇気をもらった『大方言』、そして百田さんは天才なんだと確信した『風の中のマリア』。我ながら素晴らしい選書である。

<こういう媚び売る女嫌いだわ>
<図書館で読んでる人だ>
<女受けしない女>

視聴者からのコメントもしっかり見た。でも、そんなん知らんがな。自分の好きな本を書いた作者に「あなたの作品のファンです!」とラブコールを送って何が悪い。

 私は『風の中のマリア』がいかに感激したかを伝えた。オオスズメバチの生活の臨場感。擬人化しても滑稽にならない表現力。そして何より一番感激したのは、遺伝学に基づいたオオスズメバチの生殖の仕組み。読んでいてセックス以上に興奮したし、昆虫の生態がとても分かりやすく書かれていることに感謝した。
 百田さんは『風の中のマリア』ついて熱く語ってくれた。私はいち視聴者になって聞いていた。時折百田さんに話を振られ、返答に焦ったのはバレていなかっただろうか。作家の思いをこんな近くで、しかも生で聞けるなんて、本好きとしてこれほど贅沢な時間はない。

百田さんも私も大好きな『風の中のマリア』

会社を辞めた罪悪感が払拭される

「みなさん、そろそろ有料タイムに移ります。有料タイムではもっと深い話をします。ティッシュは用意しなくていいです。僕ばっかり喋ってたので、彼女にむっちゃ喋ってもらいますよ!」

 休憩中、私は視聴者のコメントを見た。
<休憩中に合体>
<全裸で再登場>
<仕事なら誰とでもヤル女>
<百田さん今お触りタイム>
<はあはあ言って出てきたら有罪>

画面の向こうには、匿名なら何を言ってもいいと思う人がたくさんいるようだ。今回はAV女優である私が出ていることで下品なコメントや、厳しいコメントが多いのかもしれない。しかしそれにしても、これと毎日のように闘っている百田さんは、やはり鋼のメンタルの持ち主だと思う。
 言葉の強さを自覚しなはれや!ちみたち(君たち)!!

 ライブ配信は再開した。話はついに”なぜAV女優になったのか”。百田さんは私のnoteの冒頭を朗読してから「なんでAV女優になろうと思ったんですか?」と聞いた。
 この質問にはいつも頭を抱える。たくさんの理由があるため、話すと長くなってしまうのだ。この日、簡潔に答えられるように回答をある程度考えてきたが、うまく伝えられなかった気がする。

<前の会社が嫌だっただけじゃん>
<みんな我慢して働いてんだよ>
<結局病んだんだねー>
<ただのかまってちゃん>

容赦ないコメントが流れていく。私がAV女優になった理由は、会社で評価してもらえないのが我慢できなかったからだったっけ。しんどいことから逃げるためにAV女優になったんだっけ。コメントを見ているうちに自分の本当がわからなくなってきた。「このチームでの君の役割は、緩衝材だから」、「会社は君がいなくても回るから、休んでいいよ」と上司に言われて、どんどんやる気を無くしてしまって・・・。当時のことを思い出して、胸がぐるぐるしてきた。

「”会社に必要とされてない”というこの思いはね、人を壊します」

百田さんの言葉に胸のぐるぐるは止まった。
「”自分は誰かに必要とされている、誰かに自分の存在が望まれている”。この思いが人を支えるんです。でも”自分は誰にも必要とされていない”そう思った時にね、人は壊れます。かんなさんはそれに近い状況になっていたんやな」
この言葉に救われたとは思わない。もう終わってしまったことだから。でも私の弱さを肯定してもらった気がした。「大丈夫、人間そんなもんやで」と。

「やる気を損なわせるようなこと言った上司、アホやな!」

AV女優になった新たな理由が見つかる

「さて、そっからAVというのは、段階を2、3個すっ飛ばしてる感じがするんやけど。AVに前から興味あったん?」
「・・・ありましたね」
「AV見るのが好きやったとか?」
「見てました」
”そうか!やからAV女優になったのか!”と百田さんは強く納得したようだった。しかし私は”AVを見るのが好き=AV女優になる理由”になるとは思えなかった。なぜなら、女性はみんなAVを見ていると思っていたから。

「女性でAVを見てるって変わってるんちゃうか!?アンケートとってみよう」
百田さんはそう言い、女性視聴者に向けて”AVを見るか見ないか”のアンケートを取ることになった。すると結果は、”頻繁に見る”と回答した人がたったの12%だった。これにはひどく驚いた。しかし同時に嬉しかった。”AVを見るのが好き”というのは、AV女優になった立派な理由だと気付けたから。自分も知らなかった自分に出会えた気持ちだった。

「AV見てる私ってレアですか?」「おお、レアやで」

ベストセラー作家が私の文章を褒める

 「ところでね、さっきも少し読んだかんなさんのnoteはほんまに面白いんですわ。私が言うのもなんやけど、彼女は文才ある。文才ある」
むっちゃ面白い本を書く作家から『文才ある』と言ってもらった。しかも2回も!文章を書くことに挑戦してよかったと思った。ひいてはAV女優になってよかった。そしてこれまで本をたくさん読んできて、小さい頃から日記を書いてきてよかった。さらにはそんな環境で私を育ててくれた両親に感謝した。

 その後も百田さんは私のnoteを楽しそうに読んでくれた。
「AVメーカー2社目の面接官がオモロいねん」
「エイトマンの社長は口がうまいな」
「所々かんなさんはおっぱい自慢をしてるね」
そして最後にこう言った。

「バレエでも仕事でも、かんなさんは生活全般で苦しんだということやね」

 心が軽くなるのを感じた。私は自分のこれまでを”苦しかった”と思ってはいけないと思っていた。バレエができて、勉強もできて、就職もできて。何不自由ない生活が”苦しい”はずなんてない、と。しかし実は”苦しい”と思えなかったことが一番苦しかったのかもしれない。百田さんが「苦しんだんやね」と代弁してくれたことで、私を少し許せたような気がした。

 なんだか百田のオヤビンに救われてばかりだ・・・。

サポートは私の励みになり、自信になります。 もっといっぱい頑張っちゃうカンナ😙❤️